259 / 331
第3章 第3幕 はぐれ梁山泊極端派【絶望と憎しみと学園モノ……と大戦争!?】
第259話 守り抜きたい物がある!!
しおりを挟む「ははっ! 無様だな! ゴーレムといえど、私の魔術の前ではただの人形同然!」
「ローレッタ!? 君はなんてことをしたんだ! 私ならあの程度の魔術に耐えきれるというのに……。」
「……ううっ。ラ、ラヴァン様……。」
私は首だけの姿になってもまだ生きている。人間の脳に相当する部分さえ残っていれば、死ぬことはない。もし体が機能停止しても、緊急用の安全装置が作動して、しゃべることは出来る。まだ、緊急用の稼働モードに移行しきれていないので、思ったように口が動かなかった。
「私を囮にしてアンネ先生を叩いてくれても良かったのだ! それが最善、その方が合理的だったはずだ!」
「私は……ラヴァン様の…苦しむ姿を……見たくなかったのです……。」
少しずつ稼働が安定してきたので、口が動くようになった。まだぎこちないけれど、アンネ先生の気を逸らせないといけない。私を粉砕した水蛇はまだ展開したままでいるから。
「フフ、魔術師にあるまじき行動だな。一時の感情に流され、我が身どころか守るはずだった対象さえ揃って滅んでしまうとは!」
「私もそう思う。いや、以前の私なら平気でそう言っていただろう。私は今気付いた! ローレッタが気付かせてくれたのだ! 魔術師にあるまじき行動だとしても、守り抜かなくてはならない物があると!」
「その結果、滅ぶのだ、貴様らは。 私も感謝しなくてはならない。こうも簡単に反乱分子を始末出来るのだからな!」
宙を漂っていた水蛇が再び獲物の姿を定めて、襲いかかろうとしていた。ラヴァン様は私の頭を抱えたままで、無防備な状態だった。
「二人仲良く死ぬがいい!」
水蛇が勢いを付けてこちらに向かってくる!もう間に合わない…と思ったところで異変が起きた!
「戦技一0八計が一つ! 落鳳波!!」
(バシャアアアアッ!!!)
割って入ってきた人物の声と共に水蛇の首が切り落とされた! 建物の入り口の方を見ると勇者様がそこにいた。
「勇者参上!! ゴメン! ちょっと来るのが遅かったかな?」
「き、貴様!? よくも水蛇を!」
「勇者ロア!」
勇者様の腕を見ると、切断されていた腕が元通りになっていた。ということは手術は成功して、終了したみたい! 良かった。トープス先生が難航すると言っていたけれど、予定通りに終われたんだ。
「ローレッタ? もしかして、死んでしまったのか?」
「いえ。この通り……五体不満足では…ありますが、何とか生きて…います。」
「無茶したんだな? エルが悲しむぞ? でも俺が復活したから、もう大丈夫だ!」
その通りかもしれない。お姉様が今の私の姿を見たら卒倒してしまうかもしれない。でも、ラヴァン様をお救いするためにこうなったのだから、少しは許してもらえるかもしれない。
「貴様一人来たところで状況が変化するものか!」
「え~? そんなこと言っちゃっていいの? この前、ハンデありの俺に完敗しちゃったのにねぇ。俺に敵わないと思ったから、手術中を狙おうとしてたんでしょ?」
「うるさい! 黙れ!」
「図星じゃん!」
首を失ったはずの水蛇はいつの間にか元通りになっていた。今度は攻撃対象を勇者様に変え襲いかかっていった。それでも、勇者様は構えようともせずに仁王立ちのままでいた。しかも、剣すら手にしていない!
「こないだの水蛇か。素手だったから苦戦したけど、武器ありの俺にこれが通用すると思うなよ?」
「何を言う! 今も素手のままではないか!」
「素手? 見た目はな。今の俺は手刀でも強いぞ! 霽月八刃!!」
迫り来る水蛇に対して、勇者様は手刀を振った。すると水蛇はピタッと動きを止め、ただの水となり霧散した。
「ば、馬鹿な!? 私のアクア・サーペントが手刀で崩壊するなど……!?」
「スゲえ! 自分でもビックリだ! 手刀でもこの威力! 実際に剣を抜いたらと思うと、想像が付かないな!」
「ありえない!? 手刀如きで負けるとは!?」
「だから言っただろ武術を舐めるなって。」
アンネ先生は狼狽え、後ずさりしていた。あの一瞬の出来事でここまで戦意を喪失させる事が出来るなんて! 勇者様は凄い! お姉様から聞いていた話よりもとんでもない方だった!
「天破、陽烈八刃斬!!」
勇者様はあっという間にアンネ先生との距離を詰め、手刀の一撃を繰り出していた。その瞬間、暖かい太陽の光が閃いたような気がした。まるで、あれは太陽の一撃、慈悲の光に見えた。これが勇者様の力……!?
