20 / 171
第1章 第1幕 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【OK牧場の死闘】
第20話 異次元なチャンピオン!?
しおりを挟む「うんめぇぇぇっ!! 最高でヤンしゅう!!!」
(バリバリ!! ボリボリ!!)
「ふんがぁぁぁっ! これはたまらんじょぉぉぉっ!!」
(ボリボリ!! バリバリ!!)
必死の形相! 血走った目! 飛び散る破片! 現場は死に物狂いで食い散らかす、猛獣たちに埋め尽くされていた。年に一度の祭典。その実体は暴食の祭りだったのだ!
「うわぁ……。想像してたよりもヤベぇな。俺らが解決した事件ですら、ちっぽけに思えてくるな。」
「全くだぜ。世の中にはヤベぇジャンキーがいるモンだな。ここまでむさぼり食うとはよっぽど餓えてたんだろうよ。やれやれ……。」
俺達は恐ろしい物を目の当たりにすることになった……。あんなにも大きな玉を丸かじり! 普段はかわいらしい外見をしたピエール君や、普段俺と同じくアホ面を晒しているタニシまでもが凶暴な猛獣と化しているのだ! 親を殺した仇を食い殺すような勢いでむさぼり食っている! ……キャベツを!!
「もう、二人とも大げさですよ。何かの殺人事件みたいな感想を口にしないで下さい!」
「いやぁ、でも、こんなん見たら普通ドン引きするでしょ?」
「でもお祭りなんですよ? 人が誤解するような表現は慎んで下さい!」
ここの名物という“キャベツ祭り”。牧畜も盛んだが、農作物も質がいいと評判であり、一部は法王庁にも献上しているそうだ。味は法王猊下のお墨付きであるらしい。
「これが原因か? 野菜自体は嫌いなタニシがキャベツ好き、いや、キャベツジャンキーになったのは?」
「ホームステイから帰ってきたと思ったら、キャベツ丸かじりばっかりし始めたんですよ。あの当時はそれが原因で栄養失調になって病院送りにもなったんですよ。」
「おバカなところは昔から変わってないんだな。」
メイちゃんが言うには、キャベツ祭りに参加した時をさかいに、一転してキャベツ・ジャンキーと化してしまったそうだ。それまで野菜は何があっても食べなかったそうだが、キャベツ無しでは生きていけない体になったのだそうな。一時期、キャベツを見た途端に目が血走り、キャベツを食べずにはいられない衝動に駆られる事が多発したようだ。まるでヤク物中毒患者みたいだ。ヤバすぎ。
「ほんまおいしそうに食べてくれてて、嬉しいわぁ。これやから、仕事にやりがいを感じるねん。」
パイタンがやってきた。あの日、酒場で情報を提供提供してくれた人物の一人だ。なんでも、キャベツはこの子の家で生産されたものであるらしい。まさか、コボルトたちにむさぼり食われるほどの物を生産しているとは思わなかった。
「難事件をたった一日で解決しはったやてなぁ! さすが、勇者さんやわ。」
「いやぁ、幸運が重なっただけだし、被害者はもう手遅れな状態だった。きれいに解決は出来なかったから、言うほどでもないよ。」
「そんな謙遜せんでもええやん。これまで誰も解決出来へんかったんやし。」
一般的には、はぐれ魔族による仕業だったという事にしてある。なにせ魔王が二人も事件に関わっていたと知ったら、大騒ぎになるかもしれなかったからだ。
「でも、残念やわ。あの黒コボルトさんが魔族に操られたかわいそうな人やったなんて。」
「でも、倒したことで浄化は出来たと思うから、ちゃんと成仏出来たと思うよ。俺らに出来るのはそこまでだからね。」
犬の魔王ははぐれ魔族に操られたコボルトだったことにしてある。そして、あの場で俺が倒したということにした。理由は他と一緒だ。アイツの様子からするとこの町に再び現れるとは思えなかったし。
「事件解決したから、もうこの町から旅立ってしまうん?」
「いや、しばらくは滞在して羽を伸ばすつもり。もともとはそれが目的だったしね。事件の解決はココを紹介してくれた知り合いの頼み事だったから引き受けたんだ。」
「じゃあ、やっぱ、味の女帝様と知り合いやったんや。」
「ブッ!?」
どうやらサヨちゃんの事も知っているようだ。特選食材と聞きつければ一度くらいは顔を出していそうだもんな。料理人やグルメ以外に生産者ともコネを作っているようだな。あのいやしんぼめ!
「やっぱ知り合い?」
「うん、まあ。俺のスポンサーみたいなものだからね。」
「今度会うたら言うといて。マーケティング戦略のアドバイス、役に立ったって。」
たはは、商売の相談にも乗っていたワケか。良い食材も世に知られてなかったら、宝の持ち腐れだもんな。幅広く活動してるな、あのロリババア。
「さて、キャベツ早食い競争も制限時間を向かえました。間もなくチャンピオンの発表となります!」
そういえばドン引きしていたから忘れていたが、これは祭りの名物イベント、早食い競争だった。タニシとピエール君は食い過ぎで腹がパンパンになって、自分たちがキャベツみたいな外見になっている。食べ過ぎだ。
「今回の優勝者は……スミス・ダッフンドさんです!! コレでV3となります! 果たして彼に勝てる人はいるのでしょうか?」
どこかで聞いたことのある名前だと思ったら……あの細長従業員だった! しかも、体細いままじゃないか! どこにキャベツは消えたのだろう? あの体は異次元につながっているのでは、と邪推せざるを得なかった……。ダッフンだ!
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる