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第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】
第8話 突然の略奪宣言
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「この野郎! なんなんだ! 婚約者とか適当な事言うな! 俺とエルは一緒になったんだ。人のパートナーを奪おうとはいい度胸してんじゃないか?」
無茶苦茶だ。いきなり横恋慕してきて、婚約者名乗るとか頭がおかしい。この男は何の権利があって、そんなことを言うんだろう? 何があってもコイツは許さない!
「権利はある。私はグランデ家の当主の伴侶となることは生まれる前から決定していた。あなたの方こそ、私の婚約者を奪う権利など無いはずだ。勇者様といえど、我々の家柄に口出しするのは許されない。」
「権利があろうとなかろうと、エル本人が認めるわけがないだろ! 俺たちは一緒に生きていくと誓ったんだ。」
互いににらみ合う。相手は鋭い眼光を俺に向けているが、俺は引くつもりなんかない。
「……思い出した、この人のこと。でも、私の婚約者としてじゃなくて、私の従姉妹の婚約者だったはず……。わたしは生まれてから当主の継承権はなかったから。」
エルの叔母さんが当主になっているとは聞いていた。その人の子供が次の当主候補ってことか。だったら、この男の言っていることはおかしい。何を思ってエルの婚約者を名乗っているんだ。
「名目上は貴女の従姉妹の婚約者です。貴女もグランデ家の家系図から抹消されています。」
「……!?」
エルが息を飲むのが気配でわかった。ショックなはずだ。実家にいなかったことにされている。つまりは追放されたも同然ってことだ。俺と同じだ。いや……家族から見放されたんだから、もっとひどい扱いだ。彼女は悪いこと何もしてないはずなのに!
「だが、私は貴女をグランデ家に連れ戻したいのです。貴女は当主を継ぐべきなのです。偉大なるエルフリーデ様の娘である貴女がその様な目にあっていいはずがない。貴女は母上から受け継いだものを受け継がれていくべきなのです。」
たしか、エルのお母さんは魔王討伐隊に所属していたはず。俺の先々代の勇者の仲間だった。エルのお母さんの功績は大きかったとも聞いた。英雄の一人だったのは間違いない。
「私が追放になった理由はご存じですよね? 母が受けた傷の影響で、私は闇の力を持ってしまいました。しかもそれが体内にデーモン・コアを発生……いえ、蘇生させる結果になりました。私はそういう意味でも“忌み子”なのです。生まれてくるべきではなかったと、叔母から伝えられました。」
全てはデーモン・コアのせいだ。正確には牛頭の魔王が原因だ。そいつをそそのかした奴も知っている。エルのお母さんやエル自身を不幸にしたのはそいつらだ。彼女には何も罪は無い。“忌み子”だなんて、ひどい言い草だ。頭がおかしい。人の心があるのか? そんなことを言う親戚とやらに怒りが湧いてきた。
「あくまで現当主の言い分です。私は知っている。貴女の才能が素晴らしいことを! 私は見たのです。あの大武会で! そして、我が一門の者を使い、貴女の身柄を確保しようともした。魔次元殺法コンビという名義で参加していた魔術師がいたでしょう? 彼らがそうだったのです。」
見ていたのか、あの大会を! しかも大会中に連れ去ろうとしていたなんて! あの双子の魔術師がコイツの部下だったとは。
「私の試みは失敗に終わったものの、貴女の素晴らしさを目の当たりにすることが出来ました。。貴女は十分グランデ家を継ぐ権利があるのです。そして、私は貴女の当主継承権を奪還する覚悟があります。」
あの大会を見た上で彼女の能力を評価しているのか。なんだか複雑な思いだ。その上でやろうとしていることに賛同できないだけに。
「私はそんなことをするために故郷へ戻ってきたわけではありません。」
戻ってきた理由は俺も聞いた。エルを慰めた後、みんなと合流する前に聞いた。俺もそれを手伝うためにここへ来たんだ。
「わかっていますよ。貴女の目的はおおよそ推測できています。……例の物を叔母上から取り戻しに来たのでしょう? でしたら、私の協力は不可欠なはず。貴女方だけでは達成できないでしょう。」
エルが取り戻したい物は叔母が持っているらしい。いや、持っているんじゃない。彼女から無理矢理奪い取ったと聞いた。お母さんの形見とも言える物を自分の物にしてしまったと。
「貴女の叔母上はあれを巧妙に封印しているのです。貴女方の力だけでは到達できない所にある。私はその場所への到達方法を知っている。その封印の解除の仕方も。」
それがどういう意味なのかさっぱりわからなかった。魔法に疎い俺には理解出来そうにない。エルの顔を見ると冷や汗を浮かべていた。この男の言い分を理解したのかもしれない。その困難さもある程度検討が付いているのかもしれない。
「そこで取引です。私の願いを聞き入れるのであれば協力しましょう。さあ、どうしますか?賢い貴女ならばどうすればいいかわかるはずです。」
苦渋の表情を浮かべたエルは口を開いた。
「受け入れます。貴女の要求に応えます。」
俺は唖然とした。言うはずのないことを言ったからだ。
『私に考えがあるの。あなたには少し辛い思いをさせるかもしれないけれど、裏切らないから。私を信じていて、お願い!』
不安になる俺の頭にエルの思念波が送られてきた。なるほど彼女に策があるってことか。それなら信じよう。軍師エルちゃんを!
無茶苦茶だ。いきなり横恋慕してきて、婚約者名乗るとか頭がおかしい。この男は何の権利があって、そんなことを言うんだろう? 何があってもコイツは許さない!
「権利はある。私はグランデ家の当主の伴侶となることは生まれる前から決定していた。あなたの方こそ、私の婚約者を奪う権利など無いはずだ。勇者様といえど、我々の家柄に口出しするのは許されない。」
「権利があろうとなかろうと、エル本人が認めるわけがないだろ! 俺たちは一緒に生きていくと誓ったんだ。」
互いににらみ合う。相手は鋭い眼光を俺に向けているが、俺は引くつもりなんかない。
「……思い出した、この人のこと。でも、私の婚約者としてじゃなくて、私の従姉妹の婚約者だったはず……。わたしは生まれてから当主の継承権はなかったから。」
エルの叔母さんが当主になっているとは聞いていた。その人の子供が次の当主候補ってことか。だったら、この男の言っていることはおかしい。何を思ってエルの婚約者を名乗っているんだ。
「名目上は貴女の従姉妹の婚約者です。貴女もグランデ家の家系図から抹消されています。」
「……!?」
エルが息を飲むのが気配でわかった。ショックなはずだ。実家にいなかったことにされている。つまりは追放されたも同然ってことだ。俺と同じだ。いや……家族から見放されたんだから、もっとひどい扱いだ。彼女は悪いこと何もしてないはずなのに!
「だが、私は貴女をグランデ家に連れ戻したいのです。貴女は当主を継ぐべきなのです。偉大なるエルフリーデ様の娘である貴女がその様な目にあっていいはずがない。貴女は母上から受け継いだものを受け継がれていくべきなのです。」
たしか、エルのお母さんは魔王討伐隊に所属していたはず。俺の先々代の勇者の仲間だった。エルのお母さんの功績は大きかったとも聞いた。英雄の一人だったのは間違いない。
「私が追放になった理由はご存じですよね? 母が受けた傷の影響で、私は闇の力を持ってしまいました。しかもそれが体内にデーモン・コアを発生……いえ、蘇生させる結果になりました。私はそういう意味でも“忌み子”なのです。生まれてくるべきではなかったと、叔母から伝えられました。」
全てはデーモン・コアのせいだ。正確には牛頭の魔王が原因だ。そいつをそそのかした奴も知っている。エルのお母さんやエル自身を不幸にしたのはそいつらだ。彼女には何も罪は無い。“忌み子”だなんて、ひどい言い草だ。頭がおかしい。人の心があるのか? そんなことを言う親戚とやらに怒りが湧いてきた。
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見ていたのか、あの大会を! しかも大会中に連れ去ろうとしていたなんて! あの双子の魔術師がコイツの部下だったとは。
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「私はそんなことをするために故郷へ戻ってきたわけではありません。」
戻ってきた理由は俺も聞いた。エルを慰めた後、みんなと合流する前に聞いた。俺もそれを手伝うためにここへ来たんだ。
「わかっていますよ。貴女の目的はおおよそ推測できています。……例の物を叔母上から取り戻しに来たのでしょう? でしたら、私の協力は不可欠なはず。貴女方だけでは達成できないでしょう。」
エルが取り戻したい物は叔母が持っているらしい。いや、持っているんじゃない。彼女から無理矢理奪い取ったと聞いた。お母さんの形見とも言える物を自分の物にしてしまったと。
「貴女の叔母上はあれを巧妙に封印しているのです。貴女方の力だけでは到達できない所にある。私はその場所への到達方法を知っている。その封印の解除の仕方も。」
それがどういう意味なのかさっぱりわからなかった。魔法に疎い俺には理解出来そうにない。エルの顔を見ると冷や汗を浮かべていた。この男の言い分を理解したのかもしれない。その困難さもある程度検討が付いているのかもしれない。
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苦渋の表情を浮かべたエルは口を開いた。
「受け入れます。貴女の要求に応えます。」
俺は唖然とした。言うはずのないことを言ったからだ。
『私に考えがあるの。あなたには少し辛い思いをさせるかもしれないけれど、裏切らないから。私を信じていて、お願い!』
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