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第1章 第2幕 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【学院編D・L・C】
第22話 お便りが届きました!
しおりを挟む「手紙、どうだった?」
先日、私はロアからの手紙を受け取った。彼が旅立ってから二週間ほどしか経ってないけれど、早速一通目が届いた。それを聞きつけたミヤコちゃんが私の部屋を訪れていた。
「う~ん、目的地に到着した早々、大変だったみたいよ。魔王が現れたらしいの。」
「え~っ? 休みに行って、早速ピンチか! あのアホ勇者、マッチポンプとかなんかじゃないの?」
「まさか? 次々とトラブルに巻き込まれる不幸体質なだけかも?」
手紙には驚くべき内容が書かれていた。犬の魔王と羊の魔王が絡む事件に取り組むことになったみたい。元はサヨさんが手配した事だったので、リゾート地で羽を伸ばすのはその報酬代わりということになっていたそう。やっぱりサヨさんはちゃっかりしてるなぁと思う。
「大変だったらしいけれど、タニシさんが大活躍したらしいよ? 魔王を誘き寄せる囮役を務めたらしいわ。」
「え~っ!? ワンちゃんが!? ありえな~い! いつも足を引っ張ってばかりなのにぃ?」
「それは言い過ぎよ。彼も努力してるから、今回活躍出来たんだと思うよ。」
タニシさんは恐い思いをしたらしいけれど、事件の鍵を握る存在をおびき出すことに成功したみたい。そこに出てきたのがたまたま魔王に関する存在だったので、大事に発展してしまったんだと思う。
「でもさぁ、よく無事で済んだねぇ? ワンちゃんの一人や二人、下手したら十人くらい死んでてもおかしくないんじゃないの?」
「十人って……。タニシさんはこの世に一人しかいないのよ?」
この娘はタニシさんのことをどんな風に思っているのかしら? この前にオイタが過ぎたからそんな風に思ってるんでしょうけど……。大体、男の人はそういうところがあるみたいだから、割り切った方がいいと思うよ?
「あと何日かしたら、聖都に旅立つらしいわ。本当に大変なのはそこからでしょうね。えらい方とお会いするんだから。」
「ははっ! えらい方々に迷惑かけなければいいけどねぇ? 逆にかけられたりして?」
「ダメよ、そんな縁起でもないこと言ったら!相手は法王猊下と聖女様なのよ?」
ダメダメ! これ以上はいけないよ。あまり悪く言ったらバチが当たっちゃうよ。処刑隊みたいに怖いところはあると思うけれど、根本的には人々の支えになっている組織だからね。
「聖女様ねぇ……なんか今の人は絶世の美女らしいじゃん? あまりにも眩しくて、一目見たら目に焼き付いちゃう、みたいな?」
「まさか? でも、言葉でも言い表せないくらい綺麗な方なんでしょうね。」
噂くらいは聞いたことがある。その美しさは見た人が心を洗われたと錯覚するくらいだと言われてる。そのため、聖女様を一目でも見たいと思う人が聖都に殺到することもあるんだとか。
「あとさぁ、聖女様っていったら、聖歌隊のことも外せないよね。ウチもさぁ、小さい頃は憧れたもん。無邪気だったなぁ、あの頃は……。」
ミヤコちゃんがどこか遠い目をしている。何があったんだろう? 確かに煌びやかなイメージがあるから女の子なら誰でも一度は憧れたことがあると思う。
「ウチさぁ、実は聖歌隊に勝ちたいと思ってるんだよね。同じインフルエンサーで同世代だし、トップクラスの知名度だから。」
聖歌隊は教団の啓蒙活動を促進させるために結成されたと言われてる。特に若い層をターゲットに各地を訪れて活動しているそう。そういう意味ではインフルエンサーの中ではトップクラスだから、彼女も対抗意識を燃やしているンだと思う。
「でもあの娘達は教団がスポンサーに入っているから、圧倒的よ。個人でそれ以上の人気を勝ち取るのは難しいと思う。」
「そうだけど……そういうのに勝ちたいんだよ。なんか、ある意味反則じゃん、そういうの。自分でプロデュースして自力で、自分の力で勝ちたい! エシャロットさんみたいにさ。」
彼女が憧れているというインフルエンサー、エシャロットさんは絶大な知名度を持っている。隠れた名スポットを紹介したり、押しグルメとか押しファッションを紹介して、流行の波を自ら作っている事でも有名だ。時には義賊的な過激な活動もして、スーパーヒロイン的な側面も持っているらしい。ミヤコちゃんも彼女のそんな活動に影響を大きく受けてるみたい。
「目指せ! インフルエンサー世界一! を掲げるウチとしては絶対に勝ちたい相手なわけ!」
「でも、あんまり無理しちゃダメよ。」
椅子から立ち上がって奮起する彼女を宥めていると、ドアをノックする音が響いてきた。中に入るよう促すと、挨拶と共にローラが入ってきた。
「ミヤコ様もご一緒なのですね。これで個別にご連絡しに行く手間が省けました。実はお二人にお知らせしたい事があるのでこちらに窺いました。」
「連絡? 一体、何を?」
「率直に申し上げますと……学院にて、現在、緊急事態が発生しております。」
「緊急事態……!?」
イヤな予感がする。ローラは冗談を言うような娘じゃないので、余程の事態が発生したんだと思う。この前、学院全てを揺るがすほどの事件があったばかりなのに……。
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