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第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】

第22話 もうすでにツーアウトやぞ!

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「……も?」


 いつまでも感傷に浸っているわけにもいかない。二人が生きてりゃ、いつかどこかで会えるはずだ。意識を切り替えよう。とりあえず、今の状況を確認しなくては! ここは外? 周りの風景からすると、どこかのお屋敷みたいだ。何か見覚えがあるが、どこにいるのかはわからない。


「……はあ。」


 唐突に聞こえてくる誰かのため息。女の子の声? しかも明らかに子供の声だ。誰なのかはともかくとして、俺自身の姿を見られるのはマズい。そこかしこにある植え込みのところが良さそうだ。急いで隠れよう!


「もっ!?」


 姿も隠したので、様子をのぞき見る。質素な魔術師風の服を着た十代前半くらいの女の子が見える。この子がため息をついていた方だろう。この子は誰かに似ている……まさか、この子はエルか! 現在と雰囲気は違うが多分そうだ。か、かわいい! 今の彼女の方が好きだが、やっぱ昔からかわいかったんだな。


「あらあら、こんなところで油を売っていましたのね?」


 別の女の子の声が聞こえた。小さい子だ。10歳手前ぐらいだな。赤い派手なドレスを着ている。そして、肩までの赤い髪。コイツは間違いなくエルの従姉妹だ。昔から生意気だったようだ。エルをこの歳であんな風に言うとは、さすがに女の子ってマセてるんだな。同じぐらいの時の俺には絶対出来ない言動だ。アホの子だったし。


「……い、息抜きをしていただけ……。」


 エルは目を伏せながら話している。従姉妹をあまり良く思っていないのが見てわかる。俺が初めて従姉妹に会ったときのイメージも最悪だったが、このときから変わっていない。エルがそんな態度を取りたくなるのも良くわかった。


「へえ、息抜きで泣くんですわね?」

「そ、そんなこと……。」


 エルの顔を見ると、目の周りが少し腫れているようにも見える。遠くからでもある程度わかるぐらいには泣いていたということだろう。でも、いちいちそのことを指摘してなじるとは意地が悪い。感じ悪い!


「やっぱり、泣いているのではなくて?」

「こ、これは……泣いてないから!」


 エルは服の袖で目元を拭った。ここからでは良くわからないが、涙を目にためていたのだろう。しかし、女のいじめってのはこんなに陰湿なんだな。こんなことされたらかなり精神的にくるものがある。エルはこんな嫌がらせを毎日耐え抜いてきたんだろうか?


「あはははっ! みっともない有様ですこと!自分の努力不足を棚に上げて、悲劇のヒロイン気取り? あはははっ!」

「……うう……。」


 なんて言い草だ! エルが再び泣きそうになっている。今にも飛び出して従姉妹をとっちめてやりたい。だが確実にここはエルの記憶の世界。下手に手を出すと、影響が出るかもしれない。ここは必死にこらえるしかない。悔しい。過去の出来事とはいえ、手出し出来ないのは辛い。


「ここにいましたのね、二人とも。」

「お母様!」

「……あ……。」


 この声は! オバサンだ! 俺のしゃべりを封印しやがったババアだっ! エルいじめに、俺への狼藉、今のところツーアウトだ! 二回までなら文句は言っても手は出さないが、三回目をやったら、手ぇ出すからな! 神様も三回までしか許してくれませんよ?


「エレオノーラ! あなた、うまく出来ないからといって、逃げれば許されるとでも思っていて? グランデ家の人間が精霊魔術を禄に使えないのは恥ですわ。家名に泥でも塗るおつもり?」

「そうですわ、そうですわ!」

「……う、うう……。」


 ヒドいな。エルが精霊魔法を使えないのは知っているはずなのに! 精霊魔法はたしか、人か風とかの自然現象の力を使う魔法をひっくるめていう用語だったと思う。エルは先天的に闇の力、デーモン・コアのかけらを体に持っているから、精霊魔法は使えない。使えるのは死霊術とかの闇系、体を強化したり物をつくったりする変成魔法だけだ。それを知った上でやらせようというのは、嫌がらせでしかない。


「家長である、わたくしの命に背く事が何を意味しているか、理解してますわよね?」


 オバサンは片手を掲げて、縄のような物を手に出現させた。見た目的に革製の物だ。……ということは縄じゃなくて、鞭かもしれない。まさか、これでエルを折檻しようというのか! ダメだなんとかしないと! このままだと俺の我慢が効かなくなる。エルが傷付けられる所は流石に黙ってはいられない!
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