【第3部】勇者参上!!~究極奥義で異次元移動まで出来るようになった俺は色んな勢力から狙われる!!~

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第1章 第2幕 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【学院編D・L・C】

第35話 鬼

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「な、何者だ!?」


 管制室の中、突然、轟音と共に上から人が降ってきた。思わず私も管制装置から振り返って見てしまった。右拳を床に押しつけたような体勢で謎の男がいた。そのまま前傾姿勢で俯いているので、顔はわからない。ここは地下迷宮の地下5Fに相当する場所にである。もちろん何もない虚空から降ってきたわけではなく、天上には穴が空いていた。


「魔の気配……すでにあらぬか……。」


 男はファイアー・バードの問いに答えず、ゆっくりと上体を起こした。まず目に付くのが顔に付けた面だった。恐ろしい形相、牙を剥いた口血走った目が表現されており、まるでデーモンのようだった。しかしそれを否定するかのように、ザンバラ髪に着ている衣服は東洋風、武芸者が身に付ける戦闘用の衣服だった。これは東洋の伝説に存在するといわれる、“鬼”と呼ばれる者なのだろうか?


「答えろ! 貴様は何者だと聞いている!」

「うぬらに名乗る名前などない。我が名乗る価値があるか試してやろう。」


 鬼の面の男は手招きするようにD・L・Cメンバーを挑発した。男の素性はわからないが、彼はD・L・Cの恐ろしさを知らないのだろう。特級の魔術師が六人もいるのだ。敵うはずがない。


「ライトニング・ピアサー!!」


 瞬雷のサンダー・ボルトが雷光の魔術を放った! この魔術は雷光魔術の中でも最速とされる物だ。しかもこの狭い空間では回避は間に合わないはず!


(バチン!!)


 指で弾く音がした。弾いたのは面の男! そして、術者のサンダー・ボルトは……額の中央に黒い点が穿たれ、そのまま膝から崩れ落ちた。


「馬鹿な!? 雷光魔術を指一本ではじき返したというのか!?」

「魔術? うぬらの国での妖術といったところか? あの様な雑技如きで我を殺せるとでも思うたか? 身の程を知れい!」


 たった一瞬だった。あの魔術をいとも簡単に指だけではじき返し、術者を絶命させた! 古今東西、その様な方法で魔術に反撃を加えた等という話は聞いたことがない!


「クソッ! よくもボルトを! 次は俺の番だ! 爆裂魔術を食らえ!」

「ここは狭いんだ! 威力は最低限にしろよ!」


 爆裂のバニッシュが仇討ちとばかりに爆裂魔術を使おうとする。思わずファイアー・バードも威力を弱めるよう宥めている。その光景を目の当たりにしても、鬼の面の男は腕組みをして動じた様子を見せなかった。


「そのおかしな面を砕いて、どんな顔か晒してやる!」


 爆裂魔術の威力を最小限にするためか、面の男に近付いて魔術を行使しようとした。バニッシュの杖が男の顔に近付いた瞬間、男はそれを無造作に手の平で掴んだ。


「馬鹿め! 掴んだどころで俺の魔術は阻止できん! 手の平ごと爆散させてやる!」

(バンッッ!!!)


 爆裂魔術が発動したと思った瞬間、男の手の平によって杖が粉々に砕け散った! 男はそのままバニッシュの顔を豪快に掴んだ。


「うぬは爆裂と言ったか? 望みとあれば真の爆裂を見せて進ぜよう!」

(ボンッッッ!!!!)

「爆滅発破!!」


 バニッシュの体は文字通りはじけ飛んだ! 頭どころか全身の肉どころか骨に至るまで爆散させられた。


「……な、そんな馬鹿な……!?」

「笑止。我を爆死させるには百年、いや、千年は早かったと見える。見事、無残に砕け散りおったわ。」


 特級の魔術師が一瞬にして二人も倒されてしまった。その光景を目の当たりにし、残りのメンバーも恐慌状態に陥り始めていた。


「なんだコイツは!? これがこの迷宮に封じられている魔神なのか?」

「落ち着け、ラスト・ステイク! コイツは魔神などではない! 只の人間だ! 貴様の呪殺魔術ならば、人間を確実に殺せるはずだろう!」

「わかったよ、なら使ってやる! 全身から血を吹き出して死ぬが良い!」


 呪殺魔術……現代では禁呪指定されている類の系統である。相手の血液を凍らせる、心臓を停止させる、全身からおびただしい出血をさせる等といった直接的に相手を死に至らしめる魔術。かつては暗殺者ギルドにて多用されていたと聞くが、近年弱体縮小化するに従い、使い手は少なくなっていった。逆に現代では対抗手段を知っている魔術師は少ない。反射の魔術を使わない限りは抵抗は出来ないはず。さすがにこの男でも……。


「死ねえ、ステイク・ブラッド!!」


 ラスト・ステイクから魔力は放たれた。……放たれたはずだった。しかし、何も起きなかった。その対象だった鬼の面の男は変わらず仁王立ちをしている。代わりに男の体の周りにドス黒いオーラが漂い始めた。


「死の呪いか? 無駄な事をしおる。それは我にとって英気も同然。我は死を体現する技の使い手なり!」

「呪殺が効かないなんて! 逆に魔力を吸収された!?」

「馬鹿な!? そんなことが出来る存在といったら……、」


 その答えは明白。魔の力、死の力を糧にする魔王以外にあり得ない! しかし、この男は魔王には見えない。魔王に相当する実力を持った闇の者……?


「お前は魔族なのか? それとも魔王だとでもいうのか!?」

「魔王? 西ではそういう呼び名であったな。我は東より参った闇の一族“蚩尤しゆう一族”なり!」


 男は“シユウ一族”と名乗った。それが何を意味するのかはわからない。でもこれだけは言える。この迷宮に封じられている者に匹敵する災いが現れたのだと私は理解した。
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