87 / 331
第2章 はぐれ梁山泊極端派【燃えよ、十字剣!!】
第87話 最前線に急行せよ!
しおりを挟む「おいおいおい! かなりやられてるじゃないか!」
俺たち一行はクルセイダーズ本部にある転送陣でイースト地区までやってきた。状況を確認するため、エドに案内され見張り塔の上までやってきた。現在もクルセイダーズとの激しい戦いが続いていて、家屋や設備が破壊されているのも確認できた。そして何よりも、猿の姿をした魔族達が大勢迫ってきているのが目を引く。
「ムウ、奴等めかなりの強攻策を取ってきたようだな。このままでは私の部下達といえど瓦解してしまうかもしれん。」
戦いの様子を見てみると、遠巻きとはいえ、何人か見覚えのある人達がいるのがわかる。騎兵部隊が縦横無尽に駆け回りつつ、騎射や槍での攻撃を仕掛けている。騎兵部隊の先頭を走る遊牧民の戦士……あれはウネグだろう。馬に乗って戦っている様は初めて見たが、この前共闘したときとは比較にならないくらいの猛攻をしている。それでも、魔族が抑えきれず苦戦を強いられているようだ。
「ウネグが指揮をとっているのか?」
「そうだ。私が本部へ戻る間の臨時の指揮官として奴を指名した。魔族との戦闘は奴が最も経験豊富だからだ。それを後方でクロエが支援する形を取っている。」
この建物に近いところに陣を張り、後方支援の弓兵部隊や対魔術士が控えている。その中心にいるのがクロエだった。必要に応じて浄化魔法、弓の射撃などを行っているようだが、抑え切れていないようだ。
「早く加勢しに行こう! このままじゃ、みんなやられてしまう!」
「ウム。私は馬に乗るが、君は馬に乗れるのか?」
見張り塔の階段を下りながら、会話を続ける。騎乗出来るかどうかを聞かれたが……残念ながら俺は馬に乗れない! だって馬に乗る機会がなかったんだもん……。
「ざ、残念ながら、無い。」
「そうか、フム。そうであれば……、」
エドが困ったような素振りを見せる。すまんな。しょうもないところで迷惑をかけるハメになった。しかし、そこでエルが声を上げた。
「私が馬に乗れるので、彼にはその後ろに乗ってもらいます。」
さすが貴族のお嬢様だ。乗馬も出来るんだな。じゃあお言葉に甘えて後ろに乗せてもらおう。
「ああ、それならば我々に随伴できるな。戦闘に入れば下りて戦う事にはなると思うが、移動だけならばそれで事足りるな。あと、君はどうだ? ゲイリーと言ったかな?」
ゲイリーは後ろの方からズンズンと気分が良さそうに歩いてきていた。戦うのが待ちきれないといった感じだ。コイツ、馬に乗れるのか? 馬だってコイツには乗られたくはないだろう。コイツ自身が暴れ馬みたいなモンだし。
「当然乗れるッスよ! 戦士のたしなみみたいなモンでさぁ! 余裕ッスよ!」
「それは頼もしいな。」
チクショー! コイツにすら負けた! 師匠の俺よりも多才とか! 弟子入りしなくてもそれなりに強いみたいだし、なんで俺なんかに弟子入りしに来たのか? 俺が指導しなくても、十分戦えるじゃないか。
「よし、では馬はこの中から選んでくれ。好きに使ってくれていい。」
見張り塔を出て、厩舎までやってきた俺たちは馬に乗る準備を始める。エドは自分自身の馬を持っているのですぐさま準備を整えた。エルとゲイリーは相性の良さそうな馬を探している
「この子にしましょう。」
エルは栗毛の馬を選んだ。毛並みも美しく、彼女にお似合いな馬だと一目でわかった。対してゲイリーは気性の荒そうな黒い馬を選んでいた。二人とも自分と似たところのある馬を選んだわけだ。俺が馬に乗れるんだったら、同じ様な傾向で選んでいただろうか? どのみち出来んのでわからんけど。
「じゃあ、後ろに乗って!」
俺が周りを気にしているうちに、いつの間にか馬に乗り終えたエルから騎乗を促される。乗ろうと後ろから近付く……、
(ブヒヒン!!)
「おうわっ!?」
後ろ足で蹴られた。思わぬ不意打ちに俺は吹き飛ばされた。痛い。馬に騎乗拒否された!
