43 / 331
第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】
第43話 鯉の滝登り的なモノ
しおりを挟む「……スター・バースト!!」
(ズドォォォォォォォォォォン!!!!!!)
眩しい光と音で空間が埋め尽くされた。結局、魔術が放たれてしまった。これじゃ避けようがない。周り一帯が魔術に巻き込まれてしまっている。次第に光が収まり、被害の大きさが見えるようになってきた。魔術の直線上にあった家が瓦礫の山に変化してる! ここが現実の世界ではないといっても、これはやりすぎだ!
「これで終わりだ。私の邪魔をする者は誰であろうと許さない。」
「それでは永遠に儂は許されないんかのう。」
「な、何!」
何事もなかったかのように、お爺ちゃんが立っていた。しかも、怪我一つしていない。着ている服とかもそのままだ。どうやって切り抜けたの?
「今度はどんな小細工を使ったんだ!」
「どんなって、儂ゃあ、ただお主の妖術に合わせてちょいと手を添えただけじゃぞ。要はさっきの坊主にしたことと同じじゃ。」
「馬鹿な! 魔術の心得も無しに防げるはずがない!」
「防いだのではないぞ。通り抜けただけじゃ。基本的に全ての道は一つの真理に通じておるものじゃ。力の奔流というものは川の流れや滝みたいな水の流れに似ておるのじゃよ。その中を魚が泳いでいるのと同じじゃ。儂はある意味魚の真似をしただけじゃ。」
「馬鹿な! そんなことが出来るはずがない!」
「出来たから、儂はここにおるんじゃろうが。」
意味がわからない。魚の様にあの破壊の閃光を泳いだって事なの? 意味がわからなすぎて、頭が痛くなってきた。
「だいたい、お主の妖術は無駄に力を使いすぎなんじゃ。ただ破壊力だけを追求し過ぎておるのではないか? 物を破壊し、拒絶することしか頭にないようでは、いずれ大切な物を失ってしまうぞい。その妖力をもっと創造的な事に使うのを考えるべきじゃ。それがお主らの求める真理なのではないかのう?」
「くっ……!?」
たしかにそうかも。ウチはあの婚約者みたいに攻撃する魔術は使えないけど、物を作ったりすることは出来る。魔力はあんまり強くないから大それた事は出来ないけど、あの人ぐらい魔力があればもっと面白い物作れそうな気がする。
「ホホホ。ご老人、大したお手前のようね。ますます警戒せざるを得ないわ。」
急に例のオバサンが涌いて出てきた。でも、声が微妙に違うから、魔王がオバサンの姿をかりているだけかもしれない。
「お主か。ロアの奴はどうしたのじゃ?」
「ホホホ。ご心配なく。彼らはまだ生きているわ。そのおかげで私は苦汁を嘗めさせらたけれど。」
(グワァン!!)
空間がいきなり歪んで裂け目が出来た。その裂け目から二人の人が飛び出てきた。ゆーしゃとエルるんだった!
「よお、みんな無事か! エルの本体を救出してきたぜ! あとは蛇の魔王を倒すだけだ!」
「アニキが戻ってきたでヤンスぅ!」
ワンちゃんも普通に戻った。さっきまでビビリ散らして固まってたし、前みたいにちびってたのに。
「良かった。無事だったんだ。やるじゃん!」
これで目的がほぼ達成した。敵の方ももう後がないんじゃない? これなら勝ったも同然なんじゃないの。
「ホホホ。なにか勘違いをしているようね。あなたたちがここへやってきた理由をお忘れではないかしら?」
ここへやってきた理由? エルるんが里帰りしたかった理由は……お母さんの遺品を取り戻すためだったっけ? それが魔王と何の関係があるの?
「母の遺産のことを知ってるのね?」
「ホホホ。当然。この婦人と結託した時点で私の手中にあった様な物よ。いずれあなた達とやり合うときの駆け引きに使えると思っていたからねえ。只では手に入るとは思わない事ね。」
遺産まで持っているなんて……。何でもかんでも、人質とかとっちゃうなんて、やっぱり魔王らしいな。どこまでも意地汚い。
「それにまだ切り札はあるわ。記憶の断片は戻っていないものね。これを最大限に利用しない手はないのよ。」
エルるんの分身をウチらの視界から遮るように立ちはだかった。戦いに巻き込まれないように離れた所にいたみたいだけど、それが仇になっちゃってる。お爺ちゃんが戦ってる間にウチがなんとかしとくべきだった。
「ねえ、魔術師の坊や、私に手を貸すつもりはないかしら?」
「手を貸すだと? 馬鹿な、魔王と組むつもりはない!」
「へえ、このままではエレオノーラは勇者に取られてしまうのではないかしら? それにあなたも遺産に興味があるのではないの? あれには魔術の奥義書が含まれているかもしれないと、あなたも考えているのでしょう? 協力するのならあなたに差し上げてもよいわ。」
婚約者は考えている。もしかしたら、魔王の提案を受け入れる事を考えているのかもしれない。でも苦しそうな顔をしている辺り、良心の呵責に悩んでいるのかも。魔王の誘惑に負けないで欲しい。
「……わかった。協力しよう。」
「おいおい、マジかよ! アンタ、そこまでしてエルと結婚したいのかよ!」
「君にはわかるまい。魔術師の家系を継ぐことがどれほどの意味を持つのかを。途絶えさせてはいけないのだ。途絶えさせる事は自らの先祖を侮辱する行為に等しい。当然、グランデ家も同様だ。」
家を継ぐ事を理由に魔王と手を組むの? なんでそこまでして、エルるんにこだわるの? 遺産が目的? 他にも理由がある? エルるんの地位を復権させると言ってたけど、それと関係があるのかもしれない。ウチの友達を何に利用しようとしてるの、この人?
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説

【完結】蓬莱の鏡〜若返ったおっさんが異世界転移して狐人に救われてから色々とありまして〜
月城 亜希人
ファンタジー
二〇二一年初夏六月末早朝。
蝉の声で目覚めたカガミ・ユーゴは加齢で衰えた体の痛みに苦しみながら瞼を上げる。待っていたのは虚構のような現実。
呼吸をする度にコポコポとまるで水中にいるかのような泡が生じ、天井へと向かっていく。
泡を追って視線を上げた先には水面らしきものがあった。
ユーゴは逡巡しながらも水面に手を伸ばすのだが――。
おっさん若返り異世界ファンタジーです。

【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる