【第1部完結】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~

Bonzaebon

文字の大きさ
上 下
395 / 401
第2部  第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】

第53話 感染防止にご協力ください……?

しおりを挟む

「だから、そこをどけと言っているんだ!」


 屋敷の外へ出て来てみたら、ラヴァンと黒いローブを着た連中が口論になっているところに出くわした。さらに後ろの方を見ると、オバサン達親子が捕まっているのがわかった。


「どかぬ! 貴様も悪魔と接触した以上、駆除せねばならぬのだ! 感染対策はしっかりと行うのが我らの使命!」


 ラヴァン達の命まで狙うのはデーモン感染拡大を防ぐため? 接触疑いのある人も問答無用で処分か。どうやら、聞いていたよりもヤバい組織なのは間違いなさそうだな?


「くっ!? ならば強引にでも通らせてもらう!」


 ラヴァンが手元で魔法の準備をしている。間違いなく、例の魔法をぶっ放すつもりなんだろう。対する処刑隊は不適な笑いを浮かべたまま、姿勢を崩さず、平然としている。脳天気というよりもそれは不気味にさえ思った。怪しい。何か勝算があるんじゃないか? 俺の勘はラヴァンに危険が及ぶ事を予測していた。


「スター・バースト!」

「馬鹿め、魔術師相手に何も対策していないとでも思ったか?」

(ズドォォォォォン!!!)


 ラヴァンが放った閃光は処刑隊の目の前に出現した光の壁に、そのまま反射された。迷宮にいた忍者が使った魔法返しとソックリだった。


「何故、君がここにいる!?」

「いちゃ悪いか?」


 ラヴァンは自分自身の閃光で焼かれることはなかった。俺が全力で横から体当たりし、助けたからだ。おかげで二人とも地面に倒れ込んでしまっている。


「私を助けるメリットなど、君にはないはずだ! 何故こんなことをする!」

「知ってる奴が目の前で死ぬなんて気分が悪くなるからだよ! それ以上の理由なんてあるもんかよ!」


 言い争っている場合じゃない。今は大勢の敵に囲まれている。ここから生きのびる方法を考えないといけない。


「貴様、邪魔をするつもりか! ……うん? 貴様が噂の勇者か? 魔王と行動を共にしている不信心者め!」


 俺は起き上がりつつ処刑隊の連中と対峙した。背後からエル達が近寄ってくる気配を感じる。みんなも戦う覚悟は出来ているみたいだ。……ただ、みんなを守り切れるかどうか自信がない。敵の数は多く、みんな疲労も溜まっているはず。戦い抜けるだけの体力があるのかどうか……。


「魔王エレオノーラ・グランデ! 5年前は逃してしまったが、今回こそは貴様を処刑する! 覚悟しろ!」


 そういえば、5年前にもコイツらはエルを処刑しようとしていたんだったな。変態死霊術士オプティマがエルを攫っていったため、処刑を免れたという話だった。コイツらからしたら、5年前のリベンジでもあるわけだ。常軌を逸した行動に拍車がかかっているのは、そのせいもあるのかもしれない。 


「皆の者、一人も逃さずに処刑しろ! 5年前の屈辱を忘れ……!?」


 その時、異変が起きた。処刑隊の隊長らしき男は突然、口が止まった。代わりに胸の位置から黒い刃が生えてきたのだ。


「薄汚い手で彼女に触れるな! お前達は全員、殺す!」


 処刑隊の隊長から生えた黒い刃から黒い炎が燃え広がり、体全体を覆い尽くした。物凄いスピードで隊長を焼き尽くし、一瞬で変わり果てた姿になり崩れ落ちた。その後ろから現れたのは黒い刃を持った戦士だった。その戦士は頭部をすっぽりと覆った兜を着けている。しかも、あまりにも無機質な飾り気のないツルッとした仮面のようだった。どうやって視界を確保しているのだろうと、誰もが思いそうなデザインだ。


「貴様! よくも隊長を!」


 処刑隊の隊員達数名が仮面の戦士に襲いかかっていく! その様子を見ても、仮面の戦士は堂々としていた。まるで、自分の勝利を確信しているかのように。


「……アクセレイション・オーバーライド!」


 仮面の戦士は叫んだ。アクセレイション? これは魔王達が使う闇の力じゃないか! 戦士の闇の刃は極端に大きさと長さを増し、それを処刑隊に向けて振り払った。


(ヴォウワァァァァァァッ!!!!)


 何の音か、形容のしようがない不気味な音と共に処刑隊はなぎ倒され、一人も残さず、隊長のように黒い炎に包まれてしまっていた! そのほとんどが体を上下に分断されてしまっている。仮面の戦士は恐ろしい事を一瞬で引き起こした。


「何が処刑隊だ。ただの弱っちい人間の分際で弱者を虐げていただけじゃないか。下らないな。」


 戦士は吐き捨てるかのように言い放った。彼らに深い憎しみを叩きつけるかのような態度だった。コイツは今まで何を見てきたのだろう? それにさっきから気になっていたことがある。この戦士からは魔王と似た気配を感じる。というよりも、デーモン・コアの気配がする。コイツはまさか……?


「あなた……エピオンよね?」


 エルは仮面の戦士に問いかけた。エピオン?初めて聞いた名前だ。エルにこんな知り合いがいたのか? そういえば、彼女に触れるな、と言っていた。少なくともコイツ自身はエルのことを知っているみたいだ。


「……だったらどうだというんだ?」

「間違いないわ。そんな格好をしていても私にはわかる。この声を忘れるはずがないもの。弟の声を忘れたりなんかしない。」


 弟!? アイツか! 名前を知らなかったから何者かと思っていたら……。そういうことだったのか。でも、異空間で見たときと姿が違う。変な兜や不気味な鎧、黒い刃なんて使っていなかった。本当にアイツなんだろうか?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

望んでいないのに転生してしまいました。

ナギサ コウガ
ファンタジー
長年病院に入院していた僕が気づいたら転生していました。 折角寝たきりから健康な体を貰ったんだから新しい人生を楽しみたい。 ・・と、思っていたんだけど。 そう上手くはいかないもんだね。

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
商人見習いの少年に憑依した薬師の研究・開発日誌です。自分の居場所を見つけたい、認められたい。その心が原動力となり、工夫を凝らしながら商品開発をしていきます。巻き込まれた薬師は、いつの間にか周りを巻き込み、人脈と産業の輪を広げていく。現在3章継続中です。【カクヨムでも掲載しています】レイティングは念の為です。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

憧れの異世界転移が現実になったのでやりたいことリストを消化したいと思います~異世界でやってみたい50のこと

Debby
ファンタジー
【完結まで投稿済みです】 山下星良(せいら)はファンタジー系の小説を読むのが大好きなお姉さん。 好きが高じて真剣に考えて作ったのが『異世界でやってみたい50のこと』のリスト。 やっぱり人生はじめからやり直す転生より、転移。 転移先の条件としては『★剣と魔法の世界に転移してみたい』は絶対に外せない。 そして今の身体じゃ体力的に異世界攻略は難しいのでちょっと若返りもお願いしたい。 更にもうひとつの条件が『★出来れば日本の乙女ゲームか物語の世界に転移してみたい(モブで)』だ。 これにはちゃんとした理由がある。必要なのは乙女ゲームの世界観のみで攻略対象とかヒロインは必要ない。 もちろんゲームに巻き込まれると面倒くさいので、ちゃんと「(モブで)」と注釈を入れることも忘れていない。 ──そして本当に転移してしまった星良は、頼もしい仲間(レアアイテムとモフモフと細マッチョ?)と共に、自身の作ったやりたいことリストを消化していくことになる。 いい年の大人が本気で考え、万全を期したハズの『異世界でやりたいことリスト』。 理想通りだったり思っていたのとちょっと違ったりするけれど、折角の異世界を楽しみたいと思います。 あなたが異世界転移するなら、リストに何を書きますか? ---------- 覗いて下さり、ありがとうございます! 10時19時投稿、全話予約投稿済みです。 5話くらいから話が動き出します。 ✳(お読み下されば何のマークかはすぐに分かると思いますが)5話から出てくる話のタイトルの★は気にしないでください

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

処理中です...