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第2部 第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】
第35話 悪夢の再来
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蛇の魔王と共に次の場所へとやってきた。だが、何か既視感がある。周りには見覚えのある廃墟の残骸の光景が広がっている。ここは……最初に来た場所じゃないのか?
「見覚えがあるでしょう? それで正解。最初に閉じ込めた場所よ。本当はここであなたたちを料理するつもりだったのだけど、空間移動の能力を持っていたのは想定外だったのよ。」
最初からここで決着をつけるつもりだったようだ。他の所に比べて狭くもないし、障害物も少ない。思う存分暴れられるために作った空間のようだ。
「ここがどういう場所か、あなたも薄らわかっているのではないかしら?」
やはり俺の想像通りの場所であるらしい。エルと初めて出会った場所。あの砦跡だ。詳細は違うが都合上、似せているだけなのだろう。理由はおそらくここが、俺とエルに共通のトラウマの記憶があるからだろう。
「あなたたちに共通する記憶であった方があなたたち自身への影響が大きい。よりダメージが大きくなるの。最悪の悪夢を演出するには丁度いい場所なのよ。」
蛇の魔王の幻影の傍らに一人の人物が現れた。エルだ! その顔はやつれて、目も虚ろだが、無事ではあるようだ。
「あなたが追い求めていたものを用意してあげたわ。せいぜい最後に良い夢でも見なさい。」
俺は一目散に彼女の元へと走った。力なく立っていた彼女は今にも倒れてしまいそうだった。俺はすぐさま彼女を抱き留めた。
「もおこはん! ももらんま!」
(大丈夫か! しっかりしろ!)
「……う、うう……。」
彼女の顔には全く生気が感じられなかった。かなり憔悴しているようだ。散々、記憶をいじくられたんだ、無理もない。頭の中を強引にかき回される様なもんだろうから、精神へのダメージが蓄積しているのだろう。
「ホホホ。元気がないのもアレだから、私が少し力を貸してあげましょう。」
蛇の方から黒い影の帯が放たれ、エルの体に当たる。するとエルは次第に力を取り戻し、俺に触れる手にも力がこもり始めた。
「……うふふふふふふ。」
エルは不気味に笑い始めた。まるで本人ではないみたいに。俺は身の危険を感じ、とっさにエルから離れた。
「どうして離れたの? 私を見捨てるの?」
エルは自分から離れた俺を非難する。それに対してなのか、恐ろしい殺気が次第に大きくなっていっている。これではまるで……あの時の彼女じゃないか!
「口ではうまいこと言って、結局助けてくれないじゃない。……ウソつき!」
ショックだな。彼女にそんなことを言われたら、心が折れてしまいそうだ。……今までの俺だったらの話だけど。
「もらんぼん。もんぶらん、もんていろ。ももれんじゃももんじゃ。」
(助けないよ。助けないけど、信じるよ。君はそんな弱い子じゃない。)
しまらないなあ。結構、格好いいこと言ったつもりなんだけどな。言葉で通じないなら、態度で、行動で示すしかない。
「こんな時にふざけたことをいうなあ!」
エルは抑えきれない怒りを爆発させた。彼女の体にも異変が起き始め、体が次第に筋肉質になり衣服が破れただの布きれになって地面に落ちる。体にはビッシリと獣毛が生え、頭部には二本のねじくれた角が生える。背中にも大きなコウモリのような翼が生えている。あの時と同じ、魔王化しかけたときの恐ろしい姿だ。
「ホホホ。どうかしら。あなたに耐えがたい苦しみを伴う死を与えるには相応しいシチュエーションじゃない? 醜い姿になった恋人に弄ばれながら死んでいきなさい!」
確かに史上最悪の場面だ。出来れば二度と見たくなかった光景には違いない。だが絶対に乗り越えてみせる。こんなところで終わる俺たちじゃない。……そうだろう? エル。
「見覚えがあるでしょう? それで正解。最初に閉じ込めた場所よ。本当はここであなたたちを料理するつもりだったのだけど、空間移動の能力を持っていたのは想定外だったのよ。」
最初からここで決着をつけるつもりだったようだ。他の所に比べて狭くもないし、障害物も少ない。思う存分暴れられるために作った空間のようだ。
「ここがどういう場所か、あなたも薄らわかっているのではないかしら?」
やはり俺の想像通りの場所であるらしい。エルと初めて出会った場所。あの砦跡だ。詳細は違うが都合上、似せているだけなのだろう。理由はおそらくここが、俺とエルに共通のトラウマの記憶があるからだろう。
「あなたたちに共通する記憶であった方があなたたち自身への影響が大きい。よりダメージが大きくなるの。最悪の悪夢を演出するには丁度いい場所なのよ。」
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俺は一目散に彼女の元へと走った。力なく立っていた彼女は今にも倒れてしまいそうだった。俺はすぐさま彼女を抱き留めた。
「もおこはん! ももらんま!」
(大丈夫か! しっかりしろ!)
「……う、うう……。」
彼女の顔には全く生気が感じられなかった。かなり憔悴しているようだ。散々、記憶をいじくられたんだ、無理もない。頭の中を強引にかき回される様なもんだろうから、精神へのダメージが蓄積しているのだろう。
「ホホホ。元気がないのもアレだから、私が少し力を貸してあげましょう。」
蛇の方から黒い影の帯が放たれ、エルの体に当たる。するとエルは次第に力を取り戻し、俺に触れる手にも力がこもり始めた。
「……うふふふふふふ。」
エルは不気味に笑い始めた。まるで本人ではないみたいに。俺は身の危険を感じ、とっさにエルから離れた。
「どうして離れたの? 私を見捨てるの?」
エルは自分から離れた俺を非難する。それに対してなのか、恐ろしい殺気が次第に大きくなっていっている。これではまるで……あの時の彼女じゃないか!
「口ではうまいこと言って、結局助けてくれないじゃない。……ウソつき!」
ショックだな。彼女にそんなことを言われたら、心が折れてしまいそうだ。……今までの俺だったらの話だけど。
「もらんぼん。もんぶらん、もんていろ。ももれんじゃももんじゃ。」
(助けないよ。助けないけど、信じるよ。君はそんな弱い子じゃない。)
しまらないなあ。結構、格好いいこと言ったつもりなんだけどな。言葉で通じないなら、態度で、行動で示すしかない。
「こんな時にふざけたことをいうなあ!」
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「ホホホ。どうかしら。あなたに耐えがたい苦しみを伴う死を与えるには相応しいシチュエーションじゃない? 醜い姿になった恋人に弄ばれながら死んでいきなさい!」
確かに史上最悪の場面だ。出来れば二度と見たくなかった光景には違いない。だが絶対に乗り越えてみせる。こんなところで終わる俺たちじゃない。……そうだろう? エル。
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