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第1章 第2幕 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【学院編D・L・C】

第45話 私が細工しておきました。

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「いけない! 防衛システムが発動してしまいました!」

「間の悪い事になった結果ですね。これは覚悟を決めねばなりませんよ!」

「鬼のせいで全て台無しだ! 畜生!」


 この異変の原因を知るフォグナーさんとアラムさんはこれから起きる現象に警戒を促している。アラムさんが少し話していた最後の罠とは一体、どういう物なんだろう?


「やってきた早々、発動か! 何もかも計画が無茶苦茶だ!」

「迷宮のカラクリか! 面白い! 受けて立とうではないか!」


 後から鬼を追ってきたファイアー・バードも悪態をついている。只唯一、鬼だけは罠を受け入れようとしている。様々な人物の思惑が交差したまま、罠の発動が進んでいた。


(ブゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!)


 みんなそれぞれ奇妙な光に包まれ、視界が不明瞭になり、体がふわりと浮かぶような感覚に包まれ、気が付いたときには異なる場所へ転移されていた。見渡すと一部の人がいなくなっている。鬼以外は私の味方しかいなかった。レンファ先生やラヴァン先生、トープス先生、フォグナーさんの四人だった。私と同行していたマンバーは一人もいない!


「封印目前の最後の罠とは、簡単にいえば同士討ちを仕組む為の物です。」

「どういう仕組みなのですか?」

「あのゲートには部屋に入ってきた者の実力を分析し、自動的に振り分け、分断する機能を持っているのです。」


 アラムさんが少し話していたとおり、ガーディアンの役割を果たす罠が仕掛けられているという意味がここでわかった。同士討ちということは自分たち自身が迷宮最後の敵になるように設定されていたんだ!


「しかも今までのフロアの封印もその役割を補助していたんです。数人で解除する仕様になっていたのはそのためです。着々とデータ取りをされていたということです。」

「でも、今は敵と味方で割り振られているようですが?」


 フォグナーさんの説明にトープス先生が現状との差違への疑問を投げかける。同士討ちが起きるように設定されていながら、鬼と私達が対峙する形になっている。確かにおかしい。


「これは私の悪あがきの結果です。管制室でD・L・Cに察知されないように私が裏で罠の内容が変更されるようにね。普通に敵対する者同士で割り振られるようにしておいたのです。」

「さすが、フォグナーさんだ。不測の事態に備えていたんですね。」

「普通に進めば若い子達に同士討ちさせる結果になりかねなかったのでね。しかし、それは回避できましたが、由々しき事態になってしまったのは回避できなかったようです。」


 鬼の姿を見ながら、その原因を示している。未知の強敵と戦う結果になってしまった。私達に勝てるのかどうか疑わしいと思う。さっきの一瞬の出来事で脅威的な強さを見てしまったから特に。


「我には罠など関係ない。余計な者どもが消えてくれて清々したわ。これで本命との手合わせを楽しめそうだ。」

「トウテツ! あなたの好きにはさせないと言ったはず! 場合によっては私達全員を相手にすることを覚悟しなさい!」

「レンファ殿の言うとおりだ! 我々の魔術を甘く見ない方がいい!」

「罠の機能によってこのように分断されたということはある程度拮抗はしているはず。勝ち目がないわけではないと思います。」


 一対五、という構図になっているので、孤立した相手に対して連携を取り合うことが出来る。それに加えて、相手のトウテツと呼ばれる鬼には元々味方はいないはず。事情は知らないけれどD・L・Cの味方とは到底思えなかった。


「うぬら全てで我に挑むというのか? 無駄な事よ。身の程を知れい!」

「取るに足らないというのであれば、試してみてもいいでしょう。エレオノーラ殿以外の個々の力は弱いと感じるのならば、あなたには影響が出ないはず。無視して頂ければそれでよろしい。」

「奇怪な物の怪風情がよく語る。勝手にするがよい。」


 フォグナーさんの説得によって、トウテツの態度は変化しなかったけれど、何らかの手出しは容認させてしまった。一番の年長者なので説き伏せる能力が凄い。こんな戦い方もあるんだと思って、私は感銘を受けた。なおさらこの機体に応えたいと思わずにいられなかった。


「エレオノーラ、私も戦うわ。力は及ばずとも、あなたの補助くらいは出来ると思う。」

「先生……。ありがとうございます。」


 先程のダメージはまだ残っていそうだけれど、先生が一緒に戦ってくれるのなら凄く心強い。私一人だと精神的な面で敵わないような気がしていたから、これで決心が固まった。


「圧倒的な力の前では結集した力も無力という事実を見せてやろう。あくまで鍛え抜いた個人の武は全てに勝るのだ! これぞ一騎当千の極意なり!」
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