上 下
257 / 331
第3章 第3幕 はぐれ梁山泊極端派【絶望と憎しみと学園モノ……と大戦争!?】

第257話 もう既に始まっている!

しおりを挟む
「我々が戦うこと自体が学長の思惑に誘導されてしまうという風に思いませんか?」

「学長か? 構わんよ! 敢えて思惑に乗り、この機に乗じて人間共を駆逐する! ヤツはその後で始末すれば良い。如何に魔力が強大であろうとヤツも一人の人間。我らの圧倒的戦力の前にはあっという間に屈服するだろう!」


 策に嵌まったと見せかけて、後に学長を制圧するつもりでいるようだ。彼らの戦力は人間を圧倒する物があるのは確かかもしれない。何しろ、体の強度が違うし、飲み食いせずに半永久的に動き続ける事が出来る。とはいえ、人造の魔法生物。対策されれば稼働すら出来なくなる弱点については考えているのだろうか?


「学長を甘く見ている、魔術師への対策が疎かになっている、と思っているのではないか? 我らは新技術を開発した。むしろ魔術には強くなっている。切り札故、易々とは見せはしないがな!」

「対策済み、ということですね。」


 もし一戦交える羽目になったら、魔術は容易に使用しない方がいいかもしれない。この自信は明らかに優位に立ち回れる可能性があるからこそだと思う。通常の魔術師でさえ、無効化、吸収、反射などの技を駆使する者がいるのだから。


「対策もした上で戦力でも圧倒的に上回る。かねてより我らは様々な場所に伏兵を忍ばせてきた。あらゆる魔道器、監視システム、魔力を使用した設備への魔力供給する魔力炉に至るまで、我らは掌握している。この学院に携わり、頼っている者ほど愕然とするであろう。自分たちの無力さに苛まれる事となろう!」

「なるほど。全ての制御が手の内にあるから、無力化も容易い、と?」

「日々、何気なくこき使ってきた物に裏切られ、滅んでゆく。その滑稽たる様を見たくてたまらぬのだ! 」


 この学院では魔道器を多用した設備が充実している。それらを使った暮らしは物凄く快適だと思う。それらが使用できず、物によってはそれが牙を剥いて襲いかかってくる。早くこの学院の全ての人々にその事実を知らせないと大変なことになる!


「それだけではないぞ。設備だけではない。貴様らの隣人、見知った者の中には我らの息がかかった者達がいる! トープスから聞いているだろう? 我々は人間ソックリのゴーレムを作り出すことが出来る。見た目では判別する手段もない。それが突然襲いかかる! これで混乱が起き、誰もが疑心暗鬼に駆られる事となる!」


 僕もその事実を知らされたのは、昨日のことだった。Mrsフラウグランデのご友人のローレッタさんがゴーレムであると知らされた時は信じられなかった。見た目はわからなかったけど、腕の内側から隠し武器を展開したときは信じざるを得なかった。明らかに人では無い物が内蔵されていた。これらの話をしたトープス先生も半分ゴーレムであり、事故で失った下半身を差し替えているという事だった。


「でも、トープス先生は言っていました。全てのゴーレム、義肢の使用者達があなたに賛同しているわけではないと。あなたは彼ら同胞にさえ手をかけてしまう可能性もあるのですよ? それにトープス先生の様に制止しようとする人もいるはずです!」

.「大した問題ではない。彼らも私に賛同することとなる。秘密裏に細工をしておいたのだ。こうして貴様らと話をしている間に、学院各地で火種が巻き起こっていることだろう! 貴様らが私を止めようとしている事自体が無駄だったのだ!」

「そんな!?」


 もう既に事は起こっている? 嘘であると思いたいけど、こうしている間にも戦いは始まっているのかもしれない。嘘を言うメリットなどないはずだからだ。それは彼が言っていた様に圧倒的戦力を持っているからでもある。


「やはり戦いを止めることは出来ませんか?」

「くどい! もう既に始まっているから、貴様らの行為は無駄だ。我らの憎しみの炎は誰であっても消すことが出来ぬのだ!」

「もうやっちまおうぜ、コイツら! もう全部バーンってやっちまえばいいんだよ!!」

「ゲイリーさん!」

「なんだ? そっちにも血の気が多いヤツがいるじゃないか! 来いよ! 俺が相手になってやる!!」


 僕の制止を無視してゲイリーさんはタルカスに向かっていった。血の気が多い人だとは勇者さんから聞いていたけど、ここまでとは……。こうなってしまったからには僕とヴォルフさんも戦わなければいけなくなる。周りのゴーレム達も次々と戦闘準備を始めている。


「どうやらオイ達も戦わなければいかんバイ!このままでは確実に殺されてしまうでゴワス!」

「もう止められないんですね。悔しい……くっ!?」

(ゴギィィン!!!)


 早速、ゴーレムの刃が向けられてきた! 咄嗟に防げたから良かったものの、明らかに明確な殺意のある一撃だった。こうなったからには交戦を止めることは出来ない。


「ドスコーーーーーイ!!!」

(バシィィィン!!!!)


 僕に斬りかかってきたゴーレムを、ヴォルフさんは平手で突き飛ばした! 全身金属のゴーレムを突き飛ばすなんてなんてパワーなんだ!


「最強タッグ再びでゴワス! オイ達の恐ろしさを思い知らせてやるでゴワスよ!」

「僕達、熱き炎のタッグがこの場を守り抜きます! 覚悟して下さい!」


 本気で戦うとはいえ、彼らの命を奪うわけにはいかない。あくまで戦闘不能にする事を心掛けて戦うしかない。勇者さんがいつもそうしている様に。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

王子様を放送します

竹 美津
ファンタジー
竜樹は32歳、家事が得意な事務職。異世界に転移してギフトの御方という地位を得て、王宮住みの自由業となった。異世界に、元の世界の色々なやり方を伝えるだけでいいんだって。皆が、参考にして、色々やってくれるよ。 異世界でもスマホが使えるのは便利。家族とも連絡とれたよ。スマホを参考に、色々な魔道具を作ってくれるって? 母が亡くなり、放置された平民側妃の子、ニリヤ王子(5歳)と出会い、貴族側妃からのイジメをやめさせる。 よし、魔道具で、TVを作ろう。そしてニリヤ王子を放送して、国民のアイドルにしちゃおう。 何だって?ニリヤ王子にオランネージュ王子とネクター王子の異母兄弟、2人もいるって?まとめて面倒みたろうじゃん。仲良く力を合わせてな! 放送事業と日常のごちゃごちゃしたふれあい。出会い。旅もする予定ですが、まだなかなかそこまで話が到達しません。 ニリヤ王子と兄弟王子、3王子でわちゃわちゃ仲良し。孤児の子供達や、獣人の国ワイルドウルフのアルディ王子、車椅子の貴族エフォール君、視力の弱い貴族のピティエ、プレイヤードなど、友達いっぱいできたよ! 教会の孤児達をテレビ電話で繋いだし、なんと転移魔法陣も!皆と会ってお話できるよ! 優しく見守る神様たちに、スマホで使えるいいねをもらいながら、竜樹は異世界で、みんなの頼れるお父さんやししょうになっていく。 小説家になろうでも投稿しています。 なろうが先行していましたが、追いつきました。

異世界で等価交換~文明の力で冒険者として生き抜く

りおまる
ファンタジー
交通事故で命を落とし、愛犬ルナと共に異世界に転生したタケル。神から授かった『等価交換』スキルで、現代のアイテムを異世界で取引し、商売人として成功を目指す。商業ギルドとの取引や店舗経営、そして冒険者としての活動を通じて仲間を増やしながら、タケルは異世界での新たな人生を切り開いていく。商売と冒険、二つの顔を持つ異世界ライフを描く、笑いあり、感動ありの成長ファンタジー!

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?