「うぐあっ!? な、なんだこれは!?」
「アンタはムカつくけど、殺さない。アンタらみたいなのと同類になっちまうからな。代わりに今後二、三日は魔法が使えないようにしておいた。その間、魔法使えない人の気持ちを味わってろよ。」
「馬鹿な!? ま、魔封じだと!? くっ!? 魔術が発動しない!?」
アンネ先生は必死で魔術を発動させようとしていた。あらゆる方式、基礎的な物から実戦的なものまで試しても、何も起きない。勇者様の言葉通り、先生は何も出来なくなってしまっていた。
「ラヴァン、ローレッタの事は頼んでいいか? 俺は他のみんなの所に行かないといけない。」
「言われなくても、そうするつもりだ。」
「ラヴァン様、トープス先生のところへ連れて行って下さい。すぐに元通りには出来なくても、応急処置はしてもらえるはず。」
「ああ。」
「じゃあな! 俺はエルの所へ行ってくる!」
勇者様は急いで去って行った。タルカス様があちこちにゴーレムを配置しているのだとすれば、あちらの寮も危ないかもしれない!
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
『おっさんの元勇者』~Sランクの冒険者はギルドから戦力外通告を言い渡される~
川嶋マサヒロ
ファンタジー
ダンジョン攻略のために作られた冒険者の街、サン・サヴァン。
かつて勇者とも呼ばれたベテラン冒険者のベルナールは、ある日ギルドマスターから戦力外通告を言い渡される。
それはギルド上層部による改革――、方針転換であった。
現役のまま一生を終えようとしていた一人の男は途方にくれる。
引退後の予定は無し。備えて金を貯めていた訳でも無し。
あげく冒険者のヘルプとして、弟子を手伝いスライム退治や、食肉業者の狩りの手伝いなどに精をだしていた。
そして、昔の仲間との再会――。それは新たな戦いへの幕開けだった。
イラストは
ジュエルセイバーFREE 様です。
URL:http://www.jewel-s.jp/
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
天井の神と地上の悪魔
こみつ
ファンタジー
ある日突然、月と地球の間に、巨大な惑星があらわれた。
天変地異が地上を襲い、人々は逃げ惑う。
そんな中、園崎 八子(そのざき やこ)は、鉄筋のビルに逃げ込むが。

追放シーフの成り上がり
白銀六花
ファンタジー
王都のギルドでSS級まで上り詰めた冒険者パーティー【オリオン】の一員として日々活躍するディーノ。
前衛のシーフとしてモンスターを翻弄し、回避しながらダメージを蓄積させていき、最後はパーティー全員でトドメを刺す。
これがディーノの所属するオリオンの戦い方だ。
ところが、SS級モンスター相手に命がけで戦うディーノに対し、ほぼ無傷で戦闘を終えるパーティーメンバー。
ディーノのスキル【ギフト】によってパーティーメンバーのステータスを上昇させ、パーティー内でも誰よりも戦闘に貢献していたはずなのに……
「お前、俺達の実力についてこれなくなってるんじゃねぇの?」とパーティーを追放される。
ディーノを追放し、新たな仲間とパーティーを再結成した元仲間達。
新生パーティー【ブレイブ】でクエストに出るも、以前とは違い命がけの戦闘を繰り広げ、クエストには失敗を繰り返す。
理由もわからず怒りに震え、新入りを役立たずと怒鳴りちらす元仲間達。
そしてソロの冒険者として活動し始めるとディーノは、自分のスキルを見直す事となり、S級冒険者として活躍していく事となる。
ディーノもまさか、パーティーに所属していた事で弱くなっていたなどと気付く事もなかったのだ。
それと同じく、自分がパーティーに所属していた事で仲間を弱いままにしてしまった事にも気付いてしまう。
自由気ままなソロ冒険者生活を楽しむディーノ。
そこに元仲間が会いに来て「戻って来い」?
戻る気などさらさら無いディーノはあっさりと断り、一人自由な生活を……と、思えば何故かブレイブの新人が頼って来た。
このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
マーベル子爵とサブル侯爵の手から逃げていたイリヤは、なぜか悪女とか毒婦とか呼ばれるようになっていた。そのため、なかなか仕事も決まらない。運よく見つけた求人は家庭教師であるが、仕事先は王城である。
嬉々として王城を訪れると、本当の仕事は聖女の母親役とのこと。一か月前に聖女召喚の儀で召喚された聖女は、生後半年の赤ん坊であり、宰相クライブの養女となっていた。
イリヤは聖女マリアンヌの母親になるためクライブと(契約)結婚をしたが、結婚したその日の夜、彼はイリヤの身体を求めてきて――。
娘の聖女マリアンヌを立派な淑女に育てあげる使命に燃えている契約母イリヤと、そんな彼女が気になっている毒舌宰相クライブのちょっとずれている(契約)結婚、そして聖女マリアンヌの成長の物語。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい
戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。
人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください!
チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!!
※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。
番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」
「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる