【第2部完結】勇者参上!!~究極奥義を取得した俺は来た技全部跳ね返す!究極術式?十字剣?最強魔王?全部まとめてかかってこいや!!~

Bonzaebon

文字の大きさ
上 下
261 / 331
第3章 第3幕 はぐれ梁山泊極端派【絶望と憎しみと学園モノ……と大戦争!?】

第261話 生還の代償

しおりを挟む

 ――――三日前。俺達は例の島から生きて帰ってきた。


「……お、おお、おはよう。みんな世話をかけたな。」


 俺はあの島でぶっ倒れて、丸一日寝込んでいたらしい。しかも右手首を失う大怪我。あの瞬間、騒然となったそうだ。状況が状況だけに、死んだと錯覚したらしい。だからこそ、今も喜びというよりは何とも言えない複雑な表情をしている。そして、俺のすぐ側のエルは半泣きの表情になっている。


「バカ! どうしてこんな無茶をしたの!」


 ベッドの上に寝ている俺に覆い被さり、泣いて、手で叩きながら抗議をしてきた。生き残るためとはいえ、みんなに心配をかける結果になってしまった。


「どうしてって……こうするしか手はなかったんだ。いや、なんていうか、手をなくす手段しか思いつかなかったんだよ。馬鹿だから。」

「バカ!」

「ごめんよ、エル。」


 この病室には一通りメンバーが勢揃いしていた。エルやタニシ、ゲイリー、ミヤコ、ロッヒェン、ヴォルフ、メイちゃんとファル、他にはトープス先生とローレッタがいた。


「本気の馬鹿野郎だぜ、お前は。自分の利き腕を切り落として、それを刃物として使うなんてな。」

「あの出血量で生きていたのは奇跡的です! 今後は自分の血を失わないように気を付けて下さい!」


 優しいメイちゃんが珍しく怒っている。親友のエルを悲しませたことに対して怒っているのだろう。それに彼女がいなければ俺は確実に死んでいただろう。あとでお詫びの品を色々渡しておかないとな。土下座したくらいでは許してもらえそうにない。


「手首を失ったとはいえ、素手で魔術師四人を倒し、タイダル・ウェーブも防いだ。馬鹿な方法を使ったとはいえ、敵味方含めて全滅は防いだ。この件は評価してやってもいいんじゃないか?」

「そもそもは学院側が制限した上で、特別実習の様な場所へ送り込んだ。学院側に悪意があったのは明白ですね。その罠から生きて返ってきた彼は最善を尽くしたと考えた方が良さそうですな。」


 ファルとトープス先生は俺の行いをフォローしてくれた。これには大分救われた。責められるばっかりじゃ非常に堪えるし。


「だが問題はこれからをどうするかだ。」

「これからって、何があるのさ? 俺は手首をつなげる手術をするだけだろう?」

「違う。これから学長が動きを見せるかもしれないって事だ。それには戦力がいる。俺らがやってきたのはそれに対処するためだし、一応、お前の状況も影響する。今の俺たちは戦力が不足しているんだよ。」


 剣と額冠が戻ってきたとはいえ、今の俺は全力で戦えない。それどころか足手纏いになってしまいそうだ。それなら……、


「じゃあ、急いで治せば……、」

「無理ですよ、勇者さん! 大武会で全身を骨折したときもそうだったでしょう? 骨の治療は神聖魔法を使っても完治には時間がかかります! しかも今回は切断されているから、一カ所だけだとしても一月近くかかります!」


 そうだよな。あの時は魔法を使ってもらっても、完治には一月以上かかった。今回は骨だけじゃない。血管や筋肉まで切れているのでそれをつなぐのに時間がかかる。どうすればいいんだ?


「勇者の戦力がない今、学長にとっては好機だろうな。行動を起こされたら、対抗しきれないかもしれん。」

「おいおい。お前にしては弱気だな、相棒? お前がいれば問題ないだろ?」

「無茶言うな。あの男を舐めない方がいい。身内の俺が言ってるんだ。例え、お前が五体満足でも厳しい相手だ。」

「まじか!? そんなに強いのか、あの学長は!」


 大抵の相手には強気の姿勢を見せる相方だが、今回は様子が違う。こんな状態を見るのはヴァルとやり合った頃以来かもしれない。そういう意味では学長はヴァルと同等、もしくはそれ以上と見立てておいた方がいいかもしれない。


「脅威はそれだけではありません。学長の行動に合わせて、インスティチュート・ソサエティも動き出すでしょう。タルカスもこの機に乗じて、勇者殿を抹殺に来るかもしれません!」


 そうだった。トープス先生が思い出させてくれた。他の勢力も黙っているわけがない。ジムを通じて俺らの状況を把握している可能性はある。ちょうど今、アイツの姿が見えない。タルカスの元へ戻っていると見た方がいいだろう。


「それだけではありませんよ。浄化委員会も何らかの行動を見せるかもしれません。学長やタルカスほど強大ではありませんが、警戒はしておいた方がいいでしょう。」


 マズいな。俺が一人抜けただけで大きな戦力ダウンだ。こちらの仲間達も相当強いが、敵は大体どいつも厄介な能力、手段を用いてくるはず。八刃がないとそれらに対抗するのは難しいかもしれない。


「チクショウ! これじゃ対抗のしようがない! どうすりゃいいんだ!」

「もしもし、勇者殿。私から一つ提案があります! 聞いて頂いてもよろしいですか?」

「……え? ト、トレ坊先生?」


 病室には、例の怪しい石像が鎮座していた。いつの間に……? 転移魔法でやってきたんだろうけど、俺とエル以外に姿を見せてしまってもいいんだろうか? トップシークレット扱いなのに……?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。

アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。 それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。 するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。 それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき… 遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。 ……とまぁ、ここまでは良くある話。 僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき… 遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。 「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」 それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。 なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…? 2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。 皆様お陰です、有り難う御座います。

不死王はスローライフを希望します

小狐丸
ファンタジー
 気がついたら、暗い森の中に居た男。  深夜会社から家に帰ったところまでは覚えているが、何故か自分の名前などのパーソナルな部分を覚えていない。  そこで俺は気がつく。 「俺って透けてないか?」  そう、男はゴーストになっていた。  最底辺のゴーストから成り上がる男の物語。  その最終目標は、世界征服でも英雄でもなく、ノンビリと畑を耕し自給自足するスローライフだった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  暇になったので、駄文ですが勢いで書いてしまいました。  設定等ユルユルでガバガバですが、暇つぶしと割り切って読んで頂ければと思います。

いとなみ

春秋花壇
現代文学
旬と彩を織り成した 恋愛・婚約破棄・日常生活 短編集 この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

月の砂漠のかぐや姫

くにん
ファンタジー
月から地上に降りた人々が祖となったいう、謎の遊牧民族「月の民」。聖域である竹林で月の民の翁に拾われた赤子は、美しい少女へと成長し、皆から「月の巫女」として敬愛を受けるようになります。 竹姫と呼ばれる「月の巫女」。そして、羽と呼ばれるその乳兄弟の少年。 二人の周りでは「月の巫女」を巡って大きな力が動きます。否応なくそれに巻き込まれていく二人。 でも、竹姫には叶えたい想いがあり、羽にも夢があったのです! ここではない場所、今ではない時間。人と精霊がまだ身近な存在であった時代。 中国の奥地、ゴビの荒地と河西回廊の草原を舞台に繰り広げられる、竹姫や羽たち少年少女が頑張るファンタジー物語です。 物語はゆっくりと進んでいきます。(週1、2回の更新) ご自分のペースで読み進められますし、追いつくことも簡単にできます。新聞連載小説のように、少しずつですが定期的に楽しめるものになればいいなと思っています。  是非、輝夜姫や羽たちと一緒に、月の民の世界を旅してみてください。 ※日本最古の物語「竹取物語」をオマージュし、遊牧民族の世界、中国北西部から中央アジアの世界で再構築しました。

辺境の最強魔導師   ~魔術大学を13歳で首席卒業した私が辺境に6年引きこもっていたら最強になってた~

日の丸
ファンタジー
ウィーラ大陸にある大国アクセリア帝国は大陸の約4割の国土を持つ大国である。 アクセリア帝国の帝都アクセリアにある魔術大学セルストーレ・・・・そこは魔術師を目指す誰もが憧れそして目指す大学・・・・その大学に13歳で首席をとるほどの天才がいた。 その天才がセレストーレを卒業する時から物語が始まる。

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。 幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。 そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。 故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。 自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。 だが、エアルは知らない。 ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。 遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。 これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

医魔のアスクレピオス ~不遇職【薬剤師】はS級パーティを追放されても薬の力で成り上がります~

山外大河
ファンタジー
 薬剤師レイン・クロウリーは薬剤師の役割が賢者の下位互換だとパーティリーダーのジーンに判断され、新任の賢者と入れ替わる形でSランクの冒険者パーティを追放される。  そうして途方に暮れるレインの前に現れたのは、治癒魔術を司る賢者ですら解毒できない不治の毒に苦しむ冒険者の少女。  だが、レインの薬学には彼女を救う答えがあった。  そしてレインは自分を慕ってパーティから抜けて来た弓使いの少女、アヤと共に彼女を救うために行動を開始する。  一方、レインを追放したジーンは、転落していく事になる。  レインの薬剤師としての力が、賢者の魔術の下位互換ではないという現実を突きつけられながら。  カクヨム・小説家になろうでも掲載しています。

処理中です...