【第3部】勇者参上!!~究極奥義で異次元移動まで出来るようになった俺は色んな勢力から狙われる!!~

Bonzaebon

文字の大きさ
上 下
12 / 179
第1章 第1幕 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【OK牧場の死闘】

第12話 牙をムキィーヌ!!

しおりを挟む

《サァ、いつでも来い! 偽物、ニセ・タニシ! このニュー・タニシが成敗してやるぅ! 牙をムキィーヌ!!》

(ムニッ!)


 夜になり、囮作戦は決行された。真っ暗な牧場で、意気揚々と偽物を倒すと息巻く変装タニシ。珍しく強気の姿勢で牙を剥き出しにして、まだ見ぬ敵を威嚇している。アイツにしては割と凶暴な顔つきになってはいるが、いつまで持つのやら……。しかも、お腹にはバクダンを抱えている。俺のせいだけど。


《おうおう、中々、様になってるじゃないか。これなら偽物も簡単に誘き寄せられるだろう!》

「こうもうまく乗せられるとは……。やっぱお前とアイツは馬鹿兄弟なのは疑う余地もねーよ。」

「なにか言った?」

「別に。」


 俺とファルは離れたところで身を隠し、タニシとその周辺を警戒している。もちろんウィザーズ・アイの魔法で色んな角度から監視しているし、暗闇でも動きが見通せる魔法ナイト・ヴィジョンも使っている。コレのおかげで灯りがなくてもハッキリと状況がわかるのだ。もし何らかの異変が発生すれば、いつでも駆けつけられるように待機している。


「さあ、鬼が出るか蛇が出るか? 羊・牛が現れるか、黒犬が現れるか? さて、現れるのはなんだろうな?」

「オイオイ、羊・牛が攫われる、ってのが抜けてるぜ? 元々はそれが発端だ。忘れるなよ。」

「そうだっけ?」

「オイ!」


 でも、どうなんだろう? 事件として発覚したのはそういう形だったかもしれない。だが、犯人候補なのは、黒犬と冠り物野郎達、もしくはそれ以外の何か、だ。ある意味、卵が先かニワトリが先かという哲学的な問題にぶち当たってしまうのは宿命なんだろうか?


「どうなるかな? ホントに現れるんだろうか?」

「現れるとは限らない。何しろ相手は痕跡を残していないんだ。俺らの目に付かないところで犯行に及ぶ可能性もある。黒犬やらの情報はあくまでその他の異変だけなのかもしれない。行方不明事件に関係あるとは誰も言ってないぜ?」


 そうかもしれないけど、そこまで疑い始めると全てを疑わないといけなくなるからなぁ。町の住人達とか従業員とか。それが真実でないことを祈りたい。


《ほぇ~、ほぇ~。》


 と、急に何やら怪しげな声が聞こえてきた。タニシや俺らが潜んでいる場所とは離れたところに設置した監視の目がその声をキャッチしたようだ。でも、なんか聞き覚えのある声の様な……?


《婆さんや、飯はまだかのぅ?》

「例のちっちゃいお爺ちゃんじゃねえか!」


 なんであの爺ちゃんが? まさか徘徊癖があったというのか? 夜のちまたを徘徊するとはこの事か。そんな情報はどこにもなかったぞ?


《なんじゃ、さっきから目の前が真っ暗じゃ。歳を取りたくないモンじゃのぅ。》


 お爺ちゃん? それは歳のせいではありませんよ? 今は夜なだけですよ? なんでも歳のせいにすれば済むものじゃないですよ!


《それよりも飯はまだかいのぅ? ……ぐう、ぐう……。》


 いきなりいびきを掻き始め、鼻には鼻提灯を作りつつ、立ち寝を始めてしまった。


「なんか、いきなり寝始めたんだけど……。」

「徘徊癖と夢遊病の合わせ技じゃないか? 世話の焼ける爺さんだぜ。」


 それはまた厄介な……。いつもこんなんじゃ身内も大変だろう。老人の介護は大変だろうな。身近に老人がいなくて良かった。あ、そういえば、一人だけいるか? あの爺さんはまだ大丈夫そ……、


《ギャわわーーん! なんじゃおりゃあっ! ヤンスか? ヤンスか、オラァ!!》


 爺さんに気を取られているうちにタニシ側に異変が起きたようだ。なんか妙な人影が数体現れている!

「出た! 冠り物の集団!」

「チッ! 爺さんに気を取られていたとはいえ、俺の感知に引っかからないとは!」


 俺も直前まで気配を感じなかった。何か突然姿を現したかのような感じだ。転移魔法でも使ったのだろうか? そうじゃないと説明が付かない。


《ヤンスかぁ! ヤンスならぁ、あっしの必殺でスペシャル技であの世に送ってやるぅ!》


 威勢の良い啖呵を切りながら、お得意のフレイルを取り出した。それを前の方に突き出し、バツの字を描くようにしながらビュンビュン振り回し始めた。


《くらえぇ! 必殺奥義、タニシァン・エックス・プロージョン!!!》


 ご大層な名前は付いているが、ただ単にバツの字に振り回しているだけ。駄々っ子パンチと大して変わりがない。多分、このままでは……、


(コキーーーン!!)

《わギャアアアッ!!!》


 自滅した。もれなく自分の股間にクリティカルヒット、もとい痛恨の一撃を食らわせてしまった!


《ウぉ……ウぉのれ! 貴様ら、なんちゅうことをしてくれたんでヤンス! 急所を狙うとは卑怯者めぇ……!》


 自分でやったことだろ……。というか珍しく自滅しても、気絶には至っていない。これは肉体改造のもたらした結果に違いない!
(※何も強化はしてません。)


「しょうがない、何かあってからで遅いからな。助けに行くぞ!」


 俺はダッシュでタニシのところへと向かった。ファルには引き続き監視をしていてもらう。これは事前に打ち合わせていた通りだ。


「うわハッ!? な、何をするんでヤンしゅ?や、やめ……わははーっ!?」


 なんか、羊頭に羽交い締めされてる! しかも牛頭が助走を付けて突進しようとしている! 間に合うのか?


(ゴオッ……グシャアアアッ!!!)


 凄まじい風切り音と共に牛頭の姿が消え去った。……違う! 何かに叩き潰されたんだ! 黒い塊のような物に潰された! しかも、それを振り下ろしたのは……黒いコボルトだった! 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王太子に転生したけど、国王になりたくないので全力で抗ってみた

こばやん2号
ファンタジー
 とある財閥の当主だった神宮寺貞光(じんぐうじさだみつ)は、急病によりこの世を去ってしまう。  気が付くと、ある国の王太子として前世の記憶を持ったまま生まれ変わってしまうのだが、前世で自由な人生に憧れを抱いていた彼は、王太子になりたくないということでいろいろと画策を開始する。  しかし、圧倒的な才能によって周囲の人からは「次期国王はこの人しかない」と思われてしまい、ますますスローライフから遠のいてしまう。  そんな彼の自由を手に入れるための戦いが今始まる……。  ※この作品はアルファポリス・小説家になろう・カクヨムで同時投稿されています。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

俺が異世界帰りだと会社の後輩にバレた後の話

猫野 ジム
ファンタジー
会社員(25歳・男)は異世界帰り。現代に帰って来ても魔法が使えるままだった。 バレないようにこっそり使っていたけど、後輩の女性社員にバレてしまった。なぜなら彼女も異世界から帰って来ていて、魔法が使われたことを察知できるから。 『異世界帰り』という共通点があることが分かった二人は後輩からの誘いで仕事終わりに食事をすることに。職場以外で会うのは初めてだった。果たしてどうなるのか? ※ダンジョンやバトルは無く、現代ラブコメに少しだけファンタジー要素が入った作品です ※カクヨム・小説家になろうでも公開しています

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます

neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。 松本は新しい世界で会社員となり働くこととなる。 ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。 PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。

毎日スキルが増えるのって最強じゃね?

七鳳
ファンタジー
異世界に転生した主人公。 テンプレのような転生に驚く。 そこで出会った神様にある加護をもらい、自由気ままに生きていくお話。 ※ストーリー等見切り発車な点御容赦ください。 ※感想・誤字訂正などお気軽にコメントください!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

処理中です...