44 / 81
第1章 第2幕 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【学院編D・L・C】
第43話 事件の黒幕
しおりを挟む「一体何があったんですか?」
私達は賢者の石を回収し、魔神の迷宮の管制室にやってきた。そこで待ち受けていたのは異様な光景だった。
「何があったのかはわかりませんが、お二人が無事であったことが何よりです。」
「ええ。私達も不思議に思えるくらい、恐ろしいことが発生しました。」
「私達は賢者の石を手に入れることは出来ましたが、こちらにいるレンファ殿に助けられ、驚くべき事実を知らされました。これからそれをお話しします。」
――――私達は互いの身に起きたことを話した。両者ともに驚くべき事が起きていたことがわかり、嘆息を付く他なかった。だが、共通の人物に惑わされたのは間違いなかった。
「あの鬼の面の男の正体がそんな恐ろしい存在だったなんて……。」
「迷宮に空いた穴を見たとき全てを悟りました。あの男がこの場所に到達してしまった事を……。」
事実を知り、フォグナー殿、レンファ殿両名はうなだれた。互いに無事だったとはいえ、絶望的な状況になったのは間違いない。別の脅威が外からやってきた。それが今、迷宮の奥地に向かっている。
「まさか、D・L・Cと結託してしまうなんて、想定外の展開です。」
「鬼の男はサンダー・ボルトとバニッシュを殺害し、そちらはロング・フォース、ロスト・ワードを撃破したのですよね? ということはD・L・Cは残り三名……?」
フォグナー殿は彼らの残り人数について何故か言い淀んだ。何かおかしいところがあったのだろうか? 確かに私はロング・フォースを暗黒の空間に追いやったし、レンファ殿はロスト・ワードを撃破した。この目で見たのだから間違いはないはず……?
「ロスト・ワードが死亡したのは間違いありませんか?」
「ええ。確かにレンファ殿によって倒されました。槍で貫かれた上に落下した衝撃で頭部が割れてしまいました。あの状態で生きているとは思えません。生きているとしたら正真正銘の化け物ですよ。」
「そうですか……。でも、不思議な事にこちらでも彼女の姿を確認しています。先程までここにいたのですよ。」
「なんですって!?」
私はトープス先生、レンファ殿と顔を見合わせた。二人とも私と同じく驚愕の表情を見せていた。やはり間違いないのだ。あの女はあの場で死んでいたのだ。少なくとも私とレンファ殿はその一部始終を目撃していたのだ。見間違いとは思えない。
「この事実を分析してみると、彼女は“死”すら幻術で偽ったとしか思えないですね。ファイアー・バードらと共にいたあの人物は間違いなく本物だったと思います。」
「私達が見たのは幻術だったのでしょうか……? そこまで高度な幻術を駆使できる人物はこの世に存在しているかどうか怪しい所です。」
近くに本人がいたのなら説明が付くが、この迷宮にいながら、遠く離れたフェルディナンドの私室に幻影を飛ばすことは出来るのだろうか? 如何にD・L・Cが優れた魔術師の集団とはいえ、そのレベルの魔術は人の域を逸脱している。
「これは重大な事実なのではないでしょうか?ロスト・ワードという人物に警戒しておいた方が良いかも知れません。この事件が起きた事ですら不可解な事が多いですし……。」
「それはどういう意味ですか? 我々が知らされている事件の発端は偽りであると……?」
「一つの可能性が思い浮かびました。この迷宮に封じられている魔神に関連する物として、ある魔神の事を思い出しました。」
この迷宮には鶏の魔王ポジョスの眷属、ブラックアーツ・ガンダーが封じられている。彼ら四天王の眷属の力は八傑衆の魔王達に匹敵するという。確かにポジョスの配下には他にも有名な者が何名かいたと思うが……。
「恐るべき幻術の使い手がポジョスの眷属にいたことを思い出しました。彼女なら並外れた幻術を駆使してもおかしくありません。」
「ですが、あの魔神は以前の魔王戦役で討たれたのでは?」
「それすら偽っていた可能性もあるのでは?」
「うう……確かに考えたくはありませんが、今回の事件での出来事を見ればあり得るかもしれませんね……。」
ここに来て更に恐ろしい事実が発覚してしまった。もしそれが本当なら、四天王が本格的に活動を開始した事を意味する。特にポジョスは危険極まりない魔王だ。彼が表舞台に現れるということは魔王戦役が開始されるという事と同意なのだ。
「これがポジョスの仕組んだ策略なのだとすれば大事です。なんとしてでも阻止しなくては、魔王戦役にまで事態が発展してしまいます!」
「急いで彼らの後を追いましょう。迷宮攻略班にも危機が迫っているのですから。」
私達は迷宮最深部に向かうことを決意した。敵側の戦力は驚異的だが、人数ではこちらが勝る。それを生かしてうまく立ち回るしかない。ここで負けるわけにはいかないのだから……。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!
夕凪五月雨影法師
ファンタジー
AIイラストあり! 追放された世界最強の勇者が、ハーレムの女の子たちと自由気ままなスローライフを送る、ちょっとエッチでハートフルな異世界ラブコメディ!!
国内最強の勇者パーティを率いる勇者ユーリが、突然の引退を宣言した。
幼い頃に神託を受けて勇者に選ばれて以来、寝る間も惜しんで人々を助け続けてきたユーリ。
彼はもう限界だったのだ。
「これからは好きな時に寝て、好きな時に食べて、好きな時に好きな子とエッチしてやる!! ハーレム作ってやるーーーー!!」
そんな発言に愛想を尽かし、パーティメンバーは彼の元から去っていくが……。
その引退の裏には、世界をも巻き込む大規模な陰謀が隠されていた。
その陰謀によって、ユーリは勇者引退を余儀なくされ、全てを失った……。
かのように思われた。
「はい、じゃあ僕もう勇者じゃないから、こっからは好きにやらせて貰うね」
勇者としての条約や規約に縛られていた彼は、力をセーブしたまま活動を強いられていたのだ。
本来の力を取り戻した彼は、その強大な魔力と、金貨1,000万枚にものを言わせ、好き勝手に人々を救い、気ままに高難度ダンジョンを攻略し、そして自身をざまぁした巨大な陰謀に立ち向かっていく!!
基本的には、金持ちで最強の勇者が、ハーレムの女の子たちとまったりするだけのスローライフコメディです。
異世界版の光源氏のようなストーリーです!
……やっぱりちょっと違います笑
また、AIイラストは初心者ですので、あくまでも小説のおまけ程度に考えていただければ……(震え声)
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
一般職アクセサリーショップが万能すぎるせいで、貴族のお嬢様が嫁いできた!〜勇者や賢者なんていりません。アクセサリーを一つ下さい〜
茄子の皮
ファンタジー
10歳の男の子エルジュは、天職の儀式で一般職【アクセサリーショップ】を授かる。街のダンジョンで稼ぐ冒険者の父カイルの助けになるべく、スキルアップを目指すが、街全体を巻き込む事態に?
エルジュが天職【アクセサリーショップ】で進む冒険物語。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる