189 / 331
第3章 第2幕 はぐれ梁山泊極端派【灰と青春と学園モノ!!】
第189話 手を取り合えるのなら……、
しおりを挟む「あなたがゴーレムなのは間違いないのね?」
「お姉様の想像通り、私の体は魔力によって動作する人工物、ゴーレムに間違いありません。」
――――私はあの時、ローラの正体を知ることになった。でも、知ったからといって、彼女に敵意を抱く事にはならなかった。出来るだけ事情を知りたかったので、聞いてみようと思った。
「あなたはローレッタ・アンブラ本人なの? それとも、あくまでゴーレムなの?」
「……ローレッタ・アンブラという人物はかつて存在していたのは事実です。そして、その生い立ちは以前、お話ししたとおりです。ですが、当の本人は五年前に亡くなっています。」
「……!?」
――――ロアがリン先輩から聞いた情報と同じく、元の人間と入れ替わっていた。事情が違うのは彼女のケースは学院内の出来事ではないということ。本物は五年前に亡くなっていたのだから、学院に入る前から入れ替わっていた?
「本物のローレッタは病で亡くなりました。家が没落して、治療する費用もなかったのです。その無念の思いを知ったマスターが亡くなる前の当人と出会い、ゴーレムの体に記憶を引き継がせる事になったのです。」
「ローラの許諾を得た上で、入れ替わったのね?」
「そういうことになります。立派な魔術師になるという夢はゴーレムの体になっても、引き継いでいます。」
――――信じがたい事実ではあったけれど、今まで一緒に過ごしてきた彼女の姿を思い浮かべると、どこも不審な点はなかった。生真面目すぎる所があるくらいで、普通の女の子と変わりない。あったとすれば、実習に入ってから彼女の常人離れした身体能力を見た時だけだった。
「記憶を引き継いでると言ったけど、そんなことは可能なの? もし、あったとしても驚くほど高度な技術がないと出来ないのでは?」
「私もマスターの技術には心底敬服しています。人の記憶を魔力素子に保存する技術は実在しています。マスターの話によると、そもそもはゴーレムに人格を与えるための技術の副産物として作られた物だそうです。」
――――確かにゴーレム等の魔法生物はある程度単純な命令を与えて実行させる事しか出来ない。後は術者自身が遠隔で操作をする事くらいしか出来ない。古代には自律した意志を持った魔法生物がいたみたいだし、ノウザンウェルのダンジョンで実際に見たことがある。
あれは古代人、金剛石の王が作った物だった。世間的にはロストテクノロジーになっているはず。彼女の言う、マスターはその技術を再現したんだろう。それよりもマスターとは何者なのだろう?
「あの、ローラ? さっきから気になっていたんだけど、マスターって何者?」
この質問に彼女は少し困った顔をした。秘密裏に行動しているから、首謀者の正体を知られるのは困るのかもしれない。
「残念ながら、マスターの正体を明かすことは出来ません。ですが、目的をお話することは出来ると思います。」
「ありがとう。あなたにはあなたの使命があるものね。大切な人を裏切る訳にはいかないでしょうから。」
彼女が心服しているのだから邪悪な人物ではないと思いたい。何か理想があって学院内で暗躍しているのだと思う。
「マスターは無闇に人をゴーレムに入れ替えている訳ではありません。対象となっているのは不遇な扱いで学院に命を奪われた人達です。中には体の一部を失い、義手義足を提供した人も含まれています。私のように完全にゴーレムへ置き換わった人だけではないのです。」
――――近年の義手義足はゴーレムの技術を応用していると聞いたことがある。その技術の相互作用で急激に発達してきているらしい。それに関わっているのがマスターという人物なのだろう。
「学院では優生思想、血統思想が蔓延しています。そのことはお姉様もご存じだと思います。マスターはこの風潮に心を痛めておられます。何としてでも、それらの思想を改めさせて、改革を起こしたいと考えているのです。」
――――虐げられた人達の復権を目指す……これは今、ロアが学院でやろうとしていることと似ている。もしかしたら、ゴーレム側の勢力と協力し合えるかもしれない。そう思った私はローラの許可をもらった上でロアやトレ坊先生に事情を話す事にしたのだった。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。
なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。
しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。
探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。
だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。
――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。
Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。
Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。
それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。
失意の内に意識を失った一馬の脳裏に
――チュートリアルが完了しました。
と、いうシステムメッセージが流れる。
それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

俺が異世界帰りだと会社の後輩にバレた後の話
猫野 ジム
ファンタジー
会社員(25歳・男)は異世界帰り。現代に帰って来ても魔法が使えるままだった。
バレないようにこっそり使っていたけど、後輩の女性社員にバレてしまった。なぜなら彼女も異世界から帰って来ていて、魔法が使われたことを察知できるから。
『異世界帰り』という共通点があることが分かった二人は後輩からの誘いで仕事終わりに食事をすることに。職場以外で会うのは初めてだった。果たしてどうなるのか?
※ダンジョンやバトルは無く、現代ラブコメに少しだけファンタジー要素が入った作品です
※カクヨム・小説家になろうでも公開しています
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる