8 / 331
第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】
第8話 突然の略奪宣言
しおりを挟む
「この野郎! なんなんだ! 婚約者とか適当な事言うな! 俺とエルは一緒になったんだ。人のパートナーを奪おうとはいい度胸してんじゃないか?」
無茶苦茶だ。いきなり横恋慕してきて、婚約者名乗るとか頭がおかしい。この男は何の権利があって、そんなことを言うんだろう? 何があってもコイツは許さない!
「権利はある。私はグランデ家の当主の伴侶となることは生まれる前から決定していた。あなたの方こそ、私の婚約者を奪う権利など無いはずだ。勇者様といえど、我々の家柄に口出しするのは許されない。」
「権利があろうとなかろうと、エル本人が認めるわけがないだろ! 俺たちは一緒に生きていくと誓ったんだ。」
互いににらみ合う。相手は鋭い眼光を俺に向けているが、俺は引くつもりなんかない。
「……思い出した、この人のこと。でも、私の婚約者としてじゃなくて、私の従姉妹の婚約者だったはず……。わたしは生まれてから当主の継承権はなかったから。」
エルの叔母さんが当主になっているとは聞いていた。その人の子供が次の当主候補ってことか。だったら、この男の言っていることはおかしい。何を思ってエルの婚約者を名乗っているんだ。
「名目上は貴女の従姉妹の婚約者です。貴女もグランデ家の家系図から抹消されています。」
「……!?」
エルが息を飲むのが気配でわかった。ショックなはずだ。実家にいなかったことにされている。つまりは追放されたも同然ってことだ。俺と同じだ。いや……家族から見放されたんだから、もっとひどい扱いだ。彼女は悪いこと何もしてないはずなのに!
「だが、私は貴女をグランデ家に連れ戻したいのです。貴女は当主を継ぐべきなのです。偉大なるエルフリーデ様の娘である貴女がその様な目にあっていいはずがない。貴女は母上から受け継いだものを受け継がれていくべきなのです。」
たしか、エルのお母さんは魔王討伐隊に所属していたはず。俺の先々代の勇者の仲間だった。エルのお母さんの功績は大きかったとも聞いた。英雄の一人だったのは間違いない。
「私が追放になった理由はご存じですよね? 母が受けた傷の影響で、私は闇の力を持ってしまいました。しかもそれが体内にデーモン・コアを発生……いえ、蘇生させる結果になりました。私はそういう意味でも“忌み子”なのです。生まれてくるべきではなかったと、叔母から伝えられました。」
全てはデーモン・コアのせいだ。正確には牛頭の魔王が原因だ。そいつをそそのかした奴も知っている。エルのお母さんやエル自身を不幸にしたのはそいつらだ。彼女には何も罪は無い。“忌み子”だなんて、ひどい言い草だ。頭がおかしい。人の心があるのか? そんなことを言う親戚とやらに怒りが湧いてきた。
「あくまで現当主の言い分です。私は知っている。貴女の才能が素晴らしいことを! 私は見たのです。あの大武会で! そして、我が一門の者を使い、貴女の身柄を確保しようともした。魔次元殺法コンビという名義で参加していた魔術師がいたでしょう? 彼らがそうだったのです。」
見ていたのか、あの大会を! しかも大会中に連れ去ろうとしていたなんて! あの双子の魔術師がコイツの部下だったとは。
「私の試みは失敗に終わったものの、貴女の素晴らしさを目の当たりにすることが出来ました。。貴女は十分グランデ家を継ぐ権利があるのです。そして、私は貴女の当主継承権を奪還する覚悟があります。」
あの大会を見た上で彼女の能力を評価しているのか。なんだか複雑な思いだ。その上でやろうとしていることに賛同できないだけに。
「私はそんなことをするために故郷へ戻ってきたわけではありません。」
戻ってきた理由は俺も聞いた。エルを慰めた後、みんなと合流する前に聞いた。俺もそれを手伝うためにここへ来たんだ。
「わかっていますよ。貴女の目的はおおよそ推測できています。……例の物を叔母上から取り戻しに来たのでしょう? でしたら、私の協力は不可欠なはず。貴女方だけでは達成できないでしょう。」
エルが取り戻したい物は叔母が持っているらしい。いや、持っているんじゃない。彼女から無理矢理奪い取ったと聞いた。お母さんの形見とも言える物を自分の物にしてしまったと。
「貴女の叔母上はあれを巧妙に封印しているのです。貴女方の力だけでは到達できない所にある。私はその場所への到達方法を知っている。その封印の解除の仕方も。」
それがどういう意味なのかさっぱりわからなかった。魔法に疎い俺には理解出来そうにない。エルの顔を見ると冷や汗を浮かべていた。この男の言い分を理解したのかもしれない。その困難さもある程度検討が付いているのかもしれない。
「そこで取引です。私の願いを聞き入れるのであれば協力しましょう。さあ、どうしますか?賢い貴女ならばどうすればいいかわかるはずです。」
苦渋の表情を浮かべたエルは口を開いた。
「受け入れます。貴女の要求に応えます。」
俺は唖然とした。言うはずのないことを言ったからだ。
『私に考えがあるの。あなたには少し辛い思いをさせるかもしれないけれど、裏切らないから。私を信じていて、お願い!』
不安になる俺の頭にエルの思念波が送られてきた。なるほど彼女に策があるってことか。それなら信じよう。軍師エルちゃんを!
無茶苦茶だ。いきなり横恋慕してきて、婚約者名乗るとか頭がおかしい。この男は何の権利があって、そんなことを言うんだろう? 何があってもコイツは許さない!
「権利はある。私はグランデ家の当主の伴侶となることは生まれる前から決定していた。あなたの方こそ、私の婚約者を奪う権利など無いはずだ。勇者様といえど、我々の家柄に口出しするのは許されない。」
「権利があろうとなかろうと、エル本人が認めるわけがないだろ! 俺たちは一緒に生きていくと誓ったんだ。」
互いににらみ合う。相手は鋭い眼光を俺に向けているが、俺は引くつもりなんかない。
「……思い出した、この人のこと。でも、私の婚約者としてじゃなくて、私の従姉妹の婚約者だったはず……。わたしは生まれてから当主の継承権はなかったから。」
エルの叔母さんが当主になっているとは聞いていた。その人の子供が次の当主候補ってことか。だったら、この男の言っていることはおかしい。何を思ってエルの婚約者を名乗っているんだ。
「名目上は貴女の従姉妹の婚約者です。貴女もグランデ家の家系図から抹消されています。」
「……!?」
エルが息を飲むのが気配でわかった。ショックなはずだ。実家にいなかったことにされている。つまりは追放されたも同然ってことだ。俺と同じだ。いや……家族から見放されたんだから、もっとひどい扱いだ。彼女は悪いこと何もしてないはずなのに!
「だが、私は貴女をグランデ家に連れ戻したいのです。貴女は当主を継ぐべきなのです。偉大なるエルフリーデ様の娘である貴女がその様な目にあっていいはずがない。貴女は母上から受け継いだものを受け継がれていくべきなのです。」
たしか、エルのお母さんは魔王討伐隊に所属していたはず。俺の先々代の勇者の仲間だった。エルのお母さんの功績は大きかったとも聞いた。英雄の一人だったのは間違いない。
「私が追放になった理由はご存じですよね? 母が受けた傷の影響で、私は闇の力を持ってしまいました。しかもそれが体内にデーモン・コアを発生……いえ、蘇生させる結果になりました。私はそういう意味でも“忌み子”なのです。生まれてくるべきではなかったと、叔母から伝えられました。」
全てはデーモン・コアのせいだ。正確には牛頭の魔王が原因だ。そいつをそそのかした奴も知っている。エルのお母さんやエル自身を不幸にしたのはそいつらだ。彼女には何も罪は無い。“忌み子”だなんて、ひどい言い草だ。頭がおかしい。人の心があるのか? そんなことを言う親戚とやらに怒りが湧いてきた。
「あくまで現当主の言い分です。私は知っている。貴女の才能が素晴らしいことを! 私は見たのです。あの大武会で! そして、我が一門の者を使い、貴女の身柄を確保しようともした。魔次元殺法コンビという名義で参加していた魔術師がいたでしょう? 彼らがそうだったのです。」
見ていたのか、あの大会を! しかも大会中に連れ去ろうとしていたなんて! あの双子の魔術師がコイツの部下だったとは。
「私の試みは失敗に終わったものの、貴女の素晴らしさを目の当たりにすることが出来ました。。貴女は十分グランデ家を継ぐ権利があるのです。そして、私は貴女の当主継承権を奪還する覚悟があります。」
あの大会を見た上で彼女の能力を評価しているのか。なんだか複雑な思いだ。その上でやろうとしていることに賛同できないだけに。
「私はそんなことをするために故郷へ戻ってきたわけではありません。」
戻ってきた理由は俺も聞いた。エルを慰めた後、みんなと合流する前に聞いた。俺もそれを手伝うためにここへ来たんだ。
「わかっていますよ。貴女の目的はおおよそ推測できています。……例の物を叔母上から取り戻しに来たのでしょう? でしたら、私の協力は不可欠なはず。貴女方だけでは達成できないでしょう。」
エルが取り戻したい物は叔母が持っているらしい。いや、持っているんじゃない。彼女から無理矢理奪い取ったと聞いた。お母さんの形見とも言える物を自分の物にしてしまったと。
「貴女の叔母上はあれを巧妙に封印しているのです。貴女方の力だけでは到達できない所にある。私はその場所への到達方法を知っている。その封印の解除の仕方も。」
それがどういう意味なのかさっぱりわからなかった。魔法に疎い俺には理解出来そうにない。エルの顔を見ると冷や汗を浮かべていた。この男の言い分を理解したのかもしれない。その困難さもある程度検討が付いているのかもしれない。
「そこで取引です。私の願いを聞き入れるのであれば協力しましょう。さあ、どうしますか?賢い貴女ならばどうすればいいかわかるはずです。」
苦渋の表情を浮かべたエルは口を開いた。
「受け入れます。貴女の要求に応えます。」
俺は唖然とした。言うはずのないことを言ったからだ。
『私に考えがあるの。あなたには少し辛い思いをさせるかもしれないけれど、裏切らないから。私を信じていて、お願い!』
不安になる俺の頭にエルの思念波が送られてきた。なるほど彼女に策があるってことか。それなら信じよう。軍師エルちゃんを!
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。


凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる