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第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】

第36話 あれが噂の出家隊!?

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「むぎっキュウ!? もろっキュウ!?」

「うええっ! 気持ち悪っ! 慣れないよ、コレ、絶対!」


 ウチらはお爺ちゃんに無理矢理、空間の裂け目に押し込められ、また別の空間にやってきた。変な場所を通るから、入る度に気分が悪くなる。全然慣れない。慣れたくもないけど。


「ほっほっほっ。気持ち悪いのは最初の方だけじゃ。その内、慣れるわい。」

「空間移動なんて、普通、何度もやらないと思うんだけど!」

「そうかのう? まあ……そうかもしれんのう! そういえばそうじゃったわい。儂、普通じゃなっかたのう。」


 んもー、ホントに脳天気なお爺ちゃんなんだから! 常人離れしてる自覚なさ過ぎ!


「あっしはなんかクセになりそうな気がしてきたでヤンス。気持ち悪くなるのが気持ちいいような気分ヤンス。」

「ドM! 変態の意見は聞いてません!」

「しょ、しょんなあっ!」


 ホントにどうしようもないな、このドMは。ウチの周りにはまともな人が誰一人としていない! 何故なのか?


「そういえば、ゲイリーがまたいなくなったでヤンスねえ。一緒に来たハズでヤンスのに?」

「また、ってアイツ、最初からゆーしゃと一緒にいたんじゃないの?」

「違うでヤンス。最初からアイツだけはぐれてたでヤンスよ。」


 不思議。アイツの素性も謎ばっかりだし、空気読めてなさそうだし、ウチとしてああいうヤツはナシかな~、なんて思ってみたり。見てくれがただの脳筋にしか見えないし。


「微笑ましいところ申し訳ないが、そろそろ本題に取りかかるぞい。この空間は状況的に今度は切羽詰まった状況かもしれんぞ。」


 今いるのは多分、エルるんの故郷の町だ。見たことのある建物が何個かある。でも、雰囲気が違う。なんだか騒々しい。人々がざわめいてる。


「なんか、ヤバイことが起きてるような雰囲気でヤンス!」

「なんか人がどこかに集まろうとしてるように見えるんだけど?」

「ほう、お主もそう思うか。住人達も殺気立っておるようじゃ。何故じゃろうのう。」


 お爺ちゃんはウチの観察力を褒めてくれてるみたいだけど、本人はもっと深いところまで人のことを見ている。その理由についても、言葉の上ではわからないふりしてるけど、多分わかってるんだと思う。目付きからしてそんな感じがする。


「行くぞ。早めに行かんと手遅れになってしまうかもしれんしのう。……ここから先はお主らが見たくないものを見ることになるかもしれん。覚悟しておくがよい。」

「ワハッ?」

「……?」


 その言葉の意味がイマイチ理解できなかったウチとワンちゃんは顔を見合わせた。それでも、何があっても、先に行かなきゃいけない。エルるんを助けに行かないといけないから。


「なんか広場に人が集まってるでヤンス! なんかクルセイダーズのマークがついた服着てる人がいるヤンス。」


 確かに何人かそういう人達がいる。剣十字の紋章もあるけど、見慣れない鎌のマークも入ってる。これっていったい?


「あーっ!? 思い出したでヤンス。もしかしたらあの人達、噂の“出家隊”かもしれないヤンス!」


 出家隊って……出家するから何なのって感じ? なんか間違えてない、ワンちゃん? 場の雰囲気にそぐわないよ。


「処刑隊とかいう連中ではないか? ご大層に鎌を旗印にするとはのう。どこにでもおるもんじゃな、己の正義をはき違えた輩が。」


 処刑隊? ということは誰かを処刑するの?誰を? ホントはわかってるけど、どうしてもそれを否定したい自分がいる。嫌だよ。そうであって欲しくない。


「あっ、あれはーっ!?」


 ワンちゃんが広場の中央を指差す。誰かが磔にされているようだ。そこには彼女がいた。……エルるんだ!
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