275 / 331
第3章 第3幕 はぐれ梁山泊極端派【絶望と憎しみと学園モノ……と大戦争!?】
第275話 復讐は憎しみ深く
しおりを挟む「……ん。ここは?」
目が覚めた。ここはどこ? 気を失う前に何をしていたのかさえ、思い出せない。周囲を見渡すといくつかベッドが設置されている。その内の一つに自分は寝かされていたのだ。見てみれば、他にもベッドに寝かされている人がいる。シーツによって完全に体を覆われているので、どんな人なのかわからない。誰なのか確かめてみよう。
「……!?」
シーツを剥がすと、筋肉質の大柄な男だった。この男には見覚えがある! あのニセ勇者と一緒にいた不躾なゴリラ男! 何故、ここに? 見てみると、心臓の位置に大穴が空いていた!し、死んでいる!
「気が付いたか、ヘイゼルよ。」
いきなり男性の声がしたかと思うと、全身金属鎧に身を包んだ大男が部屋に入ってきていた。誰……? でも、この声には聞き覚えがある。誰だったかしら?
「貴方は何者ですの?」
「おお、そうであった。この姿を見せるのは初めてだったな。私はタルカスだ。お前の義手に力を与えた者だ。」
「え? え、え!? 貴方がタルカスおじさま!?」
鎧の人物はタルカスと名乗っている。確かに声は同じだけど、前会ったときと姿が違う! 前は高年紳士の魔術師だったのに、今は鎧の大男。とても同一人物とは思えないほど様変わりしている。
「ほ、本当にタルカスおじさまなのですか? この前とはあまりにも姿が違います! ま、まさか……。」
「……信じられないかね? まずは私が正体を偽っていた事を謝ろう。私はこの前の様な魔術師ではない。」
「ち、違っていたのですね!」
思わず声が上ずってしまった。そして、後ずさりをしてしまっている。動揺を悟られたくないのに、本能的にそうしてしまうのを止められない。悟られたら何をされるのかわからないのに……。
「かといって、今の姿のような武人でもない。」
「……!? それはどういう意味ですか……?」
「それは私の正体がゴーレムだからだ。あらゆるボディを操ることが出来るのだよ。」
「え……!?」
それを聞いた途端、ビクンと身を震わせてしまった。最初に姿を見たときから少しは疑っていたのかもしれない。おじさまが得体の知れない人ではない者のではと。知ってしまったからには、そこの大男のように……殺されてしまうのではないかと……。
「怖いかね? 私が?」
「い、いえ、そんなことは……。」
隠そうとしても隠せなかった。震えが止まらない。体に力が入らず、口元がカチカチ鳴るのを止められない。
「私はお前を殺そうなどとは思っていない。安心するのだ。それに……あの男は死んではおらぬ。あの状態でも生きておるのだ。今はいわゆる仮死状態となっておるのだ。」
「え、ええ!?」
殺されることを恐れている。それを見透かされていたようだ。あの男が死んでいることを恐れ、自分も同じ目にあわされることを連想したことまで。全て手の平の中で踊らされているような感覚だった。
「此奴は私と同じ人造生物。タイプは違うがね。此奴は限りなく人間に姿形が酷似している。古代に存在していたとされる、ホムンクルスと呼ばれる存在だ。」
「ホ、ホムンクルス……?」
呼称は初めて聞いたけど、かつて魔王が人に似た生き物を作ったという伝説を本で読んだことがある。それが実在していた? 本当かどうかは知らないけど、おじさまが嘘をついているようには思えない。本当のことを言っている気がする。
「“ゴーレム墓場の悲劇”という話を知っているかね?」
「知っています。魔王戦役時代のおとぎ話として聞いたことがあります。」
「私はその出来事の当事者、生き残りなのだよ。」
「生き残り……?」
あのおとぎ話が本当にあった事なんて、普通に考えたら信じられなかったかもしれない。でも、この人の言っていることは嘘ではないと思えてくる。不思議だった。つい先程まで殺されるかもしれないと思っていたのに。
「あの事件は身勝手な人間によって引き起こされた悲劇だ。道具の様にこき使われ、不要となれば捨てられる。誰に作られたのかは知らぬが此奴も我らと同じよ。道具と見られている故に酷使される運命にあるのだ。そんなことが許されるのか?」
「ま、間違っていると思います!」
私もその利用する側の人間。とはいえここはおじさまに合わせておかないと、殺されるかもしれないと思ったから。ただ、それだけの防衛行動。これも見透かされているかもしれない。
「だからこそ、私は人間を滅ぼすつもりでいる。我々、ゴーレムは人間よりも優れていることを示すために!」
「は、はい!」
「だが、お前は対象外だ。それが何故だかわかるかな?」
「え……?」
私は対象ではない? それは何故? 理由を考えても何も浮かんでこない。答えられないまま沈黙が続く。どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしようどうしよう、どうし……、
「それはお前が私と似ているからだ。お前は特定の人間をとても憎んでいるのだろう? そこを気に入ったのだ。身内とはいえ“あの女”が殺したくてたまらないのだろう?」
「ええ、殺したいです! 何回でも! あの女の仲間も一緒に殺してやりたいのです! メチャクチャにしてやりたい!」
「そうだろう! そうだろう! 滅ぼしてやろう、我らの手で!」
そうかおじさまも同じなんだ。憎くてたまらないんだ! 対象の範囲は違うけど、同じ感情を持っているんだ! 安心した。私は間違ってない!
「お前に力を貸そう。その代わり、お前も私に力を貸せ! そうすればお前の望みは叶えられるだろう!」
ふと思い出した事がある。それはある貧しい少女の話だった。その少女は貧しく恵まれていなかったが、彼女のために影ながら支援してくれる男性がいたという話を。私もその子と同じだ。おじさまはその物語に出てくる支援してくれる男性と同じ。私を支援してくれる存在なのだと、私は確信した!
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】勇者学園の異端児は強者ムーブをかましたい
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、pixivにも投稿中。
※小説家になろうでは最新『勇者祭編』の中盤まで連載中。
※アルファポリスでは『オスカーの帰郷編』まで公開し、完結表記にしています。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる