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第1章 第1幕 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【OK牧場の死闘】
第16話 何であろうと爆発絡み
しおりを挟む「魔法を消した!? それが噂の必殺剣って奴?」
俺が瞬時に敵の魔法を消滅させたため、犬の魔王は感心している。おそらく情報自体は魔族の間でも共有されているのだろう。それで実際に目の当たりにし、二度ビックリしたという感じかな?
「攻撃魔法のような小規模なエネルギー体とか、単純な魔法生物を消滅させることが出来る。あの牛の魔王のコアの欠片を消滅させたのもこの技だ。」
「アイツを完全消滅させた技なのか!? そいつはスゲぇや!!」
犬の魔王は心底、感心しているようだ。その様はとても無邪気な子供みたいな様にも見える。魔王なのに、割と人間の様な心を持っている感じがする。
「ぐげぁ! 爆発ぅ!」
グロい状態でこちらに迫るヤツがいた。コイツはさっきまで俺の相手をしていた武闘家タイプだ。弓使いタイプの放った爆発矢をまともに食らい、上半身を火傷した状態でこちらにやってきたのだ。普通なら死んでいるはずだが、生きているし、徐々に傷も治り始めている。尋常じゃない生命力は、俺の良く知る個体と同じだった。殺しても死なない可能性があるって事だ。
「見ての通り、ヤツらオニオンズは見た目人間でも中身はほぼデーモンだ。他の魔族と同じように傷くらいすぐに自動的に治る。コイツらもあの技で倒せる?」
「アレの上位版の技なら倒せるはず。でも、知り合いソックリだから気が引けるよ。」
「そうか。それは大変だね。多分、あの羊はそれを狙って、ココへコイツらを寄越したんだと思うよ。アイツ、多分、魔王の中で一、二を争うくらい性格悪いよ。」
俺のところにスパイとして送り込み、俺の技の数々をコピーさせただけではなかった? 対峙した時に抵抗感を植え付けるための工作でもあったのだろうか? そう思うと複雑な気分になってくる。
「そろそろ決着付けようと思うんだけど、そっちは出来る? 出来るよね?」
「ああ、やる。やってやるさ!」
悩んで葛藤している猶予はもらえそうにない。それは犬の魔王だけでなく、オニオンズの連中にしても同じだった。躊躇っているのは俺だけだ。俺の思いとは関係無しにヤツらはズンズンと間合いを詰めてきている。やるしかない。早速、こちらに向かって矢が飛んできた。
「同じ手が二回も通じると思うなよ! 落鳳波!!」
飛んできた矢を斬撃で迎撃する。ついでにその先にいる相手も倒す技ではあるが……それを阻止するために武闘家タイプが間に割って入ってきた。矢がはじけ飛び、斬撃は武闘家タイプの胸に食い込んだ。普通ならそれだけで絶命してもおかしくはないが切り傷程度に抑えている。硬氣功でも使ったのだろう。
「キエエーーーイ!!」
落鳳波を物ともせず、狂気じみた奇声を発しながら殴りかかってきた。右、左、突き上げ、裏拳、回し蹴り! 脅威の連続攻撃の雨あられが俺を襲った。だが、俺は次第に慣れ始めたのか最初よりは余裕でかわせるようになってきた。でも何故か、その時イヤな予感がした。
「麻酔!!」
突然、ヤツは謎のワードを叫びながら正拳突きを放ってきた。事前に察していた俺は孤影承禅を発動させつつ、拳を縦に切り裂いた。これは金縛りを仕込んだ攻撃と思えたからだ。無効化しつつ、相手を攻撃する!
「ギョアアアアアッ!!」
絶叫を上げながら、斬られた右拳を押さえている。不死身とはいえ、痛みがないわけではない。そればっかりはまだ克服できていないようだ。
「虎穴獲虎衝!!」
痛みに悶える武闘家タイプを剣で貫く! 勢いをそこで止めることなく、そのまま突進する!
「うおおおおっ!!!」
突進する間に弓使いから爆発矢が放たれる。それは武闘家タイプの背中で受け止める。下手に頑丈に出来ている分、盾としては申し分なかった。そのまま、構わず弓使いのところまで突進した。
(ズンッ!!!)
「ぎょおわぁぁっ!!」
二人分まとめて串刺しにした。もちろんこれで終わりじゃない。相手は不死身の男だ。生半可な技では倒れてくれないのは十分わかっている。
「これで止めだ! 絶空八刃!!!」
剣を真上に振り上げる。二人の上半身はそれと共に真っ二つになった。死体が血を吹き出す前に体が崩壊し、塵となって消え去った。完全に魔王を倒したときのような消え方だ。やはりコイツらは人間ではないということを実感した。
「やるじゃん。けっこうエグい技だね。消滅するなんてさ。」
犬の魔王は涼しい顔をして俺に近付いてきた。見てみればヤツ自身も敵を倒したようで、離れたところに黒い染みが二カ所出現していた。完全に跡形もない。どちらかと言えばコイツの方がエグいのではないだろうか? その場面は見てないけど。
「コレでも手心は加えたつもりだ。でも、消滅した。コイツらには心その物が存在してなかったんだろうな。」
宗家や猿の魔王と戦ったときみたいに敵の悪意のみを斬った。でも、今回のヤツらには悪意以外の心は存在していなかったのだろう。良心が一欠片でもあれば消滅しなかったはずなんだ……。
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