「ああ、もう、どうして? 機嫌が悪いのかしら、この子?」
なんか急に暴れた。さっきまでは何もなかったのに。エルはすんなり乗せたのに、俺は拒否られた。俺はお馬さんにも嫌われるのか……。
「師匠、俺っちの後ろに乗って下せえ!」
とゲイリーは言うものの、馬の方は俺を見て鼻息を荒げている! これは……アカンやつや! また足蹴にされるのは目に見えている。
「しゃあない! 一人で行くよ! ……徒歩で!」
その様子を見たエドは渋々出陣していった。それにゲイリーが続き出ていった。エルは出て行くかどうか葛藤しながら、俺のことを引きつった顔で見ている。
「いいよ。気にしないで行ってくれ。」
「あはは……。無理だけはしないでね。」
エルはゆっくりと出て行った。俺だけが取り残される形になったわけだ。トホホだよ、ホントにもう。……徒歩だけにな。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
盗まれたのは、望まぬ結婚を強いられた花嫁でした〜怪盗の溺愛からはもう逃げられない〜
矢口愛留
恋愛
家族に虐げられてきた伯爵令嬢セレーナは、その日、望まぬ結婚をするはずだった。
しかし、突然式場に乱入してきた美貌の怪盗によって、彼女はさらわれてしまう。
「あんたを盗みにきた」そう語る怪盗は、実はセレーナと深い縁があった。
旅をするうちに、セレーナは彼の正体が、五年前にいなくなってしまった親友、ジーンではないかと気がつき始める。
そして、彼自身にも隠された秘密が――。
ジーンは、隣国の王家と縁ある人物だったのだ。
不遇令嬢だったセレーナが、高貴なる怪盗に溺愛され、世界一の幸せ令嬢になるシンデレラストーリー。
*ハッピーエンドです。
*ゆるファンタジーです。
*小説家になろう、カクヨムにも掲載予定です。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。
Gai
ファンタジー
不慮の事故で亡くなった後、異世界に転生した高校生、鬼島迅。
そんな彼が生まれ落ちた家は、貴族。
しかし、その家の住人たちは国内でも随一、乱暴者というイメージが染みついている家。
世間のその様なイメージは……あながち間違ってはいない。
そんな一家でも、迅……イシュドはある意味で狂った存在。
そしてイシュドは先々代当主、イシュドにとってひい爺ちゃんにあたる人物に目を付けられ、立派な暴君戦士への道を歩み始める。
「イシュド、学園に通ってくれねぇか」
「へ?」
そんなある日、父親であるアルバから予想外の頼み事をされた。
※主人公は一先ず五十後半の話で暴れます。
【完結】たとえあなたに選ばれなくても
神宮寺 あおい
恋愛
人を踏みつけた者には相応の報いを。
伯爵令嬢のアリシアは半年後に結婚する予定だった。
公爵家次男の婚約者、ルーカスと両思いで一緒になれるのを楽しみにしていたのに。
ルーカスにとって腹違いの兄、ニコラオスの突然の死が全てを狂わせていく。
義母の願う血筋の継承。
ニコラオスの婚約者、フォティアからの横槍。
公爵家を継ぐ義務に縛られるルーカス。
フォティアのお腹にはニコラオスの子供が宿っており、正統なる後継者を望む義母はルーカスとアリシアの婚約を破棄させ、フォティアと婚約させようとする。
そんな中アリシアのお腹にもまた小さな命が。
アリシアとルーカスの思いとは裏腹に2人は周りの思惑に振り回されていく。
何があってもこの子を守らなければ。
大切なあなたとの未来を夢見たいのに許されない。
ならば私は去りましょう。
たとえあなたに選ばれなくても。
私は私の人生を歩んでいく。
これは普通の伯爵令嬢と訳あり公爵令息の、想いが報われるまでの物語。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
読む前にご確認いただけると助かります。
1)西洋の貴族社会をベースにした世界観ではあるものの、あくまでファンタジーです
2)作中では第一王位継承者のみ『皇太子』とし、それ以外は『王子』『王女』としています
よろしくお願いいたします。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
誤字を教えてくださる方、ありがとうございます。
読み返してから投稿しているのですが、見落としていることがあるのでとても助かります。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
パーティーを追放されて出て行った少年は、再会した美少女三姉妹のパーティーに迎え入れられる。
竜ヶ崎彰
ファンタジー
「上等だ!こっちから出てってやるよ!!」
ある日、最強の冒険者パーティー「火炎の不死鳥(バーン・フェニキス)」に所属する盗賊(シーフ)ジョブのライアは、「無能」と罵られてパーティーから追放を言い渡され、それに我慢できずにそのままライアはパーティーを脱退した。
路頭に迷っていたライアは、幼馴染の三姉妹と再会し彼女達のパーティーの一員として迎えられる。
三姉妹はパーティーでのライアは盗人のスキルを活かした戦術や彼の真の実力を見て最強パーティーへと成り上がって行った。
一方、火炎の不死鳥はライアが抜けた事でパーティーとしての実力が落ちて行ってしまっていた。
これは無能扱いされてパーティーを抜けた少年と美少女三姉妹による逆転恋愛群像劇である。
まもののおいしゃさん
陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中
ファンタジー
まもののおいしゃさん〜役立たずと追い出されたオッサン冒険者、豊富な魔物の知識を活かし世界で唯一の魔物専門医として娘とのんびりスローライフを楽しんでいるのでもう放っておいてくれませんか〜
長年Sランクパーティー獣の檻に所属していたテイマーのアスガルドは、より深いダンジョンに潜るのに、足手まといと切り捨てられる。
失意の中故郷に戻ると、娘と村の人たちが優しく出迎えてくれたが、村は魔物の被害に苦しんでいた。
貧乏な村には、ギルドに魔物討伐を依頼する金もない。
──って、いやいや、それ、討伐しなくとも、何とかなるぞ?
魔物と人の共存方法の提案、6次産業の商品を次々と開発し、貧乏だった村は潤っていく。
噂を聞きつけた他の地域からも、どんどん声がかかり、民衆は「魔物を守れ!討伐よりも共存を!」と言い出した。
魔物を狩れなくなった冒険者たちは次々と廃業を余儀なくされ、ついには王宮から声がかかる。
いやいや、娘とのんびり暮らせれば充分なんで、もう放っておいてくれませんか?
※魔物は有名なものより、オリジナルなことが多いです。
一切バトルしませんが、そういうのが
お好きな方に読んでいただけると
嬉しいです。
異世界で等価交換~文明の力で冒険者として生き抜く
りおまる
ファンタジー
交通事故で命を落とし、愛犬ルナと共に異世界に転生したタケル。神から授かった『等価交換』スキルで、現代のアイテムを異世界で取引し、商売人として成功を目指す。商業ギルドとの取引や店舗経営、そして冒険者としての活動を通じて仲間を増やしながら、タケルは異世界での新たな人生を切り開いていく。商売と冒険、二つの顔を持つ異世界ライフを描く、笑いあり、感動ありの成長ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる