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第3章 第2幕 はぐれ梁山泊極端派【灰と青春と学園モノ!!】

第224話 24時間戦えますか?

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「まるで氷のテントだな。こうなるまで魔獣が襲ってくるとは思わなかったぜ。」


 あの後も一定時間をおいて魔獣共は現れ続け、その度に倒し解体→冷凍の流れを取っていた。その量も壁を建造できるほどになっていた。これでバリケードを作ったり、砦を作ったりした。ある意味材料の方から飛び込んできているのだ。食料にもなるし。


「これでもう日は暮れる。ヤツらも夜までは襲ってこないだろうさ。」

「夜行性の魔獣がいなければいいけどな。」


 日が暮れるに従って襲ってくる魔獣の数は減っていった。それ以前に増え続ける氷の壁に警戒して近寄らなくなったのかもしれない。本能的に異様な光景に危険を感じているのだろう。獣避けの役割も果たしてくれるとは。これなら明日以降も普通に生き延びられるのではないだろうか?


「皆しゃん、食事が出来たでヤンスよぉ!」

「おう、出来たか! ようやく飯にありつけたな。」


 タニシには早めに食事作りを命じていた。防衛体制も次第に整ってきたので、そういう事をする余裕も出来たのだ。昼メシは当然、魔獣の襲撃がピークを迎えていた頃だったので食べていない。だから、ここに来てからの初の食事ということになる。


「見ての通り、ただ焼くぐらいしか出来なかったでヤンス! 串焼きしかないでヤンスよ。」

「しょうがないさ。この環境じゃ、これが精一杯だろうよ。調味料があるだけまだマシだったと思うしかない。」


 野営キットの中には、簡単な調理器具と塩胡椒程度の調味料が含まれていた。食料は全く付いていないのにも関わらずだ。おかしなもんだ。ここへ送り込まれるということは、死が確定している様なものなのにな。せめてものお情けという事なんだろう。


「とりあえず、初日はみんな生き残った。明日以降もこの調子でいけば問題無さそうだな。」


 トニヤが肉の串を手に持ったまま、口に運ぼうとしていない。他のみんなはもう食べ始めているにも関わらずだ。そして、ようやく口を開いた。もっともそれは食べるためではなかった。


「初日は、ってか? だいたいどこまでを一日とするのかにもよると思うがな?」


 そういえばそうだ。夜も含めるかどうか、にもよる。期日は五日間。そのどこが終了のポイントにしているのかまでは説明がなかった。そこまで生き残れる前提で設定されているワケではないのだろう。学院側からすれば、五日間で殺しきるという期日なのかもしれない。


「なあ、日が暮れた程度で一日目が終わったと、本当にそんなことが言えるのか?」

「お前、何を言って……?」

「おっと、動くなよ、お前ら。今手にしている串が金属製ってことを忘れるなよ? 下手に動けば、どうなるかわかっているよな?」

「おいおい、このタイミングでかよ。」

「はうわわわ!」


 この場の一同が騒然となる。言葉だけでなく、トニヤは空いている方の手に電撃を迸らせて見せた。いつでも串を通して感電死させられるぞという脅しだ。雷は金属には良く通るし、避雷針の原理を利用して回避できない事を狙っている様に見える。ヤツは食事の瞬間を待っていたのだろう。


「どうするつもりだ?」

「どうするって? お前ら全員出て行ってもらう。タニシだけはここに残れ。」

「は?」

「なんで、あっしだけぇ!?」

「決まってんだろ。お前は人質だ。」


 なるほど。戦力外のタニシを人質にすれば、逃げられたり、襲いかかられる危険も少ない。このメンバーでは人質に最適な人材だろうな?


「パイセンを人質にしようたぁ、いい度胸だ!死ねや、コルァ!!」


 ゲイリーが人質がいるのにも関わらず、トニヤに襲いかかった。トニヤは見計ら
ったかの様に電撃の魔法を迸らせた!


(バリバリバリバリバリッ!!!)

「ぎょうぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

「ひょえええええっ!!」


 ゴリラとタニシの悲鳴が氷の砦内に木霊する。ゲイリーは電撃魔法で黒焦げになった! トニヤは容赦なくゲイリーを攻撃した。これは冗談ではなく、本気だという態度を示している。

「逆らえばこうなる。こうなりたくなかったら、さっさと出て行きな! そこの黒焦げも忘れずに持って行けよ! 死体なんぞいらないからな。」

「へいへい、わかりましたよ、っと。」


 早くもしたい扱いされるゲイリー。コイツは異様にタフなのでこんなくらいでは死なない。ヤツはそれを知らない。ゲイリーを引きずって、おとなしく砦から出ようとする。こんなことがあったにも関わらず、ジムが動こうとしていない。このままだとアイツも電撃の制裁を受けることになる。


「なんだテメエ、なんで出て行かないんだよ!」

「出て行く? 勘違いしないでくださいよ。」


 何故かジムは逆らおうとしている。いつもおとなしく素直な彼が、だ。どういう風の吹き回しなのか? 意外な展開だ。


「君も出て行くんですよ、トニヤ君。勘違いしていませんか? この砦を作ったのは誰のおかげだと思っているんです?」

「テメエ、ふざけてんじゃねえぞ!」

「ふざけているのは君の方です。氷に囲まれた状態で僕に勝てるとでも? 魔術師なら、この環境で一番有利なのは誰なのかわかるでしょう? 一瞬にして氷漬けにしてあげますよ。」

「チッ!」


 そういえばそうだ。学院で学んだことだが、精霊魔法ってのは周りの環境でプラスになったりマイナスになったりするそうだ。火属性なら火が近くで燃えてたりすれば、ないときよりも強力になったり早く発動できるそうだ。今の状況なら氷属性が有利なのだ。


「ジム、なんでお前が……?」

「さあ? どうしてでしょうね?」


 不敵な笑いを浮かべている。今まで見たことのない顔だ。普段の、自信なさげだが優しい少年の彼からは想像できない。トニヤはある程度警戒していたが、まさか、ジムが裏切るとは……。
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