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第2章 はぐれ梁山泊極端派【燃えよ、十字剣!!】
第78話 二刀流って大体、強キャラ。
しおりを挟む「おっと失礼。まだ、自己紹介してませんでしたね。僕の名前はグランツァ・ロッヒェン・Jr。黒の兵団に所属しています。」
赤毛の少年は恭しく挨拶をした。言動や立ち振る舞いからして、さっきの予測は間違いなさそうだ。名前の最後にJrとついているので、名前を世襲しているようだな。
「ああ、よろしく。知ってると思うけど、俺は勇者ロア。エドやファルの友人だ。」
「ロア、彼は我ら黒の兵団期待のルーキーだ。歳は若いが実力や実績は六光の騎士に近付きつつある。剣の腕前は最早トップレベルと言ってもいい程だよ。」
剣技に優れる、か。確かに背中には剣を下げているのが見える。しかも、二本! 二刀流の使い手のようだ。二本の剣を自在に操るのは相当なセンスがないと出来ないことだ。彼は余程の天才なのだろう。
「挨拶代わりに、僕も技を披露させてもらってもいいですか? 先程は素晴らしい物を見せてもらったお礼にね?」
「ウム、構わんが、あまりやり過ぎぬようにな。
「わかっていますよ、師匠《レーラァ》。」
れぇらぁ? 聞き慣れない単語だ。やりとり的にはエドに敬意をはらっているような感じだ。二人の間には深い信頼関係とか、先輩・後輩としての結びつきがあるんだろう。
「見ていて下さい。我がロッヒェン家に代々伝わる奥義を!」
背中の二本の剣を優雅に抜き放ち、練習用人形と対峙する。一瞬姿勢を低くして前傾姿勢をとったかと思うと、気付いたときには人形の至近距離まで間合いを詰めていた。速い!
(ザンッ!)
人形の支柱を根元で切断し、もう片方の剣で人形の胴体を突いた。突き刺したまま人形を振り上げる。その反動で人形は剣から離れ、頭上高く放り上げられた。
「赫灼の雨!」
声と共にロッヒェンの剣は赤くなり炎を纏った。炎を纏わせた直後、真上に跳躍し、人形と同じ高度になった。その瞬間、目にも止まらない剣捌きで人形が切り刻まれ、徐々に小さくなっていった。ロッヒェンが地面に着地したときには、炎に包まれた破片が雨のように降り注いだ! ついでに周囲の人々からも拍手の喝采が降り注ぐ。それよりも! こ、この技は……、この技を使えるのは……、
「お、お前、ハンバーグ仮面だな?」
「ご名答。ようやくお気付きになりましたか、勇者殿? 正確にはヘル・ヴァン・ブルグ、こう呼んで欲しいですね。」
料理には過剰な技術だとは思っていたが、まさか、黒の兵団の所属だったとは! 髪が赤いのが共通しているとはいえ、服装が違っていたのでわからなかった。別れ際に、近いうちに再会するというのは、今日のことを言っていたのか。
「む? 君たちは事前に会っていたのか?」
「ああ、コイツは正体隠してたけどな! お互い、ハンバーグ・コンテストに出場していたんだ。」
エドも知らない話だったのか。昨日のアレはいわゆる隠し芸的なものだったのかもしれない。
「思わぬ所で邂逅していたとは……。二人とも料理にそこまで関心があるとは思わなかった。いずれは御馳走をお願いしたい所だな?」
「フフ、是非、師匠《レーラァ》にも御馳走しますよ。その時は勇者殿と再び対決するのも一興かと?」
「望むところだぁ!」
お? やんのか? ハンバーグ対決のリベンジマッチなら喜んで引き受けてやるぞ! ついでに力士も呼んで三つ巴の対決をしてみてもいいだろう。
「料理についてはまたの機会ということで……今日は一つ、剣技での手合わせをお願いしてもいいかな?」
「な! 何ぃ!?」
予想外の展開だ! まさかここで喧嘩を売られるとは! 急にそんなこと言われてもな、心の準備が出来てないんだが……。
「ロッヒェン!」
「ダメですか? 気になるんですよ、師匠《レーラァ》に勝った腕前が。ここで機会を逃せば今度何時巡り会えるかわからない。勇者に挑戦できる、またとないチャンスなんですよ!」
「気持ちはわからなくもないが、総長との会合の後にするんだ。そのためにロアはここへやってきたのだぞ?」
ですよねえ? 脱線してしまったので、当初の目的を忘れてしまっている。でも、どうなんだろ? 訓練生達の様子を見ると、こちらに期待の眼差しが送られて来ているのがイヤでもわかった。世紀の対決を見られるのではないかとワクワクしているのだろう。このまま期待を裏切るのもどうか……といったところだ。
「しょうがない。ちょっとだけなら……。」
「僕の希望に応えてくれて、ありがとうございます。」
「おおおーっ!!!」
訓練生達が喜びの声を上げる。自分たちの所のエースと今話題の勇者が戦うのだ。盛り上がるのも無理はない。ちょっと技だけを披露するつもりが模擬戦をやる羽目になるとは……。
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