【第1部完結】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~

Bonzaebon

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第2部  第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】

第20話 路地裏の少年

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「無駄話はこれくらいにしておく。オレは行く。オレは“蛇”を仕留めるつもりだ。お前はあの自称婚約者をなんとかしろ。オレはあんな奴を相手にしたくない。格下はお前にくれてやる。」

「もんぎーな!?」


 次から次へと勝手なことを! 俺がしゃべれない、事情を知らないのをいいことに、自分が主導権を握るとは! でもちょっと待て。ラヴァンて敵ではないんだが? 俺個人としてはエルのパートナーだから、アイツの言い分は許せないだけだ。


「本当におめでたい奴だな。あの男のバックについている組織を知らないのか? ヤツらは命を取りはしないだろうが、気を付けた方がいい。人を人と思っていない節がある。利用されないようにすることだ。」


 俺たちを利用しようと企んでいる? エルと結婚する、彼女に実家を継がせることに何か意味があるのか? 彼女の一族は名家だとは聞いているが、どんなことをしているのかは知らない。


「じゃあな。死ぬなよ。……オレが殺すまでは。」

「も? も!」


 少年はその場から消滅した。おそらく別の記憶へと移動したんだろう。まだ聞きたいことはあったが、口が利けないんじゃあ、何も出来ない。まったくやっかいな呪いだ。……それよりも、黄ジイとタニシに追いつかないといけない。随分と時間がかかってしまった。


「異空跋渉!」


 お約束通り、空間移動の準備をする。今度も問題なく、空間に裂け目が出来る。さっそく、急いで飛び込む。


「ぎゅもっ!?」


 慣れない感覚に耐えながら、早く通り抜けられることを願った。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「悪魔め! 悪魔の落とし子はここから出ていけ!」


 不快な空間移動を経て、次の空間にやってきた。途端に物騒なフレーズが耳に飛び込んできた。辺りを見渡すと、今いる場所がどこかの町中であることはわかった。どうやら路地裏にいるみたいだ。さっきの声は割と近くから聞こえてきた気がする。急いで物陰に身を隠し、どこの誰に対して発せられた言葉なのかを探ることにした。


「お前みたいなのがこの町にいたら、私たちまでしょっぴかれてしまうよ!」


 随分な言われようだ。他にも罵る声は無数に聞こえてくる。どんな人物が罵られているのだろうか? 恐る恐るのぞき見る。大きな通りに面した場所に人だかりが出来ている。よく見ると……そこの中心にいたのは小さな少年だった。歳は6、7歳? それぐらいの歳にしか見えない。着ている服もボロボロなので、貧しい家の育ちなのかもしれない。大の大人達がよってたかって、小さな子供をいじめているようにしか見えない。これは尋常なことじゃない!


「むしろ俺たちが処罰してやろうか?」

「やめときな。俺たちも汚れてしまう。下手すりゃ、こっちまでしょっぴかれてしまう。」

「じゃあ、直接、手を加えなきゃいいんだよ!コイツを食らえ!」


 人だかりの中の一人が足元の石を拾って、少年に投げつけた。それを見ていた俺は反射的に動いた。


(ガッ!)


 石が俺の体に当たる。とりあえずは少年には当たらずにはすんだ。少年にとっては大きなダメージにはなり得るだろうが、俺は投石ぐらい痛い内には入らない。最近、痛み以上の達人技を全身に受けたことがあるので、それらに比べれば平気だ。


「だ、誰だお前は!」

「そんな奴を庇うのかよ!」


 あちこちから怒号が飛ぶ。なんで俺が怒られなきゃいけないんだ。咎められそうなことをしているのはコイツらの方だ。情けない大人達に言ってやりたいことはいっぱいあるが、口を利けない今はどうすることも出来ない。だったら出来ることは一つだけだ! 急いで少年を抱きかかえる。


「あっ、逃げるぞ!」


 逃げるんだよぉ~! 戦略的撤退! 今は逃走するしかない。少年を守らないといけないし、一般人を相手に戦うわけにはいかない。例えそれがどんなにクソみたいなヤツらでも。下手に危害を加えて事を荒げるよりはマシだろう。


「……あっち!」


 少年がいきなり声を出して指差した。少しわかりにくいが路地裏に続くと思われる細い道があった。少年の指示通り、急いでそちらへ飛び込む。そこから連中の声が小さくなるまでひたすら走り続けた。


「……ここ!」


 再び少年が指示をする。そこにはマンホールがあった。ここに入れと言うのだろうか? 少年をおろして、とりあえず開けてみる。その様子を見ても否定はしなかったので、間違いはなさそうだ。


「も、もげーあっ!?」


 中から悪臭が漂ってくる。鼻がもげそう。でも仕方ない。逃げてる途中なので、文句は言えないからだ。悪臭をこらえつつ、下に下りていった。
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