上 下
309 / 331
第3章 第3幕 はぐれ梁山泊極端派【絶望と憎しみと学園モノ……と大戦争!?】

第309話 アストラル・ボディ

しおりを挟む
「肉体が滅んだら……、ってそれ、死んだことと同じ
「肉体が滅んだら……、ってそれ、死んだことと同じなんじゃね? もういい加減、屁理屈はやめてくんないかな、学長さんよ?」


 目の前には学長の死体が転がっている。ただ単に死んでるわけじゃない。四肢は切り落とされ、首も胴体から離れている。誰がどう見ても死んでいる。これ生きてるんなら、ゾンビとかと同じアンデッドだ。


「お前はもう死んでいる!」

「だから本人は死んでないって言ってるだろうが!」

「両手両足を斬り、頭を体から切断した。あと経絡秘孔のなんとかを突いた。お前は後、十秒後に死ぬ!」

「普通は十秒経たなくても生きられないと思うけど……。けいらくひこうっていうのは何?」


 ファルとエルは俺にツッコミを入れてくる。学長が死なない事へのノリツッコミなんだから、それを潰すのはやめて欲しい。


「本人がもったいぶるから、俺がこの男の秘密を暴露してやる。コイツはな子孫の体に乗り移って、千年以上も生き続けてやがるんだ! この体は俺の直接の親父の体であって、ヤツ自身の体ではないんだ!」

「ま、まじで!?」


 学長から感じる得体の知れない気配の正体はこれか! 何かが乗り移ったような気配というか、体からはみ出すようなおぞましいほどの威圧感はそれが原因だったのか。


「元々、エルフって寿命長くなかったっけ? どうしてそんなことをする必要が?」

「知るかよ。本人に聞いてみな。」


 エルフ族は人型種族としては長命で、人間のほぼ倍の寿命だそうだ。古代人の血を濃く引き継いでいるからと聞いたことがある。それだけ長くても物足りなかったのいうか? 強欲すぎだろ。


「次のスペアは代々Aの一族から選出される。当然、俺もこの男のスペアボディの候補だったというわけだ。家を出奔して台無しにしてやったがな!」

「勘違いするな。もうこれからはスペアボディに魂を移す必要がなくなったのだよ。だから、貴様は不要となったのだ。私の研究は完成に至った。物理的な肉体から解き放たれたのだ。」


 学長の言っている意味が理解できない。体は必要なくなった? 物理的な肉体から解き放たれた? だとすれば何を手に入れたのだろう?体がないなら、幽霊と一緒じゃないか!


「……アストラル・ボディ。」

「え? ファル、今なんて?」

「魔法力を物質に変化させる魔術、アストラル・ファクト。それで新たな体を作ったってところだろうよ。」


 魔法で体を作っただと? それってある意味ゴーレムと同じじゃないかよ! タルカスをあれだけ小馬鹿にして失敗作呼ばわりしていたヤツがそんな手段を用いるなんて! 笑わせんなよ!


「私に対して怒りを感じているのかね? それはお門違いだ。私は風その物になったのだ。これはある意味、神となったも同意。私は嵐の王ストーム・ルーラーとなったのだ。」


 風が一層強まり、一カ所に集まるように吹き込み始めた。それが……人の姿を為している様に見える。き、気のせいだよな? そんな風に見えるだけと……思いたい。


「これが私の新たなる姿だ。風その物となった私にとっては、意のままに風は愚か、嵐すら思い通りに操れるのだ。」


 風その物が敵? 今まで相手にしてきた連中とは毛色が違いすぎる。形を持たない、風という現象その物が敵だなんて、想像を遙かに超えている!


「私は不本意なのだよ。ここまで大げさな事態にせずとも、世直しは行えたはずなのだ。貴様らが悪あがきに悪あがきを重ねた結果がこれなのだ! 貴様らが愚かすぎるからいけないのだよ! 私はこのまま人類を抹殺する羽目になった。貴様らがそうさせたのだ! 罪深き者どもめ!」


 人類を抹殺する? まるでタルカスみたいじゃないか。もちろん動機は違うのだろうが、危険な思想であることは間違いない。


「あえて言おう、私以外の人間はカスであると! 知力・能力の発達を促す措置も行ったが、互いを飲み込むほどの発展をしないまま、和解等という下卑た結末に持っていこうとした。それは即ち進歩の否定、進化の否定に過ぎない。互いに争い合い、喰らい合わねば、貴様ら低脳人類は進歩できぬのだ!」

「争いが起きれば弱い人々が大勢死ぬ! それを阻止するためには争いが起きないことが一番じゃないか!」

「そんな些末な犠牲など勘定に入れていられるほど甘くはない。犠牲という生け贄で今までどれだけ人類が発展してきたと思う? それを補って余りある価値があるのだ!」

「犠牲になる人達の気持ちを知ったことがあるのかよ!」

「ない。一切、必要ない。私は世界の舵取りを行う立場の存在だ。神が人間如きの気持ちなど考える暇などない。女々しい感情など神は持ち合わせていないのだ!」

「そんなことが許されると思っているのか!」

「許される? 誰に向かって物を言っている?私は神だ。むしろ、貴様ら人類の方が許しがたい! だからこそ一掃して、新たな人類を私が創造するのだ!」


 学長の考えは最早、人ではなくなっていた。現実からかけ離れた存在といってもいい。それを今から止めないといけない。ここで負ければ間違いなく人類の歴史が終わる。こんなところで終わらせてたまるかよ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】勇者学園の異端児は強者ムーブをかましたい

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、pixivにも投稿中。 ※小説家になろうでは最新『勇者祭編』の中盤まで連載中。 ※アルファポリスでは『オスカーの帰郷編』まで公開し、完結表記にしています。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

処理中です...