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第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】

第31話 闇色チェイサー

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「もへぐなー?」
(……あれ? 何か今、聞こえたような?)


 俺は別の空間へと移動して、何かの建物の内部にいる。そのとき、ふと何かが聞こえたような気がした。誰かに助けを求めるような? 何が聞こえてもおかしくはない。エルの記憶の中の世界だ。彼女のイヤな思い出も含まれているだろうから、彼女自身の助けを呼ぶ声が聞こえたとしてもおかしくはない。


「ふぉるげん、もっふ。」
(しっかし、中が広いな。城みたいだな、ここは。)


 エルの記憶の傾向としては、ドラゴンズ・ヘヴンのアジトかエルの実家が出てくることが多い。今現在は地下室らしい場所にいる。てことはアジトの方かもしれない。あの豪華な屋敷にこんな場所があるとは思えない。第一、似合わないからだ。


「……う、う……。」


 誰かのうめき声? 泣く声? 悲痛な感じの声が微かに聞こえる。多分声からすると小さい女の子の声だ。もしかしたら、エルの声かもしれない。居所を探るため、慎重に通路を進む。道なりに進むと、牢屋の鉄格子の様な物が見える。この場所は牢獄なのかもしれない。牢屋の中を確認しようとしたとき、別の誰かの足音が聞こえてきた。


「そろそろ反省したところかしらねえ?」


 大人の女性の声が聞こえてきた。急いで奥の方に戻り、姿を見られないようにする。隠れるような場所はほぼ無いが、暗いので見つけられにくいはず。声の主は多分、あのオバサンの声だろう。少し若いが発音とか口調は同じだ。

……ん? てことは、ここはアジトじゃなかったのか?とはいえ、あの屋敷にこんな物騒な場所があるとは考えたくなかった。あれこれ推測しているうちに、足音が牢屋の手前で止まった。


「ホホホ、ご機嫌麗しゅう、エレオノーラ。今はどんな気分かしら?」


 そこにエルがいるのか? しかも、こんな牢屋に? こんな場所に閉じ込めるだなんて、ひどすぎるじゃないか! 彼女が一体何をしたっっていうんだ? 子供を牢屋に入れるなんて正気の沙汰じゃない。


「……う、う。……返して下さい。あれはお母さんの形見なんです。」

「ハッ! まだ反省が足りないようですわね。当主であるわたくしがあの女の遺品をどうしようとあなたには関係の無いこと。それを遮ることはわたくしへの反逆と見なします!」


 お母さんの形見のことで揉めているのか? エルが取り返したい物のことだろう。現在はオバサンが持っているらしいな? これは取り上げた直後の出来事なのだろう。取り上げた上に牢屋にぶち込むとは、相変わらず鬼畜の所業っぷりがヒドい。そりゃトラウマになるよ。


「私は悪いことしてません!」

「自らの行いを恥じなさい。自覚出来るまで、ここから出ることを許しません。」


 いい加減、俺の我慢も限界になりそうだった。そろそろ飛び出してエルを救出しに行かないと。でなきゃ、ラヴァンに先を越される可能性もある。そうと決まれば、即行動だ!


「どんと来いッス! 受けて立つッス!」

「な、なんですの、あなたは!?」


 それは突然聞こえてきた。ヒドく場違いで、空気の読めない声が。記憶の世界に入ってきてからは消息不明だったヤツがそこへ急に姿を現したのだ!


「もでーらもいん!」
(なんでお前がここにいるんだー!)


 思わず思ったことを口に出してしまった。相変わらずのもんげら語だが。オバサンがこちらに気付いて二度見している。ワケのワカラン男が二人同時に現れたのだ。無理もない。


「いやあ、照れるっすよ、師匠! お役に立てて光栄ッス!」


 なんか微妙に意味が通じてないか? 勘違いしとるけど。


「もるげざむね! もげどらいばー!」
(褒めてねえよ! 役にも立ってないから!)


 妙な空気になってしまったが、今はとにかくエルの救出をするしかない。ホントに何なんだ、アイツは?
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