異世界定食屋 八百万の日替わり定食日記 ー素人料理はじめましたー 幻想食材シリーズ

夜刀神一輝
ファンタジー
異世界定食屋 八百万 -素人料理はじめましたー   八意斗真、田舎から便利な都会に出る人が多い中、都会の生活に疲れ、田舎の定食屋をほぼただ同然で借りて生活する。     田舎の中でも端っこにある、この店、来るのは定期的に食材を注文する配達員が来ること以外人はほとんど来ない、そのはずだった。     でかい厨房で自分のご飯を作っていると、店の外に人影が?こんな田舎に人影?まさか物の怪か?と思い開けてみると、そこには人が、しかもけもみみ、コスプレじゃなく本物っぽい!?     どういう原理か知らないが、異世界の何処かの国?の端っこに俺の店は繋がっているみたいだ。     だからどうしたと、俺は引きこもり、生活をしているのだが、料理を作ると、その匂いに釣られて人が一人二人とちらほら、しょうがないから、そいつらの分も作ってやっていると、いつの間にか、料理の店と勘違いされる事に、料理人でもないので大した料理は作れないのだが・・・。     そんな主人公が時には、異世界の食材を使い、めんどくさい時はインスタント食品までが飛び交う、そんな素人料理屋、八百万、異世界人に急かされ、渋々開店!?

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。

ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」 実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて…… 「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」 信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。 微ざまぁあり。

スキル【海】ってなんですか?

陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中
ファンタジー
スキル【海】ってなんですか?〜使えないユニークスキルを貰った筈が、海どころか他人のアイテムボックスにまでつながってたので、商人として成り上がるつもりが、勇者と聖女の鍵を握るスキルとして追われています〜 ※書籍化準備中。 ※情報の海が解禁してからがある意味本番です。  我が家は代々優秀な魔法使いを排出していた侯爵家。僕はそこの長男で、期待されて挑んだ鑑定。  だけど僕が貰ったスキルは、謎のユニークスキル──〈海〉だった。  期待ハズレとして、婚約も破棄され、弟が家を継ぐことになった。  家を継げる子ども以外は平民として放逐という、貴族の取り決めにより、僕は父さまの弟である、元冒険者の叔父さんの家で、平民として暮らすことになった。  ……まあ、そもそも貴族なんて向いてないと思っていたし、僕が好きだったのは、幼なじみで我が家のメイドの娘のミーニャだったから、むしろ有り難いかも。  それに〈海〉があれば、食べるのには困らないよね!僕のところは近くに海がない国だから、魚を売って暮らすのもいいな。  スキルで手に入れたものは、ちゃんと説明もしてくれるから、なんの魚だとか毒があるとか、そういうことも分かるしね!  だけどこのスキル、単純に海につながってたわけじゃなかった。  生命の海は思った通りの効果だったけど。  ──時空の海、って、なんだろう?  階段を降りると、光る扉と灰色の扉。  灰色の扉を開いたら、そこは最近亡くなったばかりの、僕のお祖父さまのアイテムボックスの中だった。  アイテムボックスは持ち主が死ぬと、中に入れたものが取り出せなくなると聞いていたけれど……。ここにつながってたなんて!?  灰色の扉はすべて死んだ人のアイテムボックスにつながっている。階段を降りれば降りるほど、大昔に死んだ人のアイテムボックスにつながる扉に通じる。  そうだ!この力を使って、僕は古物商を始めよう!だけど、えっと……、伝説の武器だとか、ドラゴンの素材って……。  おまけに精霊の宿るアイテムって……。  なんでこんなものまで入ってるの!?  失われし伝説の武器を手にした者が次世代の勇者って……。ムリムリムリ!  そっとしておこう……。  仲間と協力しながら、商人として成り上がってみせる!  そう思っていたんだけど……。  どうやら僕のスキルが、勇者と聖女が現れる鍵を握っているらしくて?  そんな時、スキルが新たに進化する。  ──情報の海って、なんなの!?  元婚約者も追いかけてきて、いったい僕、どうなっちゃうの?

処理中です...