287 / 331
第3章 第3幕 はぐれ梁山泊極端派【絶望と憎しみと学園モノ……と大戦争!?】
第287話 相手の想定外を狙うべし!
しおりを挟む「ぬう! まるでのれんに腕押し、月夜に提灯の如き手応え!」
拙者は今、二騎の騎兵型の人形兵と対峙している。砂塵武者と共に交戦していても、事態は膠着状態に陥っておる。何度も必殺の一撃を見舞ってはいるが、全ていなされる。
「打撃、斬撃をいなすのならば、拙者にも考えがある!」
敵は我らを挟むようにして、円錐型の突撃槍を構え突進してくる。それぞれ背中合わせに一騎ずつ相手にするよう待ち構える。槍の穂先が眼前に迫る。この瞬間を待っておった!
「捕まえられる事など想定してはおるまい!」
拙者は槍を脇で捕らえ、二の足で堪え突進を止める。後ろに下がってはゆくが相手の勢いは落ちていき、最終的に止まることとなった。
「フム、拙者の予測通り、黒き群雲は現れなかったでござるな。さて、ここからどうしてくれよう?」
感情無き人形兵は力任せに槍の拘束は剥がそうと必死になっておる。拙者がこの後の攻撃を問うたところで、返答は帰ってこぬ。つまらぬ事よ。心ある武士ならばその問答で楽しめるのだがな。とはいえ拙者も人形兵を用いる身、とやかく言える立場ではないな。
「相手を捕らえた時はまずこれよ!」
(グンッ……ドシャアァァッ!!!)
槍ごと相手を横に捻り、体勢を崩し、その場の地面に叩きつける。砂塵武者も同様の動きをさせている。相手が人間であれば槍から手を離し逃れることも出来ようが、この人形兵は腕と一体化しておる。それ故、この体術からは逃れられなかったのだ。
「このまま柔術の極みを叩き込んでくれよう!」
地に伏した相手の首を掴み、折りに行く。急所とは言えぬだろうが、頭脳はここにあることは気配を探ればわかる。その次は胸部を狙う。心の臓の位置に動力源があるからだ。全て人の子と同じ位置に配しているのは拙者の砂塵武者も同様。やはり、人
形といえど同じ位置にするのは他の者も同じであるようだ。
(ミシッ……、)
相手の首が軋んだ瞬間、拙者は異様な感覚に見舞われた! 体の質量が消失し、掴んでいたはずの相手の首は消え、気が付いたときには絞めの体勢で拙者は地面に横たわっておった!
「ぬう! 今のは!?」
周囲を見渡せば人形兵が体勢を立て直し、起き上がっていた。離れたところに飛ばされておる! いや……転移させられたと言うべきか?その間、人形兵は再び突進する動きを見せていた。
「転移魔術を防御法に転化させた? おかしな事を思いつくものでござるな。」
防御を固めるならば通常は甲冑の強度を高める、もしくは魔術などを用い弾く様な処理を施す。しかしそれでは拙者が試した様な投げ、関節技などの柔術に対処できぬ。柔術は甲冑を着けた敵に対処する術として拙者が習得したもの。それにすら対抗する手段を考案するとは見事なものよ!
「だが先程の一連の流れで対処法が見つかった様な気がするでござるな。あと一手で王手と言ったところでござろうな。」
敵の突進を真上に跳躍する形でいなし、相手の下半身に馬乗りした。相手は振り落とそうとするが、拙者は再び首を捕らえ絞め技に移行する。
「さあ、早く逃れなければお主は死ぬるぞ。先程の妙技は使わなくとも良いのか?」
遅い。打撃、斬撃には瞬時に反応するが柔術に対しては対応が鈍い傾向にあるようだ。今の攻撃はその確認のために行っている。反応出来ぬのなら、その隙を狙わせてもらう。
「さあ、発動させてみよ!」
(ミシッ……、)
再び力を込めた瞬間に他所へ転移させられる。間合いも先程と同じといったところか。それで良い。拙者の必殺の一撃は遠めの間合いからである方が都合が良いのだ。
(ザザッ!!)
相手は拙者に向き直り、次なる一撃を見舞おうと体勢を整えている。拙者もそれに合わせ技の構えを取る。次の一撃で勝敗を決するために。「閃光・雷覇滑走術!!」
(バヒュン!!)
拙者の切り札、通常の滑走術よりも更に加速を重ね、閃光の如く移動する技。消耗が激しい故、相手を一撃で仕留める時のみ使う事にしておる。
「雷光瞬極屠!!!」
相手の胸を瞬時に貫手で貫き、背中まで貫通させる。やはり、拙者の予測通り、認識できぬ程の速度であれば、あの妙技も発動出来なかった様だ。
(ズドン!!!!!)
貫通音が後から響き渡った。あまりの速さ故、音の方が後から遅れて響くのだ。相手は絶命しておるようだが、妙技が発動しないか確認するため、刀で首を刎ねる。
「一番首討ち取ったりぃ!! 敵は高速の攻撃には反応できぬ! 各々方も試してみるが良かろう!」
敵方の弱点を他の者にも知らしめた。攻略の糸口を見つけたのだ。ここから我らが優勢となろう。だが、武者震いが止まらぬ。これは拙者にとっての強敵がまだ近くにおるということ。人形兵の大将から感じる物ではない。恐らくはこの学院の主が動き始めたという事でござろう。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。

【完結】蓬莱の鏡〜若返ったおっさんが異世界転移して狐人に救われてから色々とありまして〜
月城 亜希人
ファンタジー
二〇二一年初夏六月末早朝。
蝉の声で目覚めたカガミ・ユーゴは加齢で衰えた体の痛みに苦しみながら瞼を上げる。待っていたのは虚構のような現実。
呼吸をする度にコポコポとまるで水中にいるかのような泡が生じ、天井へと向かっていく。
泡を追って視線を上げた先には水面らしきものがあった。
ユーゴは逡巡しながらも水面に手を伸ばすのだが――。
おっさん若返り異世界ファンタジーです。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる