31 / 331
第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】
第31話 闇色チェイサー
しおりを挟む「もへぐなー?」
(……あれ? 何か今、聞こえたような?)
俺は別の空間へと移動して、何かの建物の内部にいる。そのとき、ふと何かが聞こえたような気がした。誰かに助けを求めるような? 何が聞こえてもおかしくはない。エルの記憶の中の世界だ。彼女のイヤな思い出も含まれているだろうから、彼女自身の助けを呼ぶ声が聞こえたとしてもおかしくはない。
「ふぉるげん、もっふ。」
(しっかし、中が広いな。城みたいだな、ここは。)
エルの記憶の傾向としては、ドラゴンズ・ヘヴンのアジトかエルの実家が出てくることが多い。今現在は地下室らしい場所にいる。てことはアジトの方かもしれない。あの豪華な屋敷にこんな場所があるとは思えない。第一、似合わないからだ。
「……う、う……。」
誰かのうめき声? 泣く声? 悲痛な感じの声が微かに聞こえる。多分声からすると小さい女の子の声だ。もしかしたら、エルの声かもしれない。居所を探るため、慎重に通路を進む。道なりに進むと、牢屋の鉄格子の様な物が見える。この場所は牢獄なのかもしれない。牢屋の中を確認しようとしたとき、別の誰かの足音が聞こえてきた。
「そろそろ反省したところかしらねえ?」
大人の女性の声が聞こえてきた。急いで奥の方に戻り、姿を見られないようにする。隠れるような場所はほぼ無いが、暗いので見つけられにくいはず。声の主は多分、あのオバサンの声だろう。少し若いが発音とか口調は同じだ。
……ん? てことは、ここはアジトじゃなかったのか?とはいえ、あの屋敷にこんな物騒な場所があるとは考えたくなかった。あれこれ推測しているうちに、足音が牢屋の手前で止まった。
「ホホホ、ご機嫌麗しゅう、エレオノーラ。今はどんな気分かしら?」
そこにエルがいるのか? しかも、こんな牢屋に? こんな場所に閉じ込めるだなんて、ひどすぎるじゃないか! 彼女が一体何をしたっっていうんだ? 子供を牢屋に入れるなんて正気の沙汰じゃない。
「……う、う。……返して下さい。あれはお母さんの形見なんです。」
「ハッ! まだ反省が足りないようですわね。当主であるわたくしがあの女の遺品をどうしようとあなたには関係の無いこと。それを遮ることはわたくしへの反逆と見なします!」
お母さんの形見のことで揉めているのか? エルが取り返したい物のことだろう。現在はオバサンが持っているらしいな? これは取り上げた直後の出来事なのだろう。取り上げた上に牢屋にぶち込むとは、相変わらず鬼畜の所業っぷりがヒドい。そりゃトラウマになるよ。
「私は悪いことしてません!」
「自らの行いを恥じなさい。自覚出来るまで、ここから出ることを許しません。」
いい加減、俺の我慢も限界になりそうだった。そろそろ飛び出してエルを救出しに行かないと。でなきゃ、ラヴァンに先を越される可能性もある。そうと決まれば、即行動だ!
「どんと来いッス! 受けて立つッス!」
「な、なんですの、あなたは!?」
それは突然聞こえてきた。ヒドく場違いで、空気の読めない声が。記憶の世界に入ってきてからは消息不明だったヤツがそこへ急に姿を現したのだ!
「もでーらもいん!」
(なんでお前がここにいるんだー!)
思わず思ったことを口に出してしまった。相変わらずのもんげら語だが。オバサンがこちらに気付いて二度見している。ワケのワカラン男が二人同時に現れたのだ。無理もない。
「いやあ、照れるっすよ、師匠! お役に立てて光栄ッス!」
なんか微妙に意味が通じてないか? 勘違いしとるけど。
「もるげざむね! もげどらいばー!」
(褒めてねえよ! 役にも立ってないから!)
妙な空気になってしまったが、今はとにかくエルの救出をするしかない。ホントに何なんだ、アイツは?
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説

【完結】蓬莱の鏡〜若返ったおっさんが異世界転移して狐人に救われてから色々とありまして〜
月城 亜希人
ファンタジー
二〇二一年初夏六月末早朝。
蝉の声で目覚めたカガミ・ユーゴは加齢で衰えた体の痛みに苦しみながら瞼を上げる。待っていたのは虚構のような現実。
呼吸をする度にコポコポとまるで水中にいるかのような泡が生じ、天井へと向かっていく。
泡を追って視線を上げた先には水面らしきものがあった。
ユーゴは逡巡しながらも水面に手を伸ばすのだが――。
おっさん若返り異世界ファンタジーです。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる