33 / 186
第1章 第2幕 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【学院編D・L・C】
第32話 “七人”だったはず……?
しおりを挟む「何故、僕達に攻略をさせるんでしょう? 攻略自体は彼らの方が優位なはずなのに……。」
ダンジョン攻略は次第に進み、現在は第四階層の封印を解いて第五階層へと向かおうとしているところだった。進む毎に次第に敵やトラップも強力になっていき、疲労も溜まってきていた。その前に傷の治療と体力回復のための休憩を取っているところだった。それでもグランツァ君は耐えきれず、思わず悪態を口に出してしまった。
《知りたいか? まず第一に貴様らの実力を測るためだ。今現在の主流の戦法を知ることで、対処法を構築しやすくする。》
彼らは伝説の魔術師。とはいえ数百年の前の人間ということもあり、今現在の魔術のレベルや知識、世界情勢には疎いという弱点がある。そのためにアンネ先生と結託しているのだろうし、私達の戦う姿を見ることで、その戦い方を分析することが出来る。このダンジョン攻略後の展開も見据えて行動しているみたい。
《第二に、我々も強さに自信はあるが万が一ということもある。消耗も出来るだけ押さえたいのだ。》
援軍、クルセイダーズ以外の救援もあり得るかもしれない。賢者の石を入手後、ラヴァン先生とトープス先生もここへやってくるかもしれない。そのための交渉材料として私達の存在も上乗せさせられるかもしれない。そうなるとますます不利な状況になる。それまでに何か策を考えておかないといけない。でも、他にも気になることがある。それは……、
「あなた方は“七人”だったはずですよね? 先程、一人少ないように感じましたが……?」
《フフ、どうしてだろうな? 最初から七人いたのかもしれんし、七人もいなかったかもしれない。さあ、どうだろうな?》
わざと答えをぼかしている。七人目の存在を敢えて曖昧にすることで、私達の不安を煽ろうとしている。おそらく何らかの重大な秘密を隠しているのかもしれない。もしかしたら残りの一人が迷宮の外で、ラヴァン先生達や学長の動きを監視しているのかもしれない。
《さあ、休憩はそこまでだ。さっさと次の階層へ行け! 時間は無限にあるわけではないのだぞ。》
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「何よ、アレ! ズルすぎない? これじゃ前にも進めないよ!」
「オイが思い切って活路を開くバイ!」
「ダメです! いくらあなたでも、矢で蜂の巣にされてしまいます!」
第五階層から更に攻略が困難になってきた。第一階層の最後に待ち構えていた強固で大柄なゴーレムが標準で配備されるようになっていた。一方で小柄なゴーレムは援護専用として割り切った配置がされていて、クロスボウや下級の攻撃魔法で的確に攻撃を加えてきた。しかも、迷宮の地の利を生かして、大柄なゴーレムが行く手を阻むので、先に排除することも出来ない。
「いっそ、ここは僕が……、」
「待って! 私ならなんとか出来るかもしれない。」
ここまで闇の力は使わずに温存してきた。この力は公にするわけにはいけないから。特にD・L・Cの人達に知られるのはリスクが大きいと思っていた。使用できることがわかれば彼らにも警戒されてしまうだろうし、悪用させられる危険もある。でも、もうそういう事を考えている場合じゃない。このままだと誰かが犠牲になってしまうかもしれないから。
「みんなはここにいて! 私が活路を開いてみせる!」
「無理をしてはいけません! Mrs・グランデ!!」
グランツァ君の制止を聞かず、私は決死の覚悟で飛び込んでいった。襲い来る巨躯のゴーレムを足場代わりにして、その後方へと飛び込んだ。当然、後衛のゴーレム達はクロスボウを一斉に私へと向ける。このままでは普通に矢で針のむしろにされてしまうだろう。そう、普通なら。
「アクセレイション、円旋封壊!!」
周りから矢が放たれるよりも早く、アクセレイションで身を屈め、大鎌を円弧を描くように一閃させた。援護用のゴーレム達はこれで一掃できた。次は巨躯のゴーレム達が大斧を振りかざして迫ってきていた。
「ハイス・ロット・レーゲン!!」
「鎧袖一触捻り!!」
次は……と思っていた所へ味方の援護が入った。全て私が全力を出せば全てを一掃できると思っていたのに。とはいえ二人には感謝しないといけない。
「無理はしないで下さいよ。この中では一番強いのはあなたなのは承知していますが、ある意味切り札でもあるんですから。あまり思い詰めてはいけませんよ。」
「そうかもね。あまり全てを見せてしまうと、後で不利になってしまうかもしれない……。援護、ありがとう。」
連携で敵の防衛網を突破して安心していると、管制室から私の行動に関して話し合っているのが聞こえてきた。
《アクセレイション? 何故、あの娘は魔族の技を使える? 説明してもらおうか、ミス・リーマン?》
《あの娘は以前、デーモン・コアの欠片を体に有していたことがあるのですよ。》
《ほう、なるほど。面白い人材を見つけてしまったな。利用価値はありそうだ。》
ファイアー・バードが意味深な発言をした。私が闇の力を使える事を利用しようと考えている? 確かに珍しい使い手なのは自覚しているけれど、何か裏がありそう。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
転生したらついてましたァァァァァ!!!
夢追子
ファンタジー
「女子力なんてくそ喰らえ・・・・・。」
あざと女に恋人を奪われた沢崎直は、交通事故に遭い異世界へと転生を果たす。
だけど、ちょっと待って⁉何か、変なんですけど・・・・・。何かついてるんですけど⁉
消息不明となっていた辺境伯の三男坊として転生した会社員(♀)二十五歳。モブ女。
イケメンになって人生イージーモードかと思いきや苦難の連続にあっぷあっぷの日々。
そんな中、訪れる運命の出会い。
あれ?女性に食指が動かないって、これって最終的にBL!?
予測不能な異世界転生逆転ファンタジーラブコメディ。
「とりあえずがんばってはみます」

出戻り勇者は自重しない ~異世界に行ったら帰って来てからが本番だよね~
TB
ファンタジー
中2の夏休み、異世界召喚に巻き込まれた俺は14年の歳月を費やして魔王を倒した。討伐報酬で元の世界に戻った俺は、異世界召喚をされた瞬間に戻れた。28歳の意識と異世界能力で、失われた青春を取り戻すぜ!
東京五輪応援します!
色々な国やスポーツ、競技会など登場しますが、どんなに似てる感じがしても、あくまでも架空の設定でご都合主義の塊です!だってファンタジーですから!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる