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第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】

第17話 君、もしかして、空気読めない系?

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「全く、なんですの、あなたは?」


 嫌いなエレオノーラを始めとした薄汚い連中はお母様の力で退出させられた。誤算だったのはラヴァン様まで巻き込まれたこと。お母様に逆らったから仕方ないけど、複雑な気分。あの女の肩を持つような真似をするだなんて……。


「凄いっスね! セレブってなんでも出来るんスね! 俺っち感動したッス!」

「……。」


 只一人、薄汚い、品のないゴリラが一匹。何よ、コイツ! 確かにお母様が魔術で追放したはずなのに、何も効いていない。魔封じのアミュレットでも持っているのかしら? お母様の魔術が通じないなんてありえないわ!


「あなた、何者ですの?」

「俺っちッスか? 俺っち、何を隠そう、勇者様の弟子なんスよ! 凄いっしょ!!」


 ゴリラはお母様に対して熱弁する。場を弁えない大声で、唾をまき散らしながら。下品ったらありゃしない。しかも、勇者の弟子ですって? ああ……確かに勇者のコスチューム・プレイをしている男がいたわね? 騙されているのでは? 憐れな男ですこと。


「質問の内容は理解できていて? わたくし、そういう事は聞いてなくてよ。あなたの素性を聞いているのです。」

「俺っちは一向に構わないッスよ! どんとこいッス!!」

「……は? あなた、何を言っているのか、理解できてますの? 質問と回答が噛み合ってませんわよ?」

「いや、一向に構わないッス! 何でも来いッス!!」

「だから、違うと申してますの!」

「大丈夫ッス! 一向に構わないッス!!」

「あなた、頭の方は大丈夫ですの?」

「何でも来いッス!!!」

「それとも、耳の方が悪いのではなくて?」

「俺っち、こう見えても病弱ッスから! すぐ腹壊すんスよ! ゲリゲリピー、ッス! 俺っちの名前がゲイリーなだけに! いや、もう、参っちまいますッスよ、奥さん!!!」

「……。」


 あれ、おかしいな? 冷気魔術を使ってないのに急に寒気が……。そんなことはどうでもいいわ! このゴリラ、お母様の話をこれっぽっちも聞いてない! 腹が立つ。おそらくお母様はもっと腹を立てているに違いないわ。


「あなたがそのつもりでしたら、この後ゆっくり頭を冷やしなさい。」


 お母様はベルを鳴らして、使用人を呼んだ。呼びつけた使用人達に小言で何かを伝えている。地下牢という単語が聞こえた様な気がする。まあ、打倒ですわね。牢屋にでも押し込んでおくべきだわ。ゴリラには牢屋がよく似合いますもの。


「……ん? なんスか? どこかに案内してくれるんスか? いやあ、光栄ッスわ! 俺っち、ワクワクしてきたッス!!」


 相変わらず立場という物を理解してませんわ、このゴリラ。そのまま引きずられるようにして使用人達に連行されていった。数人に引っ張られているのに物ともしてない! なんて馬鹿力……あら? あの男、何か落としましたわ。何かしら? これは紙きれ? 何か書いてある……?


“もっとゆっくり君と話していたいんだが……? まあこれから客人達を夕食に招待しないといけないだろうから、仕方ないか。……シャロット?”


 これは何? 誰が誰に向けて書いた物なの? そして、あのゴリラがこんな物を何で持っているの? 全く、不可解だわ……。
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