上 下
26 / 81
第1章 第2幕 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【学院編D・L・C】

第26話 裏社会で出回っている……?

しおりを挟む

「あれは確か……邪竜レギンが所有する財宝の一つでは?」

 ラヴァン先生が有名な伝説を口にした。知識のある人なら大抵知っている伝説だ。ロアやサヨさんから聞いたから、私は所在を知っている。他言無用という条件で、私自身もドラゴンズ・ヘヴンに関係した人間だからということで話を知らされた。ヴァル・ムングが魔法の鍵で竜の隠れ里の結界を破ったそう。里の存在も公にされていないので、極秘情報となっている。


「伝説上ではそう語られているな。正確には所在はわからん。それにも関わらず、レプリカが裏社会で出回っているという噂がある。真偽は定かではないがね。」


 ドラゴンズ・ヘヴンは裏社会の組織と繋がっている。盗賊ギルドや暗殺ギルド、海賊などとも繋がりがあると噂されている。それらの組織を通じて取引し、資金源としている可能性は高そう。


「しかも封印が解けてから、彼らが計画を実行するまでタイムラグがあった。その間に手に入れている可能性もある。」


 あれから二週間程度経っている。封印が解けたのが前学長がなくなった直後と考えると、何らかの準備をしていたのかも。


「その他の懸念として、彼らに協力する存在がいることも挙げられる。彼らは今の時代の知識は乏しいはずだ。その割には事をスムーズに運びすぎている様に思える。もし協力者がいると仮定すれば合点がいく。警戒はした方がいいだろうな。」


 前学長の関係者といえば、シルヴァンとゴルディアン、そして、アンネ・リーマン先生が挙げられる。彼らはあの事件の後、行方不明となっている。学院を離れた可能性もあるけれど、もしかしたら、事件に関わっているのかもしれない。D・L・Cに協力し、ロアや私達に対して、報復を考えていても不思議じゃない。


「それでは作戦を実行するとしよう。諸君らの健闘を祈る!」


 私達は二手に分かれて事件に対処することになる。外部からの支援と勇者不在のまま学院の命運をかけた戦いを始めることになった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「普通はこんなところにダンジョンがあると思わないよね~。」

「だからこそ今まで存在を気付かれずに済んだんだと思うよ。誰にも気付かれずに、封印を監視し続けないといけないから。」


 魔神の迷宮は学院の旧大書庫に存在していた。この学院の中でも一、二を争う古さの建造物。ダンジョン入り口を偽装するため、ダンジョンの監視所としての役割を作るために建造されたと、フォグナーさんが道中に説明してくれた。現在、書庫としては使用されておらず、立ち入り禁止となっている。あくまで表向きは。


「迷宮は地下五階からとなっていますが、警戒はしておいて下さい。彼らが罠を仕掛けている可能性があります。」


 いくらフォグナーさんでも新たに設置された罠まではわからない。途中までは只の書庫だからといって警戒を怠ると痛い目を見る。


「ふっるい書庫なんでしょ? 中には年代モノの本とかいっぱいありそう! 売ったら結構お金になるんじゃない?」

「目的を忘れないで下さいよ? 我々の目的は立てこもり犯を捕縛または討伐する事にあるのですから。」

「ただの探索でもダメよ。ここは学院の施設なんだから。」

「ちぇーっ!」


 ミヤコちゃんの言動を私とフォグナーさんが窘めた。罠そのものともいえるフォグナーさんが人を窘めるのはかなりシュールな光景だった。古代から存在する遺物だからこそ出来ることなのかもしれない。


「先程も見たとおり、正面玄関はすでに破られた形跡があったので、こちらの緊急用の裏口を使います。」


 フォグナーさんは建物の入り口に施されたカモフラージュを解除した。何もない壁のところにドアが現れる。玄関側も偽装はされていたけれど、不自然な所はいくつかあり、幻術でうまく破壊の跡を隠していた。最近施された物だったため、おそらく犯人はD・L・Cだと思う。そのまま入ったら罠にかかってしまうのは目に見えてる。


「裏口? 従業員以外お断り、スタッフオンリー的なところ?」

「う~ん、それだと表現が近代的すぎますが、簡単に言うとその様な所です。非常時用の出入り口が用意されているのです。これならば彼らに感知されにくいと思います。」


 こちらは正面玄関とは違って、見つかって侵入された形跡がない。だから、D・L・Cにも見つかっていないはず。ここなら比較的安全かも。とはいえ警戒はした方が良さそう。未発見を装っているだけかもしれない。


「じゃあ早く入ろ! 行くぞ、伝説のダンジョンのバックヤードツアー!」

お嬢さんフロイライン、遊びに行くんではないですよ!」

「いいじゃん! 硬いことゆーな!」


 これから本当の戦いが始まる。その硬くなりがちな雰囲気を和らげてくれているんだと思いたい。ミヤコちゃんも考え無しに行動することは少ないし、結構、ちゃっかりしてるから……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!

夕凪五月雨影法師
ファンタジー
AIイラストあり! 追放された世界最強の勇者が、ハーレムの女の子たちと自由気ままなスローライフを送る、ちょっとエッチでハートフルな異世界ラブコメディ!! 国内最強の勇者パーティを率いる勇者ユーリが、突然の引退を宣言した。 幼い頃に神託を受けて勇者に選ばれて以来、寝る間も惜しんで人々を助け続けてきたユーリ。 彼はもう限界だったのだ。 「これからは好きな時に寝て、好きな時に食べて、好きな時に好きな子とエッチしてやる!! ハーレム作ってやるーーーー!!」 そんな発言に愛想を尽かし、パーティメンバーは彼の元から去っていくが……。 その引退の裏には、世界をも巻き込む大規模な陰謀が隠されていた。 その陰謀によって、ユーリは勇者引退を余儀なくされ、全てを失った……。 かのように思われた。 「はい、じゃあ僕もう勇者じゃないから、こっからは好きにやらせて貰うね」 勇者としての条約や規約に縛られていた彼は、力をセーブしたまま活動を強いられていたのだ。 本来の力を取り戻した彼は、その強大な魔力と、金貨1,000万枚にものを言わせ、好き勝手に人々を救い、気ままに高難度ダンジョンを攻略し、そして自身をざまぁした巨大な陰謀に立ち向かっていく!! 基本的には、金持ちで最強の勇者が、ハーレムの女の子たちとまったりするだけのスローライフコメディです。 異世界版の光源氏のようなストーリーです! ……やっぱりちょっと違います笑 また、AIイラストは初心者ですので、あくまでも小説のおまけ程度に考えていただければ……(震え声)

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

一般職アクセサリーショップが万能すぎるせいで、貴族のお嬢様が嫁いできた!〜勇者や賢者なんていりません。アクセサリーを一つ下さい〜

茄子の皮
ファンタジー
10歳の男の子エルジュは、天職の儀式で一般職【アクセサリーショップ】を授かる。街のダンジョンで稼ぐ冒険者の父カイルの助けになるべく、スキルアップを目指すが、街全体を巻き込む事態に? エルジュが天職【アクセサリーショップ】で進む冒険物語。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

処理中です...