【第1部完結】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~

Bonzaebon

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第2部  第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】

第25話 横取り40万!!

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「すまないな、君には囮になってもらった。」


 屋敷の屋根の上からフワッと俺の側に下りてきた。どこへ行ったのかと思いきや、隠れて機会を窺ってやがったとは! 勇者である俺をおとりに使うとはいい度胸だ! やっぱコイツとは仲良くなれそうにない。弟君とはキャラが違うが接しにくい相手だ。


「今のは我が一門の最高峰の魔術、スター・バーストだ。星が消滅する際の膨大なエネルギーを魔術で再現したものだ。魔王とはいえ、これを喰らっては只では済むまい。」


 何が最高峰だ! 聞いてねーよ! 危うく俺まで巻き込まれるところだったじゃないか! ていうか、あわよくば俺ごと消すつもりだったんじゃなかろうな? そして、そのまま俺の前を通り過ぎ、エルが隠れている植え込みの元へと歩いて行く。


「もう大丈夫だ。出てきなさい。私が脅威を打ち払った。」

「……本当に?」


 植え込みの影からひょこっとエルが顔を出す。なんか……かわいいな。そんな仕草をするとは。やっぱりこのときはまだ子供っぽいところが残っていたんだな。


「あなたは何者なんですか?」

「私は……将来の君の婚約者さ。モンブラン一門の者だ。君も魔術師なら我が家名ぐらいは聞いたことがあるだろう?」


 や、やりやがった! 過去のエルに婚約者を名乗りやがった! てことは、マズい。この行為はエル本人の過去の記憶を改竄する事を意味する! 禁断の手段を使いやがった!


「も、もるげあーっ!」

「……フッ、悪く思うなよ。君のような輩からエレオノーラを取り戻すためなら、私は手段を選ばない。彼女を傷付けない限りはどんな方法でも使ってみせる。今回の件は想定外の事態だが、便乗してうまく利用させてもらう!」


 なんてヤツだ! これじゃ火事場泥棒みたいじゃないか! 油断も隙もねえ! 言って罵ってやりたいのに、しゃべることは出来ない。くやしい!


「君はエレオノーラのような高貴な女性に釣り合っているとは思えない。女性という者は“白馬に乗った王子”に助けてもらうことを夢見ているものだ。君は果たして、その条件を満たしていると言えるのか? 否。君には気品というものが足りない。例えどれだけ戦いに強くとも、君はその条件を満たしているとは到底思えないのだよ。」

「もんぎ!」


 物凄い嫌なことを言われているが、奇声を発することでしか、それに抗議できない。せめてしゃべることが出来れば言い返してやれるのに!


「……王子様?」


 エルはラヴァンの顔を見上げつぶやいた。


「ああ、そうだよ。君の王子様になることをここに誓おう!」


 エルはラヴァンに抱きついた。すがりつくように! ガガーン! 大ショックだ! 俺以外の男にそんなことするだなんて! エルの本体じゃないから、まだ望みはあるが、実際にこんなシーンを目の当たりにすると精神へのダメージが凄い。さすがにグサッとくる。


「必ずエレオノーラの心を掴んでみせる。これが君への宣戦布告だ! また会おう!」


 ラヴァンはエルと共に空間に作った裂け目の中へと入っていった。俺だけが取り残された。


「ホホホ。面白い事になってきたわね。」


 その声で俺は我に返った。魔王の声だ。やっぱりさっきの攻撃では死んでいなかった。声のする方を見ると、エルの従姉妹がそこにいた。もしかしたら、意識をあの子に移して難を逃れたのかもしれない。


「とんだ邪魔者だと思っていたら、なかなか楽しいことをしてくれたわね、あのお坊ちゃん。折角だから便乗して利用させてもらおうかしら? 彼自身が私の行為を利用したようにね。」


 ラヴァンを利用するつもりか? 厄介だな。ヤツは嫌いだが、命を取りたいとまでは思っていない。悪人ではないだろうから。あくまで俺の勘でそう思うだけだが。だからこそ巻き込むわけにはいかない。阻止しなくては。


「ホホホ。では別の時代で会いましょう。あなたとあのお坊ちゃん、どちらが先にエレオノーラの本体にたどり着けるのでしょうね? 楽しくなってきたわ!」


 魔王は姿を消した。こんどこそ本当に俺だけが取り残された。俺も早くエルの本体を探さなきゃいけない! ……ん? ナニコレ? 紙切れが落ちている。さっきまでなかったのに?


“なかなか美味な前菜だった! 素晴らしいね! メインディッシュがこれから楽しみだよ、……シャロット?”


 意味がわからない。誰だこんなイタズラをしたヤツは? くだらないけど、なんだろう? 妙な寒気がするな。なんでだろう? 
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