302 / 331
第3章 第3幕 はぐれ梁山泊極端派【絶望と憎しみと学園モノ……と大戦争!?】
第302話 無風《フェルマータ》
しおりを挟む「乱気流か。所詮それは“風”の持つ一面でしかない。私もかつて“嵐を操る男”と呼ばれた物だが、空間に存在する気流を自在に操る事こそ風の魔術師の神髄だ。」
ファルと学長の見えない戦いが続いてしばらく経つ。互いに風の魔法を繰り出し相殺し合っているようだが属性が属性だけに目に見えない。たまにそよ風とか突風が流れ弾のように吹き付けてくるが、それぐらいしか戦いの余波は感じられない。ましてや、俺みたいに魔法がからっきしダメな人間にはサッパリわからない。殺気が複雑に混線してるくらいの気配くらいかな、俺にわかるのは。
「貴様にこれが出来るか? “無風”。」
「……!?」
何か空気がピンと張り詰めたような感覚に襲われた。というか、風が完全に止まった。こんなのは初めてだ。風を凌ごうと、建物とかに入ったって、隙間とかが微妙にあるからどこかしら漏れ入ってくるものだ。今は屋外、周りにはほとんど障害物のない場所だというのに、完全に風という物がなくなったのだ。
「エア・スラッシュ! エアリアル・スティンガー!」
ファルは魔法を次々と放っているようだが、何も起こらない。魔力の高まりと放出される気配は感じられるが、効果が発生しない。完全に風がボイコットを起こしたかのように何も起きなかった!
「私の意で風は完全に停止した。だからこそ何人たりとも、風は起こせぬ。私の許可が下りなければ、そよ風すら発生しない。」
「くっ!? クソッタレ!」
ファルも悪あがきをやめて、次にどうすべきかを考えているようだ。ここは俺の出番じゃないか? 得意の魔法が封じられたんなら、俺の剣術で対抗するしかない。まずはこの技を食らわせてやる!
「落鳳波!!」
離れた所にいるのでまずは牽制代わりの斬撃を放つ! ……放つ? あれ? 放ったよな? 剣は間違いなく振った。でも何も起きてない。
「無粋者め。何であろうと風は起こせぬと言ったはずだ。衝撃波を巻き起こしたつもりなのだろうが、風であることには変わりない。私の許可無く風を起こすことは許されぬのだ。」
うそーっ! 落鳳波まで封じられた! 魔法じゃないよ? 剣術だよ? 何も起きないってありかよ! 別に属性なんか付いてないのに。却下されるってどういう事?
「じゃあ、直接斬りかかるまでだ!」
遠当てが効かないだけだ。接近戦に持ち込むしかない。さっきの真空で圧殺する魔法が恐いが、動きが読まれてたから、喰らいそうになっただけだ。読まれにくい攻撃で仕掛けるしかない!
「有隙の征!」
果敢に攻めて隙を作るしかない。相手は魔術師だ。接近戦の対処法は少ないはず。相手がいくらとんでもないヤツでも、長時間は持ちこたえられないだろう!
「割と良く動くな、学長さんよ?」
「さて、どうしてなのか、わかるかね?」
「……峨嶺辿征!!」
有隙の征で連撃をして、不意に跳躍してからの峨嶺辿征。これに反応できるヤツは戦士でも滅多にいない。……いないはずだが、コレも躱された。しかも、最低限の動きで、だ。
「貴様の動きは手に取るようにわかる。例え目を閉じていてもわかるぞ。」
馬鹿な! 魔術師に俺の気配が読めるとは思えない。しかも、この男は武術を馬鹿にしているのでそういう鍛錬をやっているとは到底思えない。何かトリック的な物があるはずだ!
「これならどうだ! 霽月八刃!」
魔法で障壁の様な物を作って防御しているのかもしれない。なら、それごと破壊してぶった斬る! しかし、これも虚しく空を斬った。
「得意の秘剣とやらも当たらなければどうと言うことはない。私を凡百の魔術師共と同じように考えないことだ。」
そうだろうさ! どんな大技でも当たらなきゃ意味がない! さっきから空振りばっかりだ。空を斬る、空気を斬っているだけだ。……ん? “空”を斬る? ってことは、空振りというか攻撃の時は相手だけじゃなくて、空気も斬ってるって事になるよな。それはつまり……、
「おい、相棒、そいつは風を読んでお前の攻撃を躱してやがるんだ。体を動かしただけでも、わずかに風は発生する。その流れを読み取ってお前の攻撃の軌道を見切っているんだ。」
「あーっ!? 自力でわかりかけてたのに答えを先に言うなよ! いいとこだったのに!」
「そりゃ悪かったな。まあ、お前にしちゃあ、よく考えたな。このまま、繰り返してくたばると思ったから先に言った。」
「チクショー!」
くそう! いいところを持っていかれてしまった! トリックを解き明かしてドヤってやろうと思ったのに! でも、正解だったからいいか。とりあえず、トリックはわかった。魔術師なりの躱し方があるんだな。
「敵の動きは全て風が教えてくれる。これが風属性魔術の極意、“風読み”だ。私の躱し方がわかったとはいえ、貴様らが私を傷付ける事など出来ん。何をしようと無駄だ。」
「そりゃどうかな? 無風でも風を起こすのが俺達、タービュレンスだ。何をしても動かないならテコでも何でも使って動かしてやるさ。」
ファルは手に風の剣を出現させた。しかも二刀流。魔法が封じられた今、学長を攻撃する手段は武器での攻撃しかない。二人がかりなら、なんとかなるかもな!
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
【後日談完結】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~
ばいむ
ファンタジー
剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。
高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。
特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長していった。
冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、そして・・・。
初投稿というか、初作品というか、まともな初執筆品です。
今までこういうものをまともに書いたこともなかったのでいろいろと変なところがあるかもしれませんがご了承ください。
誤字脱字等あれば連絡をお願いします。
感想やレビューをいただけるととてもうれしいです。書くときの参考にさせていただきます。
おもしろかっただけでも励みになります。
2021/6/27 無事に完結しました。
2021/9/10 後日談の追加開始
2022/2/18 後日談完結
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった
ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」
15歳の春。
念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。
「隊長とか面倒くさいんですけど」
S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは……
「部下は美女揃いだぞ?」
「やらせていただきます!」
こうして俺は仕方なく隊長となった。
渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。
女騎士二人は17歳。
もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。
「あの……みんな年上なんですが」
「だが美人揃いだぞ?」
「がんばります!」
とは言ったものの。
俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?
と思っていた翌日の朝。
実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた!
★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。
※2023年11月25日に書籍が発売!
イラストレーターはiltusa先生です!
※コミカライズも進行中!
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる