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第2章 はぐれ梁山泊極端派【燃えよ、十字剣!!】

第62話 青き狼と白き牝鹿?

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「さあて、どんなのを作るかな?」


 出場エントリーをシュバッと済ませた俺は今、出場者控え室にいる。老若男女色んなヤツが集まっている。


「アニキ、その前に作ったことあるでヤンスか?」

「敢えて言おう! ……一度もない!」

「ええ~っ!? ないんでヤンスかぁ!」


 タニシもこの場にいる。コイツも出場するのだ。料理もそこそこ出来るので問題は無い。なんでも、このコンテストの参加賞がゴッツン・ゴーの特別版“ゴッツン・ハンバ・グー”になっているから、参加せざるを得ないらしい。ていうかそれ、うまいんか? ものごっつ地雷臭がするんですけど? それはともかく今大会はゴッツン・ゴーの製造元“ゴッツン・A・ガンジー商会”がスポンサーになっているためだ。


「ないけど、閃きとアイデアで勝負してみせる! 秘密兵器もあるからな!」


 作ったことはないが挑戦する価値はある。早速、作るハンバーグの構想を考え始める。優勝するつもりだから、ガチで考えねばなるまい!普通の物を作っただけじゃあ、勝てないだろうな。まずは基本のレシピを確認せねば! ここで秘密兵器の出番というわけだ!


「こんなところで、“サヨちゃんのグルメ辞典”が役に立つとはな!」

(ズゥン!!)

「分厚いでヤンスな! ホントに兵器みたいでヤンス! こんなのいっつも持ち歩いてたんでヤンスか?」

「そうだぞ。マジキチだろ? こんなのを持たせるとか、頭がどうかしてる!」


 分厚くて重い、武器としても成立しそうなくらいの本だ。以前、サヨちゃんに無理矢理押しつけられた物である。内容に興味がないわけではないが、「これをそなたに授けよう。精進せいよ!」とか言いながら渡された。旅で持ち運ぶのには適していないので非常に厄介なシロモノなのである。何回か手放そうとはしたが、いつの間にか戻ってきていた。当然、サヨちゃんの仕業である。


「どれどれ、ハンバーグの項はっと……?」


 分厚いので目的のページを探すだけでも大変である。使い勝手が悪すぎる。作り手の性格の悪さがにじみ出ている!


「チクショー! 遊牧民の歴史とか、ハンとハーンの違いの下りまでそのまま掲載してやがるぅ! 今はいらねえんだよ、その情報!」


 質が悪い。サヨちゃんが語ってた内容がほぼそのまま書いてある。流石に著者本人だ。とはいえ“世界うまいものだらけ”にも載せた内容をもう一度、他の本に載せるとは! 大切なことだから二度言いました、的なモノなんだろうか? いや、だからそんなことはどうでもいいので、今は作り方が肝心だ!


「どれどれ? 肉を細かく切り刻み挽肉にした上で……、」

「勇者どん! 勇者どんでゴワスな?」

「……ん? なんか聞き覚えのある声が……っていうか力士が何故ここに! ヴォルフじゃないか!」

「お久しぶりでゴワス!」


 意外なところで、意外な人物と再会した。以前も見たことのある巨体の持ち主。戦いだけでなく魔法、料理にも長ける実力者だ。というか、またお前、俺の前に立ちはだかるのか! 今度は負けねえぞ!


「なんでこんなところに?」

「ハンバーグという料理は、オイたち遊牧民の料理が元になっていると聞いたんでゴワス。しかも我らが英雄、ヴォルグ・ハーンの名前が語源となっておるので、オイたちも鼻が高いんでゴワス! そんな料理をオイが作らんわけにはいかんバイ!」


 なるほど。あの話はどうやら本当みたいだな。ご先祖様が作った料理で名をあげるのが使命といったところか。強敵が目の前に現れたことでますます熱を入れなきゃいけなくなったな! この前のリベンジを果たすには丁度いい機会だ!
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