上 下
154 / 331
第3章 第1幕 はぐれ梁山泊極端派【愛と勇気と学園モノ!!】

第154話 ここがええのんか?

しおりを挟む
「うう……ここは…どこ…ですの?」

「アニキ! 先輩が目を覚ましたでヤンス!」


 決闘で勝利した後、俺は先輩をそのまま拉致する形になった。決闘の運営とやらが言っていたように放っておけば、命の危険が及ぶ可能性があったので、終了後のドタバタに紛れて脱出を図ったのだ。そして、俺らのアジト、もとい寮のテントまで連れてきた。


「おっ! 先輩、目を覚ましたね?」


 連れてくる間はずっと気絶していたので、抵抗されずにすんだ。下手に意識でもあったら、ここまで連れてくる事は出来なかっただろう。
一応逃げられないように縄で縛ってある。


「どういうつもりですの? あたくしに一体何をしようと言うんですの!」

「いやあ、決闘に勝ったからには色々、交渉しないといけないことがあるんですよねえ? ぐへへ!」


 トラブルに巻き込まれたのだから、いっそのこと、色々と利用させてもらうつもりだ。コチラは住環境からして不利な状況なので、それを少しでも改善するためには必要不可欠なことだ。


「その前に先輩のこと、どう呼んだらいいッスかね?」

「普通に名前でお呼びなさいな! それ以外に何があると言うんですの!」

「いやぁ、普通に名前で呼ぶのはおもしろくないじゃないッスか?」

「意味がわかりませんわ!」


 正直、普通に名前で呼ぶのはもったいない気がする。見た目も個性的なのでちょっとしたあだ名を付けた方が親しみが出ると思うんですよ。


「魔獣とかがお好きなようなんで……野獣先輩とかどうすか?」

「なんですの、その品性のかけらもない呼び方は! 大体、その呼び方はあたくしが野獣と誤解されてしまいますわ!」

「魔獣飼ってるぐらいだから、先輩自身も実は野獣なんじゃないのかと思いまして……。」

「ムキーッ! し、失礼な! あたくしは別に野獣ではありませんわ!」

「え? 特にその『ムキー』とかいうのが野獣みたいじゃないですか?」

「あたくしをおちょくるのはおやめなさい! 許しませんわよ!」


 どうやらご立腹のようだ。ピッタリだと思ったんだがなあ。もしかして、魔獣先輩の方が良かったのだろうか?


「あっしからもハイ! セクシー先輩がいいと思うでヤンス! 決闘のクライマックスでセクシーな見えてはいけないモノを拝見したので、ピッタリだと思うでヤンス!」

「ああ、確かに! あの時は戦闘中だったからあんま見れんかったけど……チラ見してました。」

「んまーっ!? なんて破廉恥な! セクハラで訴えますわよ!」


 さすがにダメだったか。せっかくタニシが名案を出してくれたのだが、却下されてしまった。じゃあ、それはそれとしてタニシがこういう場面でやっておきたいことがあると言っていたから、さっさと済ますか。


「タニシ? やりたいことがあると言っていたが、やらなくていいのか?」

「うへへ! お楽しみの時間がやってきたヤンス! じゃあ、さっそく計画を実行に移すヤンス!、それっ……!」

「ちょっ……!? ん、何をしてるんですの!」

「こちょ、こちょ! こちょヤンス!」


 何をするのかと思ったら……先輩の足の裏を鳥の羽とかでくすぐり始めた。そんな微妙なイタズラみたいなお仕置きなんてしてどうするつもりなんだ? 確かにヒドい目にあわされたから、仕返ししたいんだろうけど……。


「ちょっ……いい加減におやめなさい! くくっ!?」

「惜しい! もうチョイでヤンした! それ、一こちょ、二こちょ、三こちょし!」

「くくっ!? くっ!?」

「そこで……ハイ!」

「……?」


 タニシは先輩をくすぐりながら、何かを言わせようとしている。意味がわからない。先輩や俺には全くその意図がわからないので、何をしようとしているのか理解できずキョトンとするしかない。


「こういう時に言うことがあるでしょうが!」

「は……? 何ですの?」

「いや、意味がわからんのだが?」

「あーっ!? アニキも物わかりが悪いでヤンスねぇ! こういう時は『くっ殺』でしょうが!」

「ナニソレ?」

「こういう時のお約束、『くっ、殺せ!』は定番でしょうが! 美人がとらわれの身になって拷問されたら、必ず言うセリフなんでヤンス!」

「知らないんだが……。」


 どこで仕入れた知識なんだ? 聞いたことがない。美人が拷問っていうシチュエーションはどこにでも転がってはいそうだが、そういうのは知らないな。


「言ってくれないなら、あっしも強硬手段に出るでヤンス! 足の裏ペロペロこうげ……キッ!?」

(ズダン!! ベシャッ!!!)

「いい加減にしろ! このエロ犬がっ!!」

「わギャ!! わギャース!!!」


 タニシの暴挙は急遽乱入してきたミヤコの手によって阻止された。手っていうか、足だけど。後ろから蹴倒し、そのままの勢いで踏んづけたのだ。なんというタイミングの良さなんだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!

夕凪五月雨影法師
ファンタジー
AIイラストあり! 追放された世界最強の勇者が、ハーレムの女の子たちと自由気ままなスローライフを送る、ちょっとエッチでハートフルな異世界ラブコメディ!! 国内最強の勇者パーティを率いる勇者ユーリが、突然の引退を宣言した。 幼い頃に神託を受けて勇者に選ばれて以来、寝る間も惜しんで人々を助け続けてきたユーリ。 彼はもう限界だったのだ。 「これからは好きな時に寝て、好きな時に食べて、好きな時に好きな子とエッチしてやる!! ハーレム作ってやるーーーー!!」 そんな発言に愛想を尽かし、パーティメンバーは彼の元から去っていくが……。 その引退の裏には、世界をも巻き込む大規模な陰謀が隠されていた。 その陰謀によって、ユーリは勇者引退を余儀なくされ、全てを失った……。 かのように思われた。 「はい、じゃあ僕もう勇者じゃないから、こっからは好きにやらせて貰うね」 勇者としての条約や規約に縛られていた彼は、力をセーブしたまま活動を強いられていたのだ。 本来の力を取り戻した彼は、その強大な魔力と、金貨1,000万枚にものを言わせ、好き勝手に人々を救い、気ままに高難度ダンジョンを攻略し、そして自身をざまぁした巨大な陰謀に立ち向かっていく!! 基本的には、金持ちで最強の勇者が、ハーレムの女の子たちとまったりするだけのスローライフコメディです。 異世界版の光源氏のようなストーリーです! ……やっぱりちょっと違います笑 また、AIイラストは初心者ですので、あくまでも小説のおまけ程度に考えていただければ……(震え声)

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...