120 / 331
第2章 はぐれ梁山泊極端派【燃えよ、十字剣!!】
第120話 ニアミス……?
しおりを挟む「ご苦労だった。わざわざ苦労役を買って出てくれてすまなかったな。礼を言う。」
総長は席を立ち、深々と礼をする。勇者とロッヒェンを送り出した翌日、私と総長はとある人物の帰還を迎えていた。先日、“十字の吻首鎌”がグランデ家を襲撃した件で法王庁への抗議に向かってもらっていたのだ。
「いえいえ。礼には及びませんよ。一線を退いた私にとって交渉事は適役でしょうから。それに法王庁を相手取るなら私の肩書きがあった方が舐められずに済みますからね。」
報告によればグランデ家の屋敷は焼失し、犠牲者も多数出たとのこと。加えてグランデ嬢を始めとして、勇者一行に危害を加えた点も見逃せない。
「彼らの言い分によれば、現グランデ家当主による出動要請があったので対応した、とのことです。この当主については五年前のデーモン・コアの件で、通報を行った人物と同一ですね。」
彼らの活動は近年、目に余る物があったため、それを戒める必要があった。立場上、それが出来る組織は我々ぐらいしかいないのだ。
「法王庁へ多額の寄付を行っている人物ということだったので、要請を反故にすることも出来なかった、とも言ってましたよ。デーモン・コアが絡んでいるわけですしね。」
苦しい言い分だな。必要以上に被害を拡大した原因は彼らにあるというのに。かつての事件でデーモン・コアを処理できなかっただけに、メンツを取り戻そうと躍起になっていたのかもしれない。
「それはそうと貴公はグランデ家に縁があったのではないか?」
「現当主とは面識はありません。現当主の姉上とは魔王討伐の際に戦友だったというだけですよ……。」
彼はトレードマークともいえる眼鏡をクイと上げ、淡々と答えた。まるで自分に関係がないとも言いたげな態度だった。過去の仲間の話題だというのに冷ややかすぎるのではとも思う。
「貴公の戦友エルフリーデ殿のご息女が先日までここを訪れていたのだ。タイミングがあえば顔を合わせることも出来ただろうに。もう少し引き留めておくべきだったか?」
「それは残念です。一度会っておきたかったですね。正直意外でしたよ。彼女に子供がいたなんてね。」
知らなかった? かつての戦友に関する情報が耳に入ってなかったとは思えない。魔王討伐以降は音信不通だったのだろうか?
「ご息女はある人物と共に旅をしている。それが現勇者、ロアなのだよ。貴公の弟子である先代勇者カレルが任命した男だ。」
そう、彼は先代勇者の師だ。彼の名はシャルル・アバンテ。二代前の勇者を務めていた人物だ。弟子が任命した今の勇者について何を思っているのだろう?
「エルフリーデさんのご息女が勇者と共に旅をしているなんてね。なんという奇妙な縁なのでしょう?」
「アバンテ卿、ご息女をデーモン・コアの浸食から救ったのが現在の勇者、ロアなのです。その場に立ち会ったので、私はその奇跡の証明者ということになります。」
「ほう? 奇跡……?」
アバンテ卿は私の話に興味を示した。ロアは歴代勇者の誰もが為し得なかった偉業をやってのけた。グランデ嬢の件もそうだが、序列十一位の虎の魔王のコアを完全に消滅させた。討伐に成功しても長い年月をかけて復活する魔王。その不死性すら破壊し根絶したのだ。それは奇跡と形容するにふさわしい偉業だと思う。
「彼は東洋からやって来たのです。東方の帝国で名を馳せる武芸の名門、彼はその名門の出身なのですよ。その流派の奥義こそが奇跡を発現させるのです。」
「なるほど。勇者の剣技ではなく独自の流派を使いこなす勇者ですか。私やカレルとは異なるタイプの人間の様ですね。」
アバンテ卿は勇者の三大奥義の使い手として有名だ。しかも歴代随一とも言われるほどだ。当然、弟子のカレルも同様に三大奥義の使い手だったのだ。
「そういう話であれば一度会ってみたかったですね。」
少し笑みを浮かべながら彼はそう言う。その目が少し鋭く光ったのを私は見逃さなかった。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
パーティーを追放されて出て行った少年は、再会した美少女三姉妹のパーティーに迎え入れられる。
竜ヶ崎彰
ファンタジー
「上等だ!こっちから出てってやるよ!!」
ある日、最強の冒険者パーティー「火炎の不死鳥(バーン・フェニキス)」に所属する盗賊(シーフ)ジョブのライアは、「無能」と罵られてパーティーから追放を言い渡され、それに我慢できずにそのままライアはパーティーを脱退した。
路頭に迷っていたライアは、幼馴染の三姉妹と再会し彼女達のパーティーの一員として迎えられる。
三姉妹はパーティーでのライアは盗人のスキルを活かした戦術や彼の真の実力を見て最強パーティーへと成り上がって行った。
一方、火炎の不死鳥はライアが抜けた事でパーティーとしての実力が落ちて行ってしまっていた。
これは無能扱いされてパーティーを抜けた少年と美少女三姉妹による逆転恋愛群像劇である。
ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした
渡琉兎
ファンタジー
『第3回次世代ファンタジーカップ』にて【優秀賞】を受賞!
2024/02/21(水)1巻発売!
2024/07/22(月)2巻発売!
応援してくださった皆様、誠にありがとうございます!!
刊行情報が出たことに合わせて02/01にて改題しました!
旧題『ファンタジーを知らないおじさんの異世界スローライフ ~見た目は子供で中身は三十路のギルド専属鑑定士は、何やら規格外みたいです~』
=====
車に轢かれて死んでしまった佐鳥冬夜は、自分の死が女神の手違いだと知り涙する。
そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。
女神から与えられるスキルも遠慮して鑑定スキルの上位ではなく、下位の鑑定眼を選択してしまう始末。
それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。
※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!
光のもとで2
葉野りるは
青春
一年の療養を経て高校へ入学した翠葉は「高校一年」という濃厚な時間を過ごし、
新たな気持ちで新学期を迎える。
好きな人と両思いにはなれたけれど、だからといって順風満帆にいくわけではないみたい。
少し環境が変わっただけで会う機会は減ってしまったし、気持ちがすれ違うことも多々。
それでも、同じ時間を過ごし共に歩めることに感謝を……。
この世界には当たり前のことなどひとつもなく、あるのは光のような奇跡だけだから。
何か問題が起きたとしても、一つひとつ乗り越えて行きたい――
(10万文字を一冊として、文庫本10冊ほどの長さです)
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す
エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】
転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた!
元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。
相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ!
ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。
お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。
金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
妻と愛人と家族
春秋花壇
現代文学
4 愛は辛抱強く,親切です。愛は嫉妬しません。愛は自慢せず,思い上がらず, 5 下品な振る舞いをせず,自分のことばかり考えず,いら立ちません。愛は傷つけられても根に持ちません。 6 愛は不正を喜ばないで,真実を喜びます。 7 愛は全てのことに耐え,全てのことを信じ,全てのことを希望し,全てのことを忍耐します。
8 愛は決して絶えません。
コリント第一13章4~8節
社畜だけど転移先の異世界で【ジョブ設定スキル】を駆使して世界滅亡の危機に立ち向かう ~【最強ハーレム】を築くまで、俺は止まらねぇからよぉ!~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
ファンタジー
俺は社畜だ。
ふと気が付くと見知らぬ場所に立っていた。
諸々の情報を整理するに、ここはどうやら異世界のようである。
『ジョブ設定』や『ミッション』という概念があるあたり、俺がかつてやり込んだ『ソード&マジック・クロニクル』というVRMMOに酷似したシステムを持つ異世界のようだ。
俺に初期スキルとして与えられた『ジョブ設定』は、相当に便利そうだ。
このスキルを使えば可愛い女の子たちを強化することができる。
俺だけの最強ハーレムパーティを築くことも夢ではない。
え?
ああ、『ミッション』の件?
何か『30年後の世界滅亡を回避せよ』とか書いてあるな。
まだまだ先のことだし、実感が湧かない。
ハーレム作戦のついでに、ほどほどに取り組んでいくよ。
……むっ!?
あれは……。
馬車がゴブリンの群れに追われている。
さっそく助けてやることにしよう。
美少女が乗っている気配も感じるしな!
俺を止めようとしてもムダだぜ?
最強ハーレムを築くまで、俺は止まらねぇからよぉ!
※主人公陣営に死者や離反者は出ません。
※主人公の精神的挫折はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる