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第3章 第2幕 はぐれ梁山泊極端派【灰と青春と学園モノ!!】
第179話 鶏鳴狗盗
しおりを挟む「……ご、ごめん下さい。」
「……ん? “ごめん”なんてウチでは扱ってないよ。」
「アニキ、そういう意味ではないでヤンス!」
“タニシ食堂”の開店準備が一段落して、アジトで寛いでいたとき、ある人物が訪ねてきた。小柄であんまりパッとしないような印象の少年だ。でも、見覚えはあるので、全く知らない人というわけではない。
「たしか、同じクラスだったな? 何の用?」
「こちらの寮に入りたいと思いまして……。でも、こちらに入るには一芸がないといけないんですよね?」
一芸がある……という条件は特に設定していない。入寮時に特技を聞いたりはしているが、いつの間にか噂で条件ということになってしまっているらしい。そのせいかかなり個性的な連中ばかりが集まってきている。
「いや、別に条件とかではないんだが……。」
「でも、ここにいる皆さんは個性的な方ばかりで……。何の取り柄の無い僕では見劣りしてしまいます。」
個性的……まあ、俺の舎弟のエロ犬とか爆発ゴリラを見てそんなことを言われても困るんだが……。それ以外では、動物の鳴き声を再現する魔法の使い手とか、手品魔法の使い手、パンツ一丁なのに氷系魔法の使い手、オナラで空を飛ぶ魔法を使うヤツとか……。個性的というより、一歩間違えばタダの変態紛いのヤツが山ほど集まってきている。そんなんと比べてもねぇ……。
「別にいいぞ。むしろ普通なヤツが一人もいないから、返って個性になるし。」
「いいんでしょうか……?」
「うーむ、俺らが学院であぶれている連中を匿っているのは、俺の祖国の大昔のエラい人に倣っているからなんだが……ウンタラ、カンタラ……。」
いわゆる“食客制度”というヤツですな。とあるエラい人が一芸を持つ人を抱えて面倒を見ていたという逸話がある。エラい人の家来たちはその行為を訝しんでいたという。あるとき、他国へ行ったときに暗殺されそうになった。その時、危機を救ったのが、養っていた食客たちで、特技を駆使してエラい人を無事脱出させたのだ。俺は昔からこの話が好きで事あるごとにこの話が書かれた書物を読みふけっていた。
「……そのような話、初めて聞きました! でも、やっぱり一芸を持っていないといけないのでは?」
「そうでもないぞ。中には特技を何も持たない男もいたらしいからな。しかも、その人は最終的にエラい人の側近として大活躍したらしいぞ。」
最初は無駄飯喰らいだった男は、あるとき借金の取り立てで功を奏し、以降は重用されたらしい。その後もエラい人の危機を何度も救ったり、助言や諫言でエラい人を支えたりしたらしいから、人ってのは第一印象だけではわからないもんだ。本人ですら自分の有用性に気付いていない事もあるし。
「僕にはそんな才能があるとは思えません。何の取り柄も無いから、今のような立場になっているのです。」
「わからんぞ。才能だっていつ、何が目覚めるか誰にもわからない。今のところは気にしなくていい。」
「いいんですか? でしたら、勇者様の言うことを信じてみます。」
……ん? 勇者? 今、勇者と言った? なんで俺が勇者だとわかるんだ? 学院内で俺の正体を知っているのは限られている。一般の学生がその情報を知ってるわけはないのだが……。
「チョイ待ち! 君は何故、俺を勇者だと知っているんだ?」
「それは……あなたの大武会での活躍を見たからです!」
「あの時、見に来てたの?」
まさかのパターンだ! あの時、見に来ていたとは! 切っ掛けがゲイリーと同じだな。
「あの時の戦いを見て、僕は勇気をもらいました。丁度、学院でうまくいかず、授業をサボって見に行っていたんです。いつか、勇者様に弟子入りしたいと思っていたんです!」
「弟子入り? いや、君、魔術師だろ? 魔術師の弟子を取るつもりはないから……。でも学院にいる間は“仲間”にはしてやるよ。」
「はい、ありがとうございます!」
危うく、弟子が増えるところだった。流石に畑違いだから、申し訳ないしな。せめて、ファルやサヨちゃんを紹介してやれるくらいだろう。
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