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第2部  第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】

第53話 感染防止にご協力ください……?

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「だから、そこをどけと言っているんだ!」


 屋敷の外へ出て来てみたら、ラヴァンと黒いローブを着た連中が口論になっているところに出くわした。さらに後ろの方を見ると、オバサン達親子が捕まっているのがわかった。


「どかぬ! 貴様も悪魔と接触した以上、駆除せねばならぬのだ! 感染対策はしっかりと行うのが我らの使命!」


 ラヴァン達の命まで狙うのはデーモン感染拡大を防ぐため? 接触疑いのある人も問答無用で処分か。どうやら、聞いていたよりもヤバい組織なのは間違いなさそうだな?


「くっ!? ならば強引にでも通らせてもらう!」


 ラヴァンが手元で魔法の準備をしている。間違いなく、例の魔法をぶっ放すつもりなんだろう。対する処刑隊は不適な笑いを浮かべたまま、姿勢を崩さず、平然としている。脳天気というよりもそれは不気味にさえ思った。怪しい。何か勝算があるんじゃないか? 俺の勘はラヴァンに危険が及ぶ事を予測していた。


「スター・バースト!」

「馬鹿め、魔術師相手に何も対策していないとでも思ったか?」

(ズドォォォォォン!!!)


 ラヴァンが放った閃光は処刑隊の目の前に出現した光の壁に、そのまま反射された。迷宮にいた忍者が使った魔法返しとソックリだった。


「何故、君がここにいる!?」

「いちゃ悪いか?」


 ラヴァンは自分自身の閃光で焼かれることはなかった。俺が全力で横から体当たりし、助けたからだ。おかげで二人とも地面に倒れ込んでしまっている。


「私を助けるメリットなど、君にはないはずだ! 何故こんなことをする!」

「知ってる奴が目の前で死ぬなんて気分が悪くなるからだよ! それ以上の理由なんてあるもんかよ!」


 言い争っている場合じゃない。今は大勢の敵に囲まれている。ここから生きのびる方法を考えないといけない。


「貴様、邪魔をするつもりか! ……うん? 貴様が噂の勇者か? 魔王と行動を共にしている不信心者め!」


 俺は起き上がりつつ処刑隊の連中と対峙した。背後からエル達が近寄ってくる気配を感じる。みんなも戦う覚悟は出来ているみたいだ。……ただ、みんなを守り切れるかどうか自信がない。敵の数は多く、みんな疲労も溜まっているはず。戦い抜けるだけの体力があるのかどうか……。


「魔王エレオノーラ・グランデ! 5年前は逃してしまったが、今回こそは貴様を処刑する! 覚悟しろ!」


 そういえば、5年前にもコイツらはエルを処刑しようとしていたんだったな。変態死霊術士オプティマがエルを攫っていったため、処刑を免れたという話だった。コイツらからしたら、5年前のリベンジでもあるわけだ。常軌を逸した行動に拍車がかかっているのは、そのせいもあるのかもしれない。 


「皆の者、一人も逃さずに処刑しろ! 5年前の屈辱を忘れ……!?」


 その時、異変が起きた。処刑隊の隊長らしき男は突然、口が止まった。代わりに胸の位置から黒い刃が生えてきたのだ。


「薄汚い手で彼女に触れるな! お前達は全員、殺す!」


 処刑隊の隊長から生えた黒い刃から黒い炎が燃え広がり、体全体を覆い尽くした。物凄いスピードで隊長を焼き尽くし、一瞬で変わり果てた姿になり崩れ落ちた。その後ろから現れたのは黒い刃を持った戦士だった。その戦士は頭部をすっぽりと覆った兜を着けている。しかも、あまりにも無機質な飾り気のないツルッとした仮面のようだった。どうやって視界を確保しているのだろうと、誰もが思いそうなデザインだ。


「貴様! よくも隊長を!」


 処刑隊の隊員達数名が仮面の戦士に襲いかかっていく! その様子を見ても、仮面の戦士は堂々としていた。まるで、自分の勝利を確信しているかのように。


「……アクセレイション・オーバーライド!」


 仮面の戦士は叫んだ。アクセレイション? これは魔王達が使う闇の力じゃないか! 戦士の闇の刃は極端に大きさと長さを増し、それを処刑隊に向けて振り払った。


(ヴォウワァァァァァァッ!!!!)


 何の音か、形容のしようがない不気味な音と共に処刑隊はなぎ倒され、一人も残さず、隊長のように黒い炎に包まれてしまっていた! そのほとんどが体を上下に分断されてしまっている。仮面の戦士は恐ろしい事を一瞬で引き起こした。


「何が処刑隊だ。ただの弱っちい人間の分際で弱者を虐げていただけじゃないか。下らないな。」


 戦士は吐き捨てるかのように言い放った。彼らに深い憎しみを叩きつけるかのような態度だった。コイツは今まで何を見てきたのだろう? それにさっきから気になっていたことがある。この戦士からは魔王と似た気配を感じる。というよりも、デーモン・コアの気配がする。コイツはまさか……?


「あなた……エピオンよね?」


 エルは仮面の戦士に問いかけた。エピオン?初めて聞いた名前だ。エルにこんな知り合いがいたのか? そういえば、彼女に触れるな、と言っていた。少なくともコイツ自身はエルのことを知っているみたいだ。


「……だったらどうだというんだ?」

「間違いないわ。そんな格好をしていても私にはわかる。この声を忘れるはずがないもの。弟の声を忘れたりなんかしない。」


 弟!? アイツか! 名前を知らなかったから何者かと思っていたら……。そういうことだったのか。でも、異空間で見たときと姿が違う。変な兜や不気味な鎧、黒い刃なんて使っていなかった。本当にアイツなんだろうか?
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