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第3章 第1幕 はぐれ梁山泊極端派【愛と勇気と学園モノ!!】

第168話 タチの悪い、悪あがき

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「なあ、ちょっと試したいことがあるんだが?」

「なんだ?」

「後は俺だけで戦うと言った手前、申し訳ないが、俺の悪あがきに手を貸してくれない?」

「……は? どうせ俺もアンタが死んだら、戦うハメになるんだから、どっちでもいいぜ。」


 結局、力を借りるハメになったが仕方ない。意地を張っていても死ぬだけだしな。策は思いついたし後は実行に移すだけだ。あのゴーレムが本当に水晶で出来ているなら、試す価値はある。


「魔法でありったけの瓦礫をぶつける事は出来るか? できなくても、俺と一緒に瓦礫をボンボン投げてくれりゃあいい。」

「多少は出来るけど、こんなのがどうなるって言うんだ? ただの石ぐらいじゃ水晶は割れないぞ。」

「まあいいから。瓦礫は腐るほどあるんだ利用しない手はない!」


 否定しながらも、トニヤは念動力の魔法で数個同時に瓦礫を浮かせ、ゴーレムへと放った。俺も次から次へと瓦礫を放り投げる。


「石ころぐらいで何が出来るって言うんだ?」


 ガンガン、キンキンと瓦礫はゴーレムにぶつかり弾けるだけで何も状況は変化していない。というかあまりにも雨あられの様に瓦礫が飛来するのでゴーレム側も反応が出来ないのかもしれない。


「ゴーレムは所詮、作り物なんだろ? 心がないなら、突拍子もない行動に対しての対処法が用意されてないんじゃないか?」

「確かに言えてるが、ゴーレム全てがそういう奴だけだとは思うなよ。高度な奴は頭もいいし、人間と区別がつかないのもいるぞ。多分、お前より頭がいいのもいる。」

「なにぃーっ!?」


 などとどうでもいいような、戦闘中とはおもえないような話をしながら、瓦礫を投げ続ける。何度も何個も投げつけたせいか、ゴーレムの体が破片の粉などで白っぽく曇ってしまった。それでも体のどこも損傷していない。さすがに水晶は硬い。


「オイ、手元の瓦礫がなくなってきたぞ! これ以上は無理だ。」

「そうだな。そろそろ仕上げに入るか!」


 と、そろそろ手を止めようとしたとき、ゴーレムの変化に気が付いた。ゴーレムが薄らと光っている! 青白い光、まるで雷光魔法のような光を体の奥に灯している。瓦礫の埃のせいで今まで気が付かなかった。ずっと最初からわずかに光っていたのかもしれない。何もせず突っ立ってるワケではなかった?


「まさか……アレは!? おかしい! 魔力は感知できないのに! アレじゃまるで雷光魔術じゃねえか!」

「なんだとう!」


 ゆっくりと反撃の手立てを準備していたとは! しかも衝撃波の時と同じで魔力の気配がない。どういう仕組みなんだ? ワケはわからんがとにかく雷光魔法を警戒するしかない。


「早いとこ仕上げに入るぞ! トニヤ、お前のありったけの魔力で雷光魔法を撃て!」

「また衝撃波で反撃されるぞ! しかも今度は雷光魔法も飛んでくるかもしれんぞ!」

「いいから撃て! 下準備は終わってるから、後はそれだけで勝てる!」

「ライトニング・プラズマぁ!!!」

(ドォォォォォォン!!!!!!!!)


 真近くで落雷が発生したかのような、盛大な爆音が響いた。当然、トニヤが人為的に落雷を発生させたんだから当たり前なのだが。直撃を受けたゴーレムは大きく後ずさりしたものの、まだ原型を保っている。相変わらず雷光は効かないらしい。雷光自体は、な。


「キョキョキョキョキョキョキョキョ!!」


 ゴーレムは例の奇声を上げながら、震えている。リアクションは同じだが、受けた雷光が強烈だったのもあってか、さっきまでよりも激しく振動しているような気がする。俺の狙い通りだ!


「さっきよりも悪化してるんじゃないか? このままだと、特大級の衝撃波が飛んでくるぜ!」

「いや、そうはならないと思う。俺の策が成功してれば、奴はこのまま自滅する!」

「そんなバカなことが……!?」


 震動で瓦礫の微細な埃は振り落とされ、ヤツ自身の水晶の表面が露わになった。でも瓦礫を放り投げるまでとは様子が違っている。今は表面、いや内部にまで微細なヒビが入っている! 時間と共にそのヒビ、亀裂は数を増やし、ビシビシ、キシキシと音を立てながら、更に細かくなっていく!


「どういうことだ、アレは!」

「やったぜ! 狙い通りだ! ここから更にダメ押しの一撃、っとぉ!」


 取っておいた瓦礫のかけらを一個全力でゴーレムに投げ込んだ!


(ビキィッ!!!!!)


 微細なヒビが入ったその体に瓦礫はめり込んだ! 強度が著しく低下しているらしい。


(ガッシャァァァァァァン!!!)


 粉々に砕け散った。投石が止めとなったのだ。流石にこの状態では再生は出来ないだろう。これで俺らの勝利のはず!
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