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第3章 第3幕 はぐれ梁山泊極端派【絶望と憎しみと学園モノ……と大戦争!?】
第255話 アンネ・リーマン、正に“水を差す”女。
しおりを挟む「ラヴァン先生、気にせず先に進みましょう。学生一人にいつまでも足止めされているわけにもいけません。」
「……そ、そうだな。学生一人の意見に惑わされていてはいけないな。我々自身の職務を全うしなければ……。」
他の先生がラヴァン様を説得して、この場を強行的に進もうとしている。ラヴァン様を説得することは出来ても、他の先生方を説得するのは難しいかもしれない。
「ラヴァン様、考え直して下さい! 勇者様を捕らえて処罰するなど、正気の沙汰とは思えません! 勇者様も身を守るために仕方なく、違反行為をしたのです!」
「例え勇者だろうと、どのような高貴な身分の者であろうと、ここは魔術学院だ。学長が定めた規則には従わねばならない。この学院では学長の意志を尊重するのが最優先次項なのだ!」
「何があっても、学長に従うというのですね?」
「そうだ。」
ラヴァン様の発言に他の先生方も賛同の意を示している。このままでは私は使命を全うすることが出来なくなってしまう。考えあぐねていたその時、一人の女性が先生方の後ろに現れた。
「どうしたんですか、皆さん? 学長の指示をお忘れですか?」
「……? アンネ先生……? 何故ここに? お体は大丈夫なのですか?」
「怪我の件はご心配なく。皆さんがマゴマゴしているから、助け船を出しに来たのですよ。」
アンネ先生……彼女は追加実習中の勇者様にペナルティを与えるために現れたという。ただの罰則というレベルを逸脱して、危うく勇者様は命を奪われかけたと聞いた。
「勇者は教員である私に危害を加えました。ペナルティを受ける身であるにも関わらずですよ? それだけでも十分に許しがたい行為ではありませんか。皆さんも私と同様、あの島で危害を加えられたはずでは?」
「アンネ先生のおっしゃるとおりです。」
勇者様が違反行為を働いたとはいえ、人道に反する行為ではなかった。その直前に現れた城下委員会を名乗る教員から襲撃され、身を守るためにやむなく違反行為を行ったのだそう。この話からも勇者様に何も落ち度はない。むしろ学院側の監督不行き届きから発生した事件。許されないのは学院側だ。
「それに……その学生、反学院の勢力に所属しているという疑いがあるのはご存じですか?」
「……? それは勇者に加担しているから、という意味ですか?」
「いえ、勇者が学院に入ってくる以前からその疑いがあったのですよ。それは今も変わることはありません。」
私の素性が学院側に察知されている? 今まで全くそういう素振りはなかったのに。でもラヴァン様やその他の先生方は知らなかったみたい。アンネ先生のようなごく一部の人間しか知らされていなかったのかもしれない。
「実は彼女は人間ではないのですよ。」
「はは……。アンネ先生、このような時にご冗談とは趣味が悪いですよ。そのような事があるわけが……、」
「まあ、そういう反応をするのも仕方ありませんね。ならば、証拠をお見せするとしましょう!」
(ブワァァッ!!)
いきなり目の前に砂が舞い上がり視界を覆った! アンネ先生が持っていた小袋から砂を放ったからだ。サンド・ブラインディング。わずかな砂でも効果的に視界を奪う魔術、多分それを使ったんだと思う。
「ハイドロ・スピンカッター!!」
何かが私に向かって飛んでくる! 砂の中から出現したのは薄い水の円盤だった。高速で渦を巻くように回転しているそれは水とはいえ刃物と大差ない切れ味を持っている! 咄嗟に身を躱したけれど、複数だったため避けきれずいくつかは体を掠めてしまった。
「これは躱せるかな?」
(バシュウンッ!!)
「ううっ!?」
大きめの円盤が顔に向かって飛んできたため、腕で庇いながら避けた。でも、腕を大きく切り裂かれてしまった!
「見て下さい! あれがあの女の正体です! 人間を装ったゴーレムだったのです!」
「……!?」
みんな私の腕を凝視していた。腕は水の円盤に切り裂かれ、服の袖が切り裂かれただけではなく、皮膚を切られ、中の金属骨格が露出していた。これではゴーレムであることを否定するのは難しい。
「う、嘘だ! 君が人間ではなかったとは! 私は騙されていたのか?」
「隠していたことは誤ります! でも、私は病気で本来の肉体を失っただけなのです! 心は元のまま変わってはいません!」
「何故、私に黙っていたのだ?」
「ラヴァン先生、決まっているではありませんか? あなたに取り入り学生として身を潜め、人間を抹殺するという計画に加担するためだったのですよ。彼らゴーレムはひっそりと身を潜めて機会を窺っていたのです。」
「ち、違います! 私は……、」
「その証拠に新体制へ移行すると同時に彼らは行動を起こしたのです。私はこの目で見てきたのですよ。この建物の反対側にゴーレム達が押し寄せている様をね。」
トープス先生が懸念した通りの事態に発展してしまったみたい。あちらはロッヒェン様が説得に当たってくれているから問題ないと思う。問題は私がこの場を守り切れない危機に瀕している事。何としても、守り抜かないといけない。勇者様が復活するまでは……。
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