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第2章 はぐれ梁山泊極端派【燃えよ、十字剣!!】
第83話 天破奥義“有形無形”に関する考察
しおりを挟む「一度、私と戦ってみないか?」
「は、はい……?」
昔、魔王を敗走させたのか、ふーん、強そー、なんて思っていたところにコレだ! 不意打ちにも程があるぞ! やめろ、心臓に悪い! もうなんか、クルセイダーズの連中のお約束になってきたな。実力者に対戦を挑むのが社交辞令とかになっているんだろうか?
「いやぁー、さっき、ロッヒェン君と戦ったので疲れてるんすよ。正直、これ以上は……。」
「はっはっは! 冗談に決まっておろう! 実は最後の方だけだが先程の戦いは見ておった。それだけで十分わかったから別に構わん。」
「はは……。」
た、助かった! 悪夢の二連戦を回避することに成功したようだ。ふう。二度も模擬戦なんてたまったもんじゃないからな。
「Jrを出し抜くとは大したものだ。六光の騎士でも勝てる者はほとんどおらぬというのにな。」
エドも同じ様なことを言っていた。これらの情報から考えると、ヤツがどれだけ注目され期待されているのかがわかる。
「でも、引き分けだったし、俺は特に大したワケでも……、」
「いいや、そんなことはない。貴公は本気を出していなかったのではないか?」
「なんだって!?」
いやいや、手抜きなんてしてないんだけどな? 俺は押されて負けそうな場面が何度もあった。そんなこと言っちゃうとロッヒェンの面目が立たなくなるのでは? 実際、食ってかかってきているじゃないか。
「手加減していたっていうのか? これじゃ、僕はまるで道化みたいじゃないか!」
「待て、Jr。私の話を最後まで聞くのだ。本気ではないというのは語弊があった。実際に勇者は戦う相手に応じて、力を変動させておるのではないか? あくまで私の推察ではあるがな。」
「力を変動させる!? そんな事が出来るはずがない!」
そんなこと出来るわけ……あれ? もしや、無意識的に砕寒松柏を使っていた事を考えると、あの奥義、“有形無形”を使っていたと考えれば自然と合点がいくような気がする。黄ジイの話からすると、無意識の境地から相手の攻撃に対応する技のようなので、多分そうだろう。
「では問うが、ヴァル・ムングを退けた男がお前と引き分けるのは不自然だと思わぬのか? 魔王さえ倒し、大武会で頂点を極めた男がお前と同等に戦えるとすれば、変動させている、と仮定すれば納得がいくであろう?」
「そ、それは……。」
確かに俺は昔よりは強くなっている。でもそれは腕力が強くなったとか、動きが速くなったとかではない。にもかかわらず、今まで色んな強さの相手と戦って来たのに、格上やほぼ同等の敵と良い塩梅に苦戦するぐらいの状態になっていた。今まであまり思い返した事はなかったが、人に言われて初めて気が付いた。色々と不自然だ。自分自身の事なのに……。
「実際に戦った経験があり、彼が強敵と対峙する光景を見てきた私からも意見を言わせてもらおう。」
「フム。申してみよ。」
エドが横から進言してきた。この中では付き合いが長い方だ。加えて戦闘に対してもキャリアが長いので俺のことはかなり分析しているはずだ。彼の見解を聞かせてもらうとしよう。
「彼は大武会の決勝において、新たなる奥義を習得した。この時点で私はあらゆる相手の技に対応するカウンタータイプと解釈していたが、今日の戦いを見て、相対する敵に対しての最適解を無意識的に発動するものであると理解した。」
「つまりは、相手の強さに応じて、最適な対応をする技というわけだな?」
「ええ、恐らくは。」
なーるほど! さすがエド! 使ってる本人が理解してない事を解説してくれるとは! でも、理解してないのに使える俺って一体?
「私と初めて会ったとき、いや、ヴァル・ムングと対峙したときから、その片鱗はあったのではないか? だからこそ勝てた。君の師匠もそれに気付いていたからこそ、面倒を見ていたのではなかろうか? いつか、君が技を習得する事を信じて。」
「そうなんだろうか……?」
「にわかには信じがたい話ですね。僕には信じられない。」
俺も半々だ。そこまで実感があるわけではない。ただただ、強敵達との戦いをくぐり抜けてきただけだ。
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