上 下
86 / 331
第2章 はぐれ梁山泊極端派【燃えよ、十字剣!!】

第86話 恐ろしく高度な猿マネ

しおりを挟む

「どうしてダメなのか、説明してもらえますかね?」


 事情がわからないから、詳細を聞くしかない。ロッヒェンをこのまま引き下がらせるのも不憫に思えたからだ。


「そうであったな。部外者である貴公は事情を知らぬのであったな。まず、本人も申していたとおり、奴の父はルス・デルソルに敗れた。ただそれだけであれば問題はない。」

「ただ負けただけではないと?」

「うむ。問題は奴等の能力にある。奴等は相手の技をコピーする能力を持つ。正に猿真似だ。これが中々にやっかいな能力でな。通常ならば付け焼き刃程度のレベルに過ぎないが、マネの対象を殺害してしまった場合は話が異なってくる。その場合には完全に自分の物としてしまえるのだ。」


 猿の魔族だけに猿マネが得意だとう! しかも技を盗んで、相手殺して自分のものにするとか……。本物に成り代わるという意味では人間側の被害が増えるほど、ソイツらが強くなるなんてこともありえるんじゃないか?


「これだけでは終わらない。我が物とした技は奴等眷属の間で共有出来るのだ! 奴等全員がロッヒェン家の伝統技“赫灼の雨”を使えるものと思っておいた方が良い。もちろんそれだけではないぞ。今までの歴戦の戦士達の技の数々を駆使してくるのだ。」


 ゾッとする話だ。俺の嫌な予感が当たってしまった。魔族が人間の技を使ってくるのはかなりの脅威だ。ヤツらの方が身体能力や魔力がはるかに優れている。とすると、もとの技より更に強力になっているものが多いかもしれない。


「それ故、奴等は成長する魔族と言ってもよい。今は序列七位となっているが、大昔は序列十一位だったそうだ。歴史上何度も討伐もされてはいるが、数多くの戦いをくぐり抜け、その度に力を増していっているのだ。下手に上位の魔王より警戒すべきは奴等なのかもしれぬ。」


 成長して、年を経るごとに強くなる……。ヤベえな。ただでさえ強い魔王がそんな能力を持っているのか。いや、待てよ? ということは今回、俺がソイツらを倒しきってしまえばいいんじゃないか? 俺がコアを消滅させてしまえば復活できないんだからな。


「総長、俺が終わらせてみせますよ。」

「ふむ。貴公ならば魔王めを消滅させられると、イグレスから聞いておる。我々の悲願を達成させる好機がやってきたのだ!」

「……だったら、ロッヒェン君も参加させてやってほしいな。俺が色々カバーするから……。」

「ならぬ。それだけはならぬ。貴公の推薦であっても、決定を変えることは出来ぬのだ。」

「……そうすか。」


 ですよね~。大きくため息をつかざるを得ない。意地でもヤツを参戦させたくないらしい。これ以上はどうしようもなさそう。ヤツの親父さんの遺言なんだから仕方ないのかもしれない。


「それでは行こうか、ロア。」

「うん、行こう。こうしている間にも被害が増えてるかもしれないしな。」


 エルとゲイリーにも合図を送り、エドの後を付いていく。そこへミヤコが走り寄ってきた。


「ウチはワンちゃんの付き添いでもしとくね。」

「ああ、アイツのことは頼んだ。さすがに二人には危険すぎるだろうからな。」

「ハイハイ! どうせ足手まといですよーだ! でもさ、ウチはココでやろうと思ってることがあるから。ちょっと良いアイデアがあってさ……。」


 と意味深なことを言って、俺だけにわかるようにロッヒェンをチラ見した。コイツ、もしや……?


「そういうことだから、死んだりするなよ、へっぽこゆーしゃ!」

「死なねーよ! 俺が死んだらエルやゲイリーも死ぬって事になるんだからな。」

「アンタだけドジって死ぬかもしれないじゃん。」

「お前なー!」

「お前って言うなぁ!」


 死地に赴く前とは到底思えないくらいの、冗談の応酬だった。いや、戦いの前だからこそ、これぐらいの余裕はあった方がいいかもしれない。ミヤコもそれを狙ってやってくれているような気がする。最後に、ロッヒェンがうなだれる姿を見て訓練場を後にした。


(あとはまかせたぞ、ミヤコ!)


 アイツのアイデアとやらが俺の予想した通りなのかはわからないが、期待することにした。俺がこれから戦地に赴く以上、ロッヒェンの力になってやれるのはアイツしかいないのだから。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!

夕凪五月雨影法師
ファンタジー
AIイラストあり! 追放された世界最強の勇者が、ハーレムの女の子たちと自由気ままなスローライフを送る、ちょっとエッチでハートフルな異世界ラブコメディ!! 国内最強の勇者パーティを率いる勇者ユーリが、突然の引退を宣言した。 幼い頃に神託を受けて勇者に選ばれて以来、寝る間も惜しんで人々を助け続けてきたユーリ。 彼はもう限界だったのだ。 「これからは好きな時に寝て、好きな時に食べて、好きな時に好きな子とエッチしてやる!! ハーレム作ってやるーーーー!!」 そんな発言に愛想を尽かし、パーティメンバーは彼の元から去っていくが……。 その引退の裏には、世界をも巻き込む大規模な陰謀が隠されていた。 その陰謀によって、ユーリは勇者引退を余儀なくされ、全てを失った……。 かのように思われた。 「はい、じゃあ僕もう勇者じゃないから、こっからは好きにやらせて貰うね」 勇者としての条約や規約に縛られていた彼は、力をセーブしたまま活動を強いられていたのだ。 本来の力を取り戻した彼は、その強大な魔力と、金貨1,000万枚にものを言わせ、好き勝手に人々を救い、気ままに高難度ダンジョンを攻略し、そして自身をざまぁした巨大な陰謀に立ち向かっていく!! 基本的には、金持ちで最強の勇者が、ハーレムの女の子たちとまったりするだけのスローライフコメディです。 異世界版の光源氏のようなストーリーです! ……やっぱりちょっと違います笑 また、AIイラストは初心者ですので、あくまでも小説のおまけ程度に考えていただければ……(震え声)

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。

飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。 ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。 そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。 しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。 自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。 アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。  ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。  これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である

処理中です...