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第3章 第3幕 はぐれ梁山泊極端派【絶望と憎しみと学園モノ……と大戦争!?】
第292話 滅亡させる気あったの?
しおりを挟む「な、何故だ? 明らかに私が勝っていたはず……。」
俺とタルカスの決着は一瞬にして終わった。タルカスは勝利を確信していた。一方で俺は死を確信していた。あの瞬間、俺は意識さえ飛んでいたのだ。おかしい。意識のない間に何が起きたんだ?
「俺は何をした? この結果の説明が自分でも出来ない。」
今、側にエルがいる。それなら、俺とタルカスの決着の一部始終を見ていたんじゃないか?
「どうして? 憶えていないの? あなたは一瞬のうちにタルカスを斬り伏せていたわ。わずか二太刀で!」
二太刀? 俺は二回も攻撃していたのか? 両腕、四本の足、それぞれを切り落として、今の状況になった? そういうことなのか。
「最初は“むえいとうじん”という名前の奥義、二回目はあなたの究極奥義だった。特に最初の技は初めて見たわ。いつの間に習得していたの?」
「むえいとうじん? なにそれ? そんな技聞いたことも、見たこともない。」
「どういうこと? あなたはハッキリと天破奥義と口にしていたわ。」
見たことも聞いたこともない天破奥義。知らない奥義だから天破奥義ということは理解できる。天破奥義は基本的に使い手が後世に現れなかったために、幻の奥義となっていた。それを俺が使える理由がわからない。それこそ、黄ジイしか知らない技だろう。
「ええい! 余計な話などしている場合か! さっさと私に止めを刺せぃ! 私に生き恥を晒させるつもりか!」
そうだ。俺が何をしたのかを知るのは後でもいい。目の前の敵を放置している場合じゃない。タルカスはまだ生きている。コイツとは話の続きをしなければならない。無意識の行動でも、相手の命まで奪っていなかったのは不幸中の幸いだった。死なせてしまっては全てが無駄になってしまうからだ。
「止めは刺さないよ。俺は始めからそのつもりだった。生きてさえいれば、話ぐらいは出来るからな。」
「人類の敵である私に情けをかけるつもりか!生きてさえいれば、私は何度でも目的を果たそうとするだろう!」
「それでも、命は奪わない。戦っているうちに、アンタが人類滅亡を達成できるのか疑問に思えてきたんだ。」
「何だと!?」
確かに人類を抹殺するための計画は用意周到だったと思う。人をこっそりゴーレムに差し替えて反乱を起こしたのだから。でも正直、疑問に思えるところもある。
「アンタは人類滅亡を目的に掲げてるけど、本当の目的は別のところにあるんじゃないのか?」
「馬鹿なことを言うな! 私はあの悲劇の後から今に至るまで人類への報復を第一に考えてきた。いつしか学院に辿り着き、魔術師達の動向を探っているうちに、人間達の醜さ、愚かさを目の当たりにし、人類殲滅を志すに至ったのだ!」
「だったら、もう少し時間をかけて、ゴーレムと人を完全に入れ替えるべきだったんじゃない? それならもっと確実に学院を乗っ取ることも出来たんじゃないの?」
トープス先生の話によれば、四分の一程度の人々をゴーレムに置き換えていたらしい。死亡した人、行方不明になった人を置き換えるところから始めていったようだ。
「ある意味、人助け、人格更生をした上で置き換えてたんだろ? それ、人類滅亡に必要なことだったのかなぁ?」
ジムのように学院での立場が危うくなった人や、裏で後ろめたい行為を働いている様な人を優先して置き換えていったらしい。置き換えられた人は大抵、問題を犯さなくなった傾向にあるという。悪い部分は置き換える段階で記憶を改竄していたそうだ。
「違う! 私はただそのような輩の弱みを握って協力させていたに過ぎん! あくまで利用しやすくするためだ!」
「そのことについてはそういう見方も出来るから何とも言えないけど、今回の決戦もわざわざ互角になるようなバランスにしてたんじゃない? もう少し数が多ければ俺らの方が負けてたと思うよ?」
「その様なことはない! 私の想定よりもお前達が強かっただけだ!」
俺との戦いも一騎打ちではなく、他のゴーレムと連携していれば、俺はあっさり倒されていたはず。俺の仲間も同じ事が言えるだろう。それでも侍だけは生き残りそうな気はするが……。そして何より、汎用型のゴーレムがこの場にいないことが気になる。加えて、ヘイゼルとゲイリーもいない。人質として有効活用していないのは何故だ?
「私は負けた。だが、勝敗はまだ決しておらぬ。別働隊をお前達の本陣へ差し向けてある。ヘイゼルと……あのホムンクルスの男もだ!」
「ヘイゼルとゲイリーが? というかアイツがホムンクルス? なんでそんなことがわかるんだ?」
その情報は……アラムから聞いていたから俺は知っていただけで、他は誰も知らないはず。その情報にしたって、信憑性の低いゴシップ話のはず? どんな根拠があるんだ?
「気付いていなかったのか? あの男はとある勢力が送り出したスパイだろう。本人もその自覚はないだろう。お前達は絶えず、あの勢力から監視されているのだ。おまけにお前自身の解析も行っているはず。お前は知らず知らずのうちに技を盗まれていっているのだ!」
「あの勢力って、何だよ?」
「それよりも本陣の事を気にしなくても良いのか? 私を倒してもヘイゼルが私の意志を引き継いでくれるだろう。」
「くっ!?」
どうする? 戻るか? この場は粗方片付いたみたいだし、セクシー先輩の魔獣軍団やR教授達だけではみんなを守り切れないかもしれない。どうすれば……、
「勇者殿、心配する必要はありませんよ。ロバート先生があちらへ向かっています。それに、悪魔の鎧を着た戦士が孤軍奮闘してくれているようです。」
声のした方向を見てみれば、トープス先生がいた。その傍らにはミミック君もいる。
「トープス! それにフォグナーまで! 無様な姿を笑いにでも来たか!」
フォグナー? なんかゴーレム勢力の有力人物だったと思うが、それらしい姿のゴーレムはどこにもいないような気がするんだけど?
「勇者殿、今まで黙っていたことをお詫び致します。私がフォグナーです。一応、現存する最古のミミックが私の正体です。」
「み、ミミック君が~!?」
ここにきて、衝撃の事実が発覚した! ミミック君の正体がフォグナーだったなんて……。通りでやたら強くて、芸達者だと思っていたら、最古のミミックだったからなのか。
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