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第3章 第3幕 はぐれ梁山泊極端派【絶望と憎しみと学園モノ……と大戦争!?】
第276話 空気、めっちゃ悪いやん!!
しおりを挟む「各署代表の皆さんが集まりましたので会合を始めたいと思います。」
進行役のトープス先生が会合開始の音頭を取る。タルカスらゴーレム勢力に対抗するべく、学院内のグループ全てで団結するための会合を行うことになった。当然、今まで敵対し合っていたグループもいるので雰囲気は非常に険悪だ。いつ争いになってもおかしくない空気感が出ている。そんな人達が部屋の真ん中に配置された円卓にズラッと並んでいる。
「事前にお伝えしたとおり、現在、私達は危機的な状況に置かれています。皆さんそれぞれ立場もあり、意見も様々あると思います。それぞれバラバラに対抗しようとしても対処は難しいと思われます。」
「危機的な状況? 私はそうは思わない。たかだか、魔法生物の暴走だろう? 我々は魔術師。作られた物如きに遅れを取るようでは魔術師として失格だろうな。」
開始早々、トープス先生の進行を止めようとする発言が出てきた。この中でも比較的高年齢の魔術師、イーサン・R・カレリア先生だった。通称“R教授”と呼ばれ、結界や各種防護魔法研究の権威であるらしい。年のため、白髪頭だが立派な口ひげを蓄えていて、正に教授というような外見だった。そして、あの浄化委員会のトップでもある。レイン坊先生はそこまで偉くなかったんだな。もっと上がいたとは……。
「教授、あなたは彼らが独自に開発した新型を見ていないだけです! あれは破壊の術式を当たり前のように駆使し、未知の防護魔術を使うのですよ!」
「それがどうだと言うのかね? ゴーレムである以上は魔術が基礎となって稼働しているのは間違いない。適切な妨害処理を行えばゴーレムは機能不全に陥る。それがわからぬ訳ではないだろう、トープス君。」
「適切な妨害処理と言いますが、逆に我々の方が妨害工作を受けてしまっているのです。彼らは魔術に対しての対策はしているでしょうし、未知なる手段を用いて我々を混乱に陥れるでしょう。」
「妨害工作、アレは起こるべくしてして起こったと言うべきだな。私は常々セキュリティの脆弱性については指摘していた。それでも学院運営は放置していた。ゴーレムでなくとも、人の魔術師であっても同様の工作は十分行える。その程度で動揺しているようでは話にならんな。」
トープス先生が散々論破されて、進行が止まってしまっている。俺は魔法のことはサッパリワカランから何とも言えないが、先生が黙るくらいなんだから、間違っている事を言ってるわけではないのだろう。
「では私にも質問させて頂きたい!」
「何かね、ラヴァン君?」
沈黙してしまったトープス先生に代わって、今度はラヴァンが教授に食って掛かった。ラヴァンは学院運営サイドの代表として参加している。もっと上の役職の人はいたらしいが、負傷とか、お亡くなりになったりしている様なので、ラヴァンが出ることになった。
「今回の事件で学院内の人間の一部がゴーレムに置き換わっているという事実には気付いていたのですか? 一部の人間を除き、ほとんどの人間はその事実を知りませんでした。あなたは気付いていたのですか?」
「気付いてなどおらぬよ。それがどうだというのかね? 低レベルな人間が、魔術師が学院に増えてきたとは常々思っていたよ。それの正体が人間だろうとゴーレムだろうが変わらない。ゴーレムに劣る人間など価値はない。これは正当な血筋の者だけ学院におれば、起こりえなかったはずではないのかね? 質の低下が招いた失態ではないのかね?」
教授がここまで言い切った時点で参加者のほとんどがざわめき始めた。ただの文句程度ならいいが、罵詈雑言まで教授に向ける人まで現れ始めた。これはヤバい! 更に空気が悪化し始めたぞ!
「皆さん、静かに! ここは対策を考える場です! ここで言い争っていればまとまるものもまとまりません! 教授も挑発的な発言は控えてください!」
「フン! こんな会合など無駄だ。低レベルな者ばかりで考えたところで、良案は浮かばぬよ。むしろ、私のみで考えた方が良いとさえ思えるのだが?」
「教授!」
教授の独善ぶりはますます激しくなるばかりだ。しかも、一人で考えるとか言い出し始めた! ここは俺が割り込んで事態を収めるべきか……。
「各々方、待たれよ。ここは一旦、静粛にして頂けぬか?」
さ、侍! アイツが何故ここに? 「魔術師連中の軍議には興味などない」とか言ってたクセに乱入して来やがった!
「誰だね、君は? 見かけぬ顔だな?」
「拙者はコタロウ・サザと申す。教授殿、『三人集まれば、文殊の知恵』という言葉はご存じござらぬか?」
「知らぬな。東洋のことわざなぞ知らぬ。」
「意味は凡人でも三人集まれば、素晴らしい知恵が浮かぶ、という意味だ。」
「ハッ……! 何かと思えば、その様な意味か。あり得ない話だ。百人いようが千人いようが、一人の賢人には及ばぬ物だ。」
「それをこの場で実際に目の当たりにすれば、お主はどうするかな?」
「何が言いたい?」
侍と教授の間に鋭い緊張感が走り始めた。今までザワついていた周りの連中さえ黙っている。完全に二人の論戦に釘付けになったというわけだ。しかし、どう決着をつもりなんだ、侍? この論戦じゃ、お前の変態戦法は通用しないぞ……。
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