【第2部完結】勇者参上!!~究極奥義を取得した俺は来た技全部跳ね返す!究極術式?十字剣?最強魔王?全部まとめてかかってこいや!!~

Bonzaebon

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第3章 第3幕 はぐれ梁山泊極端派【絶望と憎しみと学園モノ……と大戦争!?】

第261話 生還の代償

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 ――――三日前。俺達は例の島から生きて帰ってきた。


「……お、おお、おはよう。みんな世話をかけたな。」


 俺はあの島でぶっ倒れて、丸一日寝込んでいたらしい。しかも右手首を失う大怪我。あの瞬間、騒然となったそうだ。状況が状況だけに、死んだと錯覚したらしい。だからこそ、今も喜びというよりは何とも言えない複雑な表情をしている。そして、俺のすぐ側のエルは半泣きの表情になっている。


「バカ! どうしてこんな無茶をしたの!」


 ベッドの上に寝ている俺に覆い被さり、泣いて、手で叩きながら抗議をしてきた。生き残るためとはいえ、みんなに心配をかける結果になってしまった。


「どうしてって……こうするしか手はなかったんだ。いや、なんていうか、手をなくす手段しか思いつかなかったんだよ。馬鹿だから。」

「バカ!」

「ごめんよ、エル。」


 この病室には一通りメンバーが勢揃いしていた。エルやタニシ、ゲイリー、ミヤコ、ロッヒェン、ヴォルフ、メイちゃんとファル、他にはトープス先生とローレッタがいた。


「本気の馬鹿野郎だぜ、お前は。自分の利き腕を切り落として、それを刃物として使うなんてな。」

「あの出血量で生きていたのは奇跡的です! 今後は自分の血を失わないように気を付けて下さい!」


 優しいメイちゃんが珍しく怒っている。親友のエルを悲しませたことに対して怒っているのだろう。それに彼女がいなければ俺は確実に死んでいただろう。あとでお詫びの品を色々渡しておかないとな。土下座したくらいでは許してもらえそうにない。


「手首を失ったとはいえ、素手で魔術師四人を倒し、タイダル・ウェーブも防いだ。馬鹿な方法を使ったとはいえ、敵味方含めて全滅は防いだ。この件は評価してやってもいいんじゃないか?」

「そもそもは学院側が制限した上で、特別実習の様な場所へ送り込んだ。学院側に悪意があったのは明白ですね。その罠から生きて返ってきた彼は最善を尽くしたと考えた方が良さそうですな。」


 ファルとトープス先生は俺の行いをフォローしてくれた。これには大分救われた。責められるばっかりじゃ非常に堪えるし。


「だが問題はこれからをどうするかだ。」

「これからって、何があるのさ? 俺は手首をつなげる手術をするだけだろう?」

「違う。これから学長が動きを見せるかもしれないって事だ。それには戦力がいる。俺らがやってきたのはそれに対処するためだし、一応、お前の状況も影響する。今の俺たちは戦力が不足しているんだよ。」


 剣と額冠が戻ってきたとはいえ、今の俺は全力で戦えない。それどころか足手纏いになってしまいそうだ。それなら……、


「じゃあ、急いで治せば……、」

「無理ですよ、勇者さん! 大武会で全身を骨折したときもそうだったでしょう? 骨の治療は神聖魔法を使っても完治には時間がかかります! しかも今回は切断されているから、一カ所だけだとしても一月近くかかります!」


 そうだよな。あの時は魔法を使ってもらっても、完治には一月以上かかった。今回は骨だけじゃない。血管や筋肉まで切れているのでそれをつなぐのに時間がかかる。どうすればいいんだ?


「勇者の戦力がない今、学長にとっては好機だろうな。行動を起こされたら、対抗しきれないかもしれん。」

「おいおい。お前にしては弱気だな、相棒? お前がいれば問題ないだろ?」

「無茶言うな。あの男を舐めない方がいい。身内の俺が言ってるんだ。例え、お前が五体満足でも厳しい相手だ。」

「まじか!? そんなに強いのか、あの学長は!」


 大抵の相手には強気の姿勢を見せる相方だが、今回は様子が違う。こんな状態を見るのはヴァルとやり合った頃以来かもしれない。そういう意味では学長はヴァルと同等、もしくはそれ以上と見立てておいた方がいいかもしれない。


「脅威はそれだけではありません。学長の行動に合わせて、インスティチュート・ソサエティも動き出すでしょう。タルカスもこの機に乗じて、勇者殿を抹殺に来るかもしれません!」


 そうだった。トープス先生が思い出させてくれた。他の勢力も黙っているわけがない。ジムを通じて俺らの状況を把握している可能性はある。ちょうど今、アイツの姿が見えない。タルカスの元へ戻っていると見た方がいいだろう。


「それだけではありませんよ。浄化委員会も何らかの行動を見せるかもしれません。学長やタルカスほど強大ではありませんが、警戒はしておいた方がいいでしょう。」


 マズいな。俺が一人抜けただけで大きな戦力ダウンだ。こちらの仲間達も相当強いが、敵は大体どいつも厄介な能力、手段を用いてくるはず。八刃がないとそれらに対抗するのは難しいかもしれない。


「チクショウ! これじゃ対抗のしようがない! どうすりゃいいんだ!」

「もしもし、勇者殿。私から一つ提案があります! 聞いて頂いてもよろしいですか?」

「……え? ト、トレ坊先生?」


 病室には、例の怪しい石像が鎮座していた。いつの間に……? 転移魔法でやってきたんだろうけど、俺とエル以外に姿を見せてしまってもいいんだろうか? トップシークレット扱いなのに……?
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