上 下
15 / 112
第1章 第1幕 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【OK牧場の死闘】

第15話 オニオンズ

しおりを挟む

「ハハッ!」


 妙に場違いな渇いた笑い声。謎の集団のどれもが全て同じ声を発していた。普通はそんなことあり得ない。全て身内、兄弟だったとしても微妙に声が違うはずなのに。四つ子ならあり得るか、とも考えられるが、こんな異様な集団が存在するのだろうか?


「ハハッ! ゲイリー!」


 その内の一人が驚くべき単語を発した。ゲイリー……だと? 同じ髪型、同じ背格好。目の前にいる連中は装備がそれぞれ戦士、魔術師、弓使い、武闘家と違ってはいるが、その姿はまさしく俺の良く知るアイツその者でしかなかった。


「オニオンズ。」

「……は?」

「コイツらはクソ羊の兵隊、オニオンズだ。コイツらは人間みたいに見えても人間じゃない。いわゆるホムンクルスと呼ばれる生命体だ。」

「ニヒィッ!!」


 不気味な笑みを浮かべながら、俺と犬の魔王を囲い込もうとしている。敵意を剥き出しにして袋だたきにしようという意志がありありと感じられた。


「ゲイリーなのか? なんでお前がここにいる? なんでお前が四人もいるんだ?」

「勘違いするなよ。似てはいても、アンタの知っている個体とは別人だ。説得は諦めるんだな。」

「ハハッ、タコ殴り!!」


 ゲイリーにソックリなオニオンズとかいう奴らは有無を言わさず。攻撃をしかけてきた。俺と犬の魔王は背中合わせになっているので、それぞれ二人ずつ相手をする体勢になった。俺の相手は弓使いと武闘家だった。


「チョエアーッ、ホチャーーッ!!」


 武闘家タイプは謎の奇声を上げながら猛烈な勢いの後ろ回し蹴りを放ってきた。俺は身を屈めてギリギリで躱すことに成功した。髪の毛を掠めていったそれは明らかに即殺出来そうな程の威力を秘めていた。素手とはいえ、それは凶器と変わりない!


「随分と鋭い蹴りだな! いつの間にお前は足癖が悪くなったんだ?」

「あたぁ!!」


 俺は立ち上がりつつ、ゲイリーにソックリな男に問いかけた。奴は俺の問いかけに返答することなく、次は突きを放ってきた。相手の様子を見ながら、体を横へ反らして躱す。話を聞こうともしていない。まあ、元々話をまともに貴公とする奴ではなかったが。


「あた! あた! あた! あたた! あたぁ!!」


 連続で突きを放ってくる! しかも、次第に放たれる間隔が短くなっていった。横へ逸らしたり、屈めたりするだけでは凌げなくなってくる。後ろへ飛び退きながら躱し続けるが、奴は猛烈な勢いで飛びついてきた!


「あたたたっ!!」


 最早、飛び退きでも躱しきれる早さではなくなり、何度か俺に掠める程にまでなっていた。このままではやられる!


「おあたぁっ!!!!」

(ブンッ!!!)


 一呼吸、間を置いてから大振りなパンチを繰り出してきた。明らかに直前の突きの連打とは異なる重い一撃。しかも、その拳には別の力が篭もっていた。


(ガシュッ!!!)


 俺は奴の拳を見えない刃で受け止めた。峨嶺辿征を使って、奴の企みを事前に防いだのだ。この一撃には明らかに魔力が込められていた。これはおそらく爆裂魔法の魔力に違いない。ゲイリーの戦いぶりは何度も見ていたので、感覚的にそれがわかった。


「格闘技にまで爆発要素絡めるんか、お前は! 全く、とんでもない奴だぜ!」

「ニヒイッ!!!」


 奴は拳を見えない刃に受け止められているというのに、そのまま拳を食い込ませてきた。拳には血が滲んでいても、止めようとはしなかった。目の前の奴に気を取られているうちに俺はもう片方の弓使いの事を忘れていた。こちらに向けて弓を引き、狙いを定めているのが視界に入った!


(ジリリッ!)

「ニヒヒッ!!」


 遠くにいるというのに弓の軋む音が聞こえてくるようだ。その意識した一瞬の間に、矢が放たれていた。こちらに向かって飛んでくる! 避けようと行動を起こそうとしても身動きが取れなかった。目の前の奴は拳を食い込ませているだけなのに!


「クソッ!?」

「……ちょっと痛いけど我慢して!」

(バゴオッ!!!)

(……ドゴァァァァァァン!!!)


 俺は激しい衝撃と共にその場から弾き飛ばされた。少し間を置いてから、強烈な爆音が鳴り響いた。弓使いの放った矢が爆発したのだ! 俺は弾き飛ばされたから助かった。


「危なかった。奴は金縛りでアンタを足止めしてたんだよ。」

「助けてくれたのか?」


 犬の魔王が俺に体当たりをしてあの場から救ってくれたみたいだった。機転を利かせてくれなかったら、爆発に巻き込まれていただろう。と、思っていたら、敵さんもこの隙を狙わないはずがなかった。


(ドド! ドン!!)


 こちらに二発の爆熱火球が飛んできていた! 多分、魔術師タイプの放った攻撃魔法だ! 体勢を瞬時に立て直した俺はあの技で迎撃した。


「霽月八刃!!」

(バシュ、シュン!!)


 火球は瞬時に消え去った。今度はこちらが犬の魔王を救うことになった。貸しはすぐに返すことになった。

 初対面の魔王と息の合った連携、見覚えのある味方だったはずの男に襲われる。全てがあべこべな事態に発展していることに、変な苦笑いがこみ上げてくるのを堪えきれずにいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります

まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。 そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。 選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。 あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。 鈴木のハーレム生活が始まる!

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

2年ぶりに家を出たら異世界に飛ばされた件

後藤蓮
ファンタジー
生まれてから12年間、東京にすんでいた如月零は中学に上がってすぐに、親の転勤で北海道の中高一貫高に学校に転入した。 転入してから直ぐにその学校でいじめられていた一人の女の子を助けた零は、次のいじめのターゲットにされ、やがて引きこもってしまう。 それから2年が過ぎ、零はいじめっ子に復讐をするため学校に行くことを決断する。久しぶりに家を出る決断をして家を出たまでは良かったが、学校にたどり着く前に零は突如謎の光に包まれてしまい気づいた時には森の中に転移していた。 これから零はどうなってしまうのか........。 お気に入り・感想等よろしくお願いします!!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...