上 下
246 / 331
第3章 第3幕 はぐれ梁山泊極端派【絶望と憎しみと学園モノ……と大戦争!?】

第246話 私が魔術学院学長、ラルス・A・シオンであ~る!!

しおりを挟む
「緊急告知って、何事でヤンスかねぇ? ねぇ、エルしゃん?」

「え? ええ。なんでしょうね?」


 昨日、授業が終わったくらいの時間に、学長から学院の人々全てに対して連絡があった。翌朝に緊急告知があるとのことだった。しかも、講義室には行かずに寮内で待機を言い渡された。今まで体験したことのない異例の事態。でも、私はそれに従わず、DIY寮の所へ来ていた。


「サプライズで特別試験とか、特別実習とか?はたまた、突然のお祭り開催とか……だったりして! それだったら、嬉しいでヤンス!」


 タニシさんは発言の内容に合わせて、小躍りを始めた。尻尾を振りながら軽快に踊っている。でも、周囲の人々は特に反応せず、冷ややかな態度を変えなかった。やっぱり、この前の事件のことをまだ引きずっているのかもしれない。本来、中心にいるはずの人物がいないから。


「はあ。あっしだけが元気になっても仕方ないヤンスね。でも、何も出来ずに待機してるのはシンドイでヤンス。」

「みんな、気持ちはわかってると思いますよ。あのことを気にかけてるから、気が晴れないだけで。戻ってくれば、みんな明るくなると思うから……。」


 とは言ってみたものの、自分も不安を拭えない。今の試みがうまくいくかどうか不透明で、いつまでかかるかもわからない。なにせ初めての試みだっていうから、関わっている人たちの方が大変だと思う。私はそれに直接関われないから遠くで祈っていることしかできない。


「しかし、意外な人まで関わってるのがスゴいでヤンス。メイちゃんは当然でヤンすけど、ローラしゃんにミャーコちゃんまで関わっているでヤンス。ここだけ聞いたらハーレム遊びでもしてるんじゃないかって思うでヤンスよ!」

「タニシさん、トープス先生が抜けてますよ!先生の協力がないと、こんな大がかりなコトできなかったんですよ。」

「ああ! ピッカリ先生のこと忘れてたでヤンス!」

「ちょっと! それは失礼ですよ!」


 もう、タニシさんたら……。本人に聞かれたらと思うとヒヤヒヤする。それどころかローラにも聞かせたくない。あの子はトープス先生を尊敬してるから、タニシさんであっても、恐い目に会わされると思う。あの子は怒らせると恐いタイプ。それはダンジョン実習の時に見ているから……。


《魔術学院、学長ラルス・A・シオンである。学院に所属する全人員に告ぐ! 本日を以て、学院は新体制にシフトする。》

「は、始まったでヤンス!?」

「新体制? 何のことかしら?」


 昨日の予告と同じく全員に対して、思念波を送っている。突然の新体制宣言。事前に先生方からも全く話がなかった上、噂も特に出回っていなかった。想像が付かない。急にそんなことを始めるなんて……。


《我が学院にて画期的な試みを実施する。この試みは人類の進化、魔術の発展に
大きく貢献するものと、私は確信している。所属する諸君は誇りに思うが良い。》


 学長の話は大きく飛躍している。進化とか発展とか、魔術を学んで習得する学院に何を求めているんだろう? 話の要点は掴めないけれど、なんだか怖いことを言っているような気がする。


《学院内には様々な人間が存在している。教鞭を振るう者、勉学に励み魔力を高める者、魔術を研究し真理を追究する者。その中に於いても才能の違い、生まれの血統の違いもあるだろう。魔術によって生命を吹き込まれた者もいるだろう。》


 色んな人がいるのは知っている。私のような闇の力に浸食された人やタニシさんのような獣人、ローラの様な人工の生命体もいる。それが新体制とどう関係があるのだろう?


《誰が最も優れているか? いや、誰が覇権を握るかと言ってもいい。共存・協力・調和を求める者もいるだろう。だが、それは正しいのか? 平和というものは停滞どころか衰退を促進する。ではどうすればそれを防げるか? 本来、競い合ってこそ人類、生物は進化をする。争い無しに発展は為し得ない!》


 話の風向きが変わってきた。恐い方向へと突き進んでいっている。私は恐れてる。ひょっとしてこれは恐ろしいことの始まりなのではないかと。でもそれは全力で否定したい!


《新体制とは“バトルロイヤル”を実施することを意味する! 諸君、互いに競い合え、争い合え、殺し合え! 徒党を組んでも、たった一人で戦いに挑んでも構わない。手段も問わない! ただし、逃げ出す事は認めない。徹底して戦うことを求める!》


 バトルロイヤル? 競い戦わせる? 殺し合うことすら認める? 何を言っているの? ここは魔術を学ぶための学院のはず! そんな恐ろしいことをするために訪れた訳じゃない!


《最後に生き残った者には最大の栄誉を与えよう! 世界の支配、運営に関わる組織に入門する事を認める! 勝ち残った先には全てを手にする事が出来ると考え給え!》


 学長は狂っている。こんな事を平気で言えるなんて……。もしかしたら、彼を狙っていたのはこの新体制に反抗させないためだったのかもしれない。それなら、今までの出来事の辻褄が合ってくる。なんとかしてこの体制を阻止しないと、大変なことになる!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜

黒城白爵
ファンタジー
 とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。  死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。  自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。  黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。  使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。 ※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。

生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ
ファンタジー
世界が退屈でしかなかった1人の少年〝稗月倖真〟──彼は生まれつきチート級の身体能力と力を持っていた。だが同時に生まれた現代世界ではその力を持て余す退屈な日々を送っていた。  そんなある日いつものように孤児院の自室で起床し「退屈だな」と、呟いたその瞬間、突如現れた〝光の渦〟に吸い込まれてしまう!  気づくと辺りは白く光る見た事の無い部屋に!?  するとそこに女神アルテナが現れて「取り敢えず異世界で魔王を倒してきてもらえませんか♪」と頼まれる。  だが、異世界に着くと前途多難なことばかり、思わず「おい、アルテナ、聞いてないぞ!」と、叫びたくなるような事態も発覚したり──  でも、何はともあれ、女神様に異世界召喚されることになり、生まれた世界では持て余したチート級の力を使い、異世界へと魔王を倒しに行く主人公の、異世界ファンタジー物語!!

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

異世界召喚に巻き込まれたおばあちゃん

夏本ゆのす(香柚)
ファンタジー
高校生たちの異世界召喚にまきこまれましたが、関係ないので森に引きこもります。 のんびり余生をすごすつもりでしたが、何故か魔法が使えるようなので少しだけ頑張って生きてみようと思います。

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?

つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです! 文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか! 結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。 目を覚ましたら幼い自分の姿が……。 何故か十二歳に巻き戻っていたのです。 最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。 そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか? 他サイトにも公開中。

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。 ※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。 ※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・) 更新はめっちゃ不定期です。 ※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

処理中です...