377 / 401
第2部 第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】
第35話 悪夢の再来
しおりを挟む
蛇の魔王と共に次の場所へとやってきた。だが、何か既視感がある。周りには見覚えのある廃墟の残骸の光景が広がっている。ここは……最初に来た場所じゃないのか?
「見覚えがあるでしょう? それで正解。最初に閉じ込めた場所よ。本当はここであなたたちを料理するつもりだったのだけど、空間移動の能力を持っていたのは想定外だったのよ。」
最初からここで決着をつけるつもりだったようだ。他の所に比べて狭くもないし、障害物も少ない。思う存分暴れられるために作った空間のようだ。
「ここがどういう場所か、あなたも薄らわかっているのではないかしら?」
やはり俺の想像通りの場所であるらしい。エルと初めて出会った場所。あの砦跡だ。詳細は違うが都合上、似せているだけなのだろう。理由はおそらくここが、俺とエルに共通のトラウマの記憶があるからだろう。
「あなたたちに共通する記憶であった方があなたたち自身への影響が大きい。よりダメージが大きくなるの。最悪の悪夢を演出するには丁度いい場所なのよ。」
蛇の魔王の幻影の傍らに一人の人物が現れた。エルだ! その顔はやつれて、目も虚ろだが、無事ではあるようだ。
「あなたが追い求めていたものを用意してあげたわ。せいぜい最後に良い夢でも見なさい。」
俺は一目散に彼女の元へと走った。力なく立っていた彼女は今にも倒れてしまいそうだった。俺はすぐさま彼女を抱き留めた。
「もおこはん! ももらんま!」
(大丈夫か! しっかりしろ!)
「……う、うう……。」
彼女の顔には全く生気が感じられなかった。かなり憔悴しているようだ。散々、記憶をいじくられたんだ、無理もない。頭の中を強引にかき回される様なもんだろうから、精神へのダメージが蓄積しているのだろう。
「ホホホ。元気がないのもアレだから、私が少し力を貸してあげましょう。」
蛇の方から黒い影の帯が放たれ、エルの体に当たる。するとエルは次第に力を取り戻し、俺に触れる手にも力がこもり始めた。
「……うふふふふふふ。」
エルは不気味に笑い始めた。まるで本人ではないみたいに。俺は身の危険を感じ、とっさにエルから離れた。
「どうして離れたの? 私を見捨てるの?」
エルは自分から離れた俺を非難する。それに対してなのか、恐ろしい殺気が次第に大きくなっていっている。これではまるで……あの時の彼女じゃないか!
「口ではうまいこと言って、結局助けてくれないじゃない。……ウソつき!」
ショックだな。彼女にそんなことを言われたら、心が折れてしまいそうだ。……今までの俺だったらの話だけど。
「もらんぼん。もんぶらん、もんていろ。ももれんじゃももんじゃ。」
(助けないよ。助けないけど、信じるよ。君はそんな弱い子じゃない。)
しまらないなあ。結構、格好いいこと言ったつもりなんだけどな。言葉で通じないなら、態度で、行動で示すしかない。
「こんな時にふざけたことをいうなあ!」
エルは抑えきれない怒りを爆発させた。彼女の体にも異変が起き始め、体が次第に筋肉質になり衣服が破れただの布きれになって地面に落ちる。体にはビッシリと獣毛が生え、頭部には二本のねじくれた角が生える。背中にも大きなコウモリのような翼が生えている。あの時と同じ、魔王化しかけたときの恐ろしい姿だ。
「ホホホ。どうかしら。あなたに耐えがたい苦しみを伴う死を与えるには相応しいシチュエーションじゃない? 醜い姿になった恋人に弄ばれながら死んでいきなさい!」
確かに史上最悪の場面だ。出来れば二度と見たくなかった光景には違いない。だが絶対に乗り越えてみせる。こんなところで終わる俺たちじゃない。……そうだろう? エル。
「見覚えがあるでしょう? それで正解。最初に閉じ込めた場所よ。本当はここであなたたちを料理するつもりだったのだけど、空間移動の能力を持っていたのは想定外だったのよ。」
最初からここで決着をつけるつもりだったようだ。他の所に比べて狭くもないし、障害物も少ない。思う存分暴れられるために作った空間のようだ。
「ここがどういう場所か、あなたも薄らわかっているのではないかしら?」
やはり俺の想像通りの場所であるらしい。エルと初めて出会った場所。あの砦跡だ。詳細は違うが都合上、似せているだけなのだろう。理由はおそらくここが、俺とエルに共通のトラウマの記憶があるからだろう。
「あなたたちに共通する記憶であった方があなたたち自身への影響が大きい。よりダメージが大きくなるの。最悪の悪夢を演出するには丁度いい場所なのよ。」
蛇の魔王の幻影の傍らに一人の人物が現れた。エルだ! その顔はやつれて、目も虚ろだが、無事ではあるようだ。
「あなたが追い求めていたものを用意してあげたわ。せいぜい最後に良い夢でも見なさい。」
俺は一目散に彼女の元へと走った。力なく立っていた彼女は今にも倒れてしまいそうだった。俺はすぐさま彼女を抱き留めた。
「もおこはん! ももらんま!」
(大丈夫か! しっかりしろ!)
「……う、うう……。」
彼女の顔には全く生気が感じられなかった。かなり憔悴しているようだ。散々、記憶をいじくられたんだ、無理もない。頭の中を強引にかき回される様なもんだろうから、精神へのダメージが蓄積しているのだろう。
「ホホホ。元気がないのもアレだから、私が少し力を貸してあげましょう。」
蛇の方から黒い影の帯が放たれ、エルの体に当たる。するとエルは次第に力を取り戻し、俺に触れる手にも力がこもり始めた。
「……うふふふふふふ。」
エルは不気味に笑い始めた。まるで本人ではないみたいに。俺は身の危険を感じ、とっさにエルから離れた。
「どうして離れたの? 私を見捨てるの?」
エルは自分から離れた俺を非難する。それに対してなのか、恐ろしい殺気が次第に大きくなっていっている。これではまるで……あの時の彼女じゃないか!
「口ではうまいこと言って、結局助けてくれないじゃない。……ウソつき!」
ショックだな。彼女にそんなことを言われたら、心が折れてしまいそうだ。……今までの俺だったらの話だけど。
「もらんぼん。もんぶらん、もんていろ。ももれんじゃももんじゃ。」
(助けないよ。助けないけど、信じるよ。君はそんな弱い子じゃない。)
しまらないなあ。結構、格好いいこと言ったつもりなんだけどな。言葉で通じないなら、態度で、行動で示すしかない。
「こんな時にふざけたことをいうなあ!」
エルは抑えきれない怒りを爆発させた。彼女の体にも異変が起き始め、体が次第に筋肉質になり衣服が破れただの布きれになって地面に落ちる。体にはビッシリと獣毛が生え、頭部には二本のねじくれた角が生える。背中にも大きなコウモリのような翼が生えている。あの時と同じ、魔王化しかけたときの恐ろしい姿だ。
「ホホホ。どうかしら。あなたに耐えがたい苦しみを伴う死を与えるには相応しいシチュエーションじゃない? 醜い姿になった恋人に弄ばれながら死んでいきなさい!」
確かに史上最悪の場面だ。出来れば二度と見たくなかった光景には違いない。だが絶対に乗り越えてみせる。こんなところで終わる俺たちじゃない。……そうだろう? エル。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巻き込まれた薬師の日常
白髭
ファンタジー
商人見習いの少年に憑依した薬師の研究・開発日誌です。自分の居場所を見つけたい、認められたい。その心が原動力となり、工夫を凝らしながら商品開発をしていきます。巻き込まれた薬師は、いつの間にか周りを巻き込み、人脈と産業の輪を広げていく。現在3章継続中です。【カクヨムでも掲載しています】レイティングは念の為です。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる