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第3章 第3幕 はぐれ梁山泊極端派【絶望と憎しみと学園モノ……と大戦争!?】

第248話 たった一人の戦い

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「へえ、アンタ一人で私達に楯突くつもり?」

「どうしてなんです、エレオノーラさん? 貴女のような方が守り抜く価値などないはず! 貴女は我々と共に戦うべきなのです!」

「私はあなた方の考えには賛同できません! 弱い人を排除して、自分たちだけ生き延びようだなんて考えは許されるとは思えない!」


 弱い人を排除してまで生きようとは思いたくない。それに弱い人達を邪魔者扱いしているのは理解できない。自分たちが理解できない人々を認識するのが耐えられないとでもいうの?


「構う必要はないわ。無能者を庇う人間もまた無能なのよ! 遠慮なくやっておしまい!」


 ヘイゼルは装飾の付いた腕から火炎弾の魔術を寮の方へ撃ち出した。私はそれに反応して大鎌を抜き、霽月八閃で迎撃を行った。何とか間に合い、大鎌に斬られた火炎弾は四散した。


「抜いたわね、武器を! これで完全に敵対したと見なす! アナタたちも加勢なさい! 数で攻めれば、粗末な防衛手段も途端に瓦解するはず!」

「加勢致します!」

「ヘイゼルさんがいてくれて心強い!」

「勇気を持って理想を実現するんだ!」


 ヘイゼルの行動と言動に触発され、他の学生達も続々と攻撃の態勢を取り始める。このままでは魔術の集中攻撃を受けてしまう! 


「ナイトメア・クラウド!!」


 相手を傷付けない前提で動きを止めるにはこの魔術しかない。例え魔術に耐性がある魔術師とはいえ、闇属性の耐性を持っている人は皆無に等しい。これで何人かは無力化出来るはず!


「……ううっ!?」

「なんだこの眠気は……、」


 多数の学生達が眠気に負けて倒れていく。流石に上級クラスだけあって、即座に対応して抵抗している人もいる。やっぱり、これでは少しの時間稼ぎしか出来ない!


「フン、小賢しいマネをしてくれたわね! もういい! 全部まとめて吹き飛ばしてやるわ!」


 他の学生達の状況を見たヘイゼルが大がかりな魔術の準備を始めた。詠唱の内容からするとプロミネンス・バーストに違いなかった! あんなものを使われたら寮は一瞬で壊滅してしまう!


「みすぼらしい連中は炎の力で浄化するに限るわ! 喰らいなさい、プロミネンス・バースト!!!」


 詠唱の間に生み出された巨大な火球が寮に向かって放たれた。私は霽月八閃で迎撃をする。でも、規模が大きすぎるから魔術は解除できても、炎を全て相殺できるわけじゃない。これを完全に消すには更に上の段階、“絶空八閃”でなければいけない。


「霽月八閃!!」


 火球は形を崩し、複数の火炎弾に分裂して寮に向かっていった。彼ならこのタイミングで実力以上の力を発揮するんだろうけど、私には出来ない。自分の無力さを痛感
する。私は人を護れるだけの力がないのかもしれない……。


「アイシクル・ウォール!!!」


 突然、寮の前に氷の壁が出現して火炎弾の到達を阻止した。防いだとはいえ火炎弾の威力が大きいので、当たったところは大きく凹んだり、穴が空いたりしている。ほぼ相殺という形で全ての火球は防ぎきった。


「何とか間に合いましたね。不本意ですけど、加勢致します!」

「ジム君、来てくれたでヤンスね!」

「ジム君!」


 あの日以来、寮には姿をみせていなかったジム君が寮の前に立ちはだかっていた。氷の壁は彼が作り出した物なのだろう。特別実習の時のいざこざが原因で離れてしまった、という事情をタニシさんから聞いていた。もしかしたら、二度と戻ってこないかもしれないと心配していたのだけれど……。良かった。戻ってきてくれて。


「ウォーロック家の面汚し如きに邪魔されるなんて! アンタみたいな落ちこぼれはさっさと死んでしまえば良かったのに!」

「僕としてはDIY寮も敵なんですけど、優先順位が違うんです。あなた達、上級クラスは僕が一番叩きたい人達の集まりですからね。覚悟して下さい!」

「ええい、お黙りなさい! アンタのようなちゃちな魔力で私に敵うはずがないわ! エリートとの実力差を見せてやる!」


 ヘイゼルは再び魔術の準備体勢に入っている。しかも、もう一度プロミネンス・バーストを使うつもりでいるらしい! 阻止しないと!


「何度も大魔術なんか使わせるものか! ヘイル・クラッカー!!」


 ジム君は対抗して発動の早い魔術で攻撃した。無数の氷の飛礫がヘイゼル達、上級クラスの学生を襲った。


「……ううっ、くっ!? これじゃ魔術の集中が出来ない! 小癪なマネを!」


 上級クラスの学生よりも魔力が低いとはいえ、相手の魔術を妨害するのには十分だった。少し怪我をさせてしまうかもしれないけど、最低限の被害で済む。敵対しているとはいえ、やっぱり彼は優しい子なのは変わってないようで、安心した。
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