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第1章 第1幕 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【OK牧場の死闘】
第7話 始める前から大惨事……。
しおりを挟むタニシが再び気絶したところで、俺らタービュレンスは聞き込み調査を始めることになった。
「捜査始める前から大惨事になるとはな。」
タニシに囮作戦のことがバレてしまい、当人はショックで倒れ、下痢も垂れ流す前代未聞の大惨事となってしまった。悪いことに悪いことが重なった結果、最悪の事態になってしまった。
「やっぱ、重要な話するときは極力関係者以外は立ち入れないようにするべきだった。俺とあろう者がうっかりしてたぜ。」
従業員の気遣いが裏目に出たため、あんなことになってしまった。最初から密室で打ち合わせしていれば防げたはず。でもな、体質に合わない物を飲むタニシも悪いと思う。下痢を楽しむなんておかしすぎる! 頭おかしい!
「気を取り直して、聞き込みを始めようぜ。オーナーさんから教えてもらった目撃者を順番に当たっていくぞ。」
ファルはメモを取り出し、目的地の場所を確認している。ピエール君が例の黒犬を目撃した人をリストアップしてくれていたのだ。そこにはその人達の名前や住所、特徴など、探すときに役立つ情報が書かれていた。ここまでしてくれているとは、さすがに仕事が出来る経営者だなと思った。
「始めはド定番の酒場だな。店員や常連客に目撃者がいるそうだ。」
情報を集めるなら酒場、というのはある意味冒険者なら常識みたいなもんだ。とはいえ、俺はあまりそういう経験がない。大体、事件の方からこっちにやってくる印象しかない。魔王とか魔術師とかそんなヤツらばっかりだったし。ある意味、勇者という肩書きがあるとそういう目ばっかりに会う。みんなそういうのに憧れるもんだが、実際やってみると相当キツい。
「ちょいと、邪魔するぜ。」
ギィと入り口にある扉を開けつつ、ファルは一言宣言して中に入っていく。まだ夕方に差し掛かりかけた時間帯だが割と客は入っていた。ほとんどの客はこちらに注目をしている。
「邪魔するんやったら、帰って~!」
「オイ、コラ! しょうもないボケをやってる場合か。」
「ええ~? 定番のボケじゃないか。」
「そういうのには付き合ってられん。」
「ちぇ~。」
お約束のボケをやったら怒られた! ゲンコツのおっちゃんなら、お約束に付き合ってくれるんだが……。
「おっ、わかってるな、あんちゃん。気持ちはわかるでぇ!」
ファルがボケに付き合ってくれないのを嘆いていると、席に座っているオーク族のオッサンが声をかけてきた。
「あんちゃん、オークと付き合いでもあるんか? ボケとツッコミの礼儀ってモンをわかってるやん。」
「いやぁ、ある意味、その礼儀作法を教えてくれた師匠的な人がいましてね。」
「おお! さよか! やっぱそうやないかと思うたわ!」
なんか意気投合し始めているので、そのまま話をする事にした。席には他にもう一人オーク族の人が座っていた。その人は今話しているオッサンよりは若く見える。
「アンタ、もしかして、バリカタさんか? ピエールオーナーからの紹介で話を聞きにやってきたんだが?」
「ああ、オーナーはんが言うてた、特務捜査官の人らか! まさかクルセイダーズの人やとは思わんかったわ!」
「特務捜査官? まあいい、そういう事にしておいてくれ。俺はファル、そしてコイツが相棒のロアだ。」
特務捜査官! 何か大げさだな。闇の組織、暗殺ギルドとかを捜査する専門家みたいな響きだ。俺達は素性を隠した方がやりやすい。下手に知名度があるので目立ちすぎてしまうからね。俺も今は額冠を外してきた。ファル捜査官の助手みたいなポジションを偽装している。
「ファル? なんか聞いたことある名前やわ。あの有名なシオン家の人とちゃうの?」
「コイツはワイの娘のパイタン。ナントカ言うクルセイダーズの魔術師のファンやねん。」
バリカタさんの連れの人がファルのことを指摘してきた。声と名前を聞いてビックリした。女の人だったのだ! オーク族の女性は初めて会ったかもしれない。
「良く言われる。名前が同じだけさ。いつも間違われて困ってるんだ。」
「そうなんか。残念やわ。うちはあの人のファンやから、サインでも貰おうかと思ったんやけど、しゃあないな。」
ファルのファンだったとは。残念ながら正体は明かせないので今は諦めてもらうしかない。事件が解決してからココを去る直前に、サプライズで明かすとしよう。
「ほいで、アレの話やろ? 家畜の行方不明事件と謎の黒いコボルトが現れた、っちゅう話? ワイよりかはこの娘の方がよう知ってると思うで。追いかけようとしたんはこの娘くらいや。」
「マジで!?」
本命はこのおっちゃんじゃなくて、娘の方だったとは。じゃあ、じっくり聞かせてもらうとしよう。ファルの押しポイントを……おっと違った! 黒犬の事を!
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