49 / 331
第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】
第49話 一触即発、婿姑戦争!
しおりを挟む「ゴメンね……。」
「謝らないでよ! わたくしがもっと惨めになるじゃない!」
エルのお母さんもそれは理解していたんだろう。やっぱり娘のエルと性格が似ている。やさしいから、辛い思いを少しでも和らげたかったのかもしれない。それが裏目に出ていたということか。どちらも悪くない。気持ちのすれ違いが不幸な関係を作ってしまったんだろう。
「フフ、性懲りもなく、無関係の君がこんな所へやってきたのか?」
熾烈な姉妹喧嘩に巻き込まれている最中、ラヴァンが姿を現した。エルも一緒にいる。当然、その姿にエルのお母さんとオバサンは釘付けになった。自分もしくは姉と同じ容姿をした娘がそこにいるのだ。無理もない。
「お姉様が二人!? どういうこと?」
「お母さん!」
まさか、自分の娘が現れたとは思っていないだろう。そして、エルの方は母との再会だ。幼い頃に死別して以来だったはず。とはいえ、ここはエルが生まれる前の時代。お母さん側は娘の事を知らない。だから、感動の再会とはならないだろう。
「何者ですか? 私に似た姿をしたあなたは一体、誰?」
「私たちは未来の世界からやってきました。彼女は貴女の実の娘です。そして私は、その婚約者。そこにいる男は未来の勇者です。シャルル殿ではありません。」
「わたくしたちを騙したのね!」
「その通り。この男は私たちには関係のない男です。」
うおおい! あっさりバラすなよ! おかげで、オバサンは俺を罪人を見るかのような態度になっている。エルのお母さんはそこまではしていないが、信じられないといった感じの表情になっている。別に騙してないからね? 勘違いされただけだから! 不可抗力だから!
「未来から何をしに来たのですか、あなた方は?」
エルのお母さんは慎重な態度を示している。色々、信じがたい事が起きているのは事実だ。エルよりも聡明で自信に満ちた魔術師といった印象だ。娘のエルとは違う魅力がある。エルも虐げられていなければ、こんな風になっていたのかもしれない。とはいえ、俺はエルの方が好きだ。このお母さんには何か近寄りがたい雰囲気がある。
「実はグランデ家の遺産を受け取りに来たのです。ここに隠されている様なので、彼女と共にやってきたのです。」
「遺産……を? ですか?」
そこまでぶっちゃけちゃうのかよ! 余計、警戒してしまうんじゃないか? ちょっと焦りすぎなんじゃない? 勝利を確信してとち狂ったのでは?
「何を言ってるんですか、あなたは? 遺産のことなど知りません。」
ほら見ろ、拒絶されたじゃないか。エルのお母さんはますます警戒を強めてしまったようだ。協力が得られないなら、更に困難になってしまうだろう。
「さて、それはどうでしょうか? 私は貴女自身が遺産その物の核になっていると推測しています。そこにいるナドラ様や私が手に入れようとしても拒絶される。その警戒心こそが封印としての役割を果たしているのでしょう。」
その封印を解けるのは……エルということか。エルのお母さんが警戒しない相手なら、警戒を解いて遺産を受け取れるようになっている? 多分、ラヴァンはそう考えているのだろう。
「貴女の愛する娘は目の前にいます。その彼女に遺産を譲渡するのが筋ではありませんか?」
「知りませんし、わかりません。逆にその子が私の娘という証拠はあるのですか?」
エルのお母さんの言うことはもっともだ。生まれる前の時代なので信じがたい話に聞こえるのだろう。目の前にはおかしなことを言っている男がいる。彼女にとってはただ、それだけなのだろう。
「このままでは埒があかない。少々手荒な真似をさせてもらうとしよう。」
「遺産の事など知りません! それが何故わからないのですか!」
うわああ! このままではエラいことになる。ラヴァン、お前、結婚前に婿姑戦争をするつもりか! このままでは見てられない! 部外者扱いされたとはいえ、こんな状況、放っておけるもんか!
「ちょっと待て、ラヴァン! これ以上、俺の前で過ぎた暴挙はさせない! アンタ、いくらなんでも強引すぎるんだよ!」
俺は両者の間に割って入った。この争いは何が何でも止めないといけない。例え俺が盾になってでも阻止する。部外者扱いされるなら、犠牲になることは大した問題じゃない。俺を忘れていたとしても、エルには嫌な思いをさせたくない!
「部外者は口を挟むべきではない。君は早々に退場し給え!」
「部外者でもなんでもいい! 俺はエルに嫌な思いをして欲しくないだけだ! 例え記憶の世界だったとしても、自分の母親と争わせたくない! それの何が悪いって言うんだ!」
「君はわかっていないな。所詮、記憶の中の世界だからこそ非情になれるのだ。ここにいるエルフリーデ様は本人ではない。遺産を相続するための障害でしかない! 時に魔術師は合理的に、冷静に、非情にならねばならない! 真理を追究するためには、情念を捨て去ることが絶対条件なのだ!」
言い切りやがった! 魔術を極めるために人の心を捨てるのにためらいがないのか? エルの記憶を書き換えたことや、決闘でギアスをかけたり、決闘後にエルの記憶を強引に統合したり……。非情の精神があったからこそ出来たことなのか。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
異世界複利! 【1000万PV突破感謝致します】 ~日利1%で始める追放生活~
蒼き流星ボトムズ
ファンタジー
クラス転移で異世界に飛ばされた遠市厘(といち りん)が入手したスキルは【複利(日利1%)】だった。
中世レベルの文明度しかない異世界ナーロッパ人からはこのスキルの価値が理解されず、また県内屈指の低偏差値校からの転移であることも幸いして級友にもスキルの正体がバレずに済んでしまう。
役立たずとして追放された厘は、この最強スキルを駆使して異世界無双を開始する。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる