【第1部完結】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~

Bonzaebon

文字の大きさ
上 下
362 / 401
第2部  第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】

第20話 路地裏の少年

しおりを挟む

「無駄話はこれくらいにしておく。オレは行く。オレは“蛇”を仕留めるつもりだ。お前はあの自称婚約者をなんとかしろ。オレはあんな奴を相手にしたくない。格下はお前にくれてやる。」

「もんぎーな!?」


 次から次へと勝手なことを! 俺がしゃべれない、事情を知らないのをいいことに、自分が主導権を握るとは! でもちょっと待て。ラヴァンて敵ではないんだが? 俺個人としてはエルのパートナーだから、アイツの言い分は許せないだけだ。


「本当におめでたい奴だな。あの男のバックについている組織を知らないのか? ヤツらは命を取りはしないだろうが、気を付けた方がいい。人を人と思っていない節がある。利用されないようにすることだ。」


 俺たちを利用しようと企んでいる? エルと結婚する、彼女に実家を継がせることに何か意味があるのか? 彼女の一族は名家だとは聞いているが、どんなことをしているのかは知らない。


「じゃあな。死ぬなよ。……オレが殺すまでは。」

「も? も!」


 少年はその場から消滅した。おそらく別の記憶へと移動したんだろう。まだ聞きたいことはあったが、口が利けないんじゃあ、何も出来ない。まったくやっかいな呪いだ。……それよりも、黄ジイとタニシに追いつかないといけない。随分と時間がかかってしまった。


「異空跋渉!」


 お約束通り、空間移動の準備をする。今度も問題なく、空間に裂け目が出来る。さっそく、急いで飛び込む。


「ぎゅもっ!?」


 慣れない感覚に耐えながら、早く通り抜けられることを願った。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「悪魔め! 悪魔の落とし子はここから出ていけ!」


 不快な空間移動を経て、次の空間にやってきた。途端に物騒なフレーズが耳に飛び込んできた。辺りを見渡すと、今いる場所がどこかの町中であることはわかった。どうやら路地裏にいるみたいだ。さっきの声は割と近くから聞こえてきた気がする。急いで物陰に身を隠し、どこの誰に対して発せられた言葉なのかを探ることにした。


「お前みたいなのがこの町にいたら、私たちまでしょっぴかれてしまうよ!」


 随分な言われようだ。他にも罵る声は無数に聞こえてくる。どんな人物が罵られているのだろうか? 恐る恐るのぞき見る。大きな通りに面した場所に人だかりが出来ている。よく見ると……そこの中心にいたのは小さな少年だった。歳は6、7歳? それぐらいの歳にしか見えない。着ている服もボロボロなので、貧しい家の育ちなのかもしれない。大の大人達がよってたかって、小さな子供をいじめているようにしか見えない。これは尋常なことじゃない!


「むしろ俺たちが処罰してやろうか?」

「やめときな。俺たちも汚れてしまう。下手すりゃ、こっちまでしょっぴかれてしまう。」

「じゃあ、直接、手を加えなきゃいいんだよ!コイツを食らえ!」


 人だかりの中の一人が足元の石を拾って、少年に投げつけた。それを見ていた俺は反射的に動いた。


(ガッ!)


 石が俺の体に当たる。とりあえずは少年には当たらずにはすんだ。少年にとっては大きなダメージにはなり得るだろうが、俺は投石ぐらい痛い内には入らない。最近、痛み以上の達人技を全身に受けたことがあるので、それらに比べれば平気だ。


「だ、誰だお前は!」

「そんな奴を庇うのかよ!」


 あちこちから怒号が飛ぶ。なんで俺が怒られなきゃいけないんだ。咎められそうなことをしているのはコイツらの方だ。情けない大人達に言ってやりたいことはいっぱいあるが、口を利けない今はどうすることも出来ない。だったら出来ることは一つだけだ! 急いで少年を抱きかかえる。


「あっ、逃げるぞ!」


 逃げるんだよぉ~! 戦略的撤退! 今は逃走するしかない。少年を守らないといけないし、一般人を相手に戦うわけにはいかない。例えそれがどんなにクソみたいなヤツらでも。下手に危害を加えて事を荒げるよりはマシだろう。


「……あっち!」


 少年がいきなり声を出して指差した。少しわかりにくいが路地裏に続くと思われる細い道があった。少年の指示通り、急いでそちらへ飛び込む。そこから連中の声が小さくなるまでひたすら走り続けた。


「……ここ!」


 再び少年が指示をする。そこにはマンホールがあった。ここに入れと言うのだろうか? 少年をおろして、とりあえず開けてみる。その様子を見ても否定はしなかったので、間違いはなさそうだ。


「も、もげーあっ!?」


 中から悪臭が漂ってくる。鼻がもげそう。でも仕方ない。逃げてる途中なので、文句は言えないからだ。悪臭をこらえつつ、下に下りていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

望んでいないのに転生してしまいました。

ナギサ コウガ
ファンタジー
長年病院に入院していた僕が気づいたら転生していました。 折角寝たきりから健康な体を貰ったんだから新しい人生を楽しみたい。 ・・と、思っていたんだけど。 そう上手くはいかないもんだね。

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
商人見習いの少年に憑依した薬師の研究・開発日誌です。自分の居場所を見つけたい、認められたい。その心が原動力となり、工夫を凝らしながら商品開発をしていきます。巻き込まれた薬師は、いつの間にか周りを巻き込み、人脈と産業の輪を広げていく。現在3章継続中です。【カクヨムでも掲載しています】レイティングは念の為です。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

憧れの異世界転移が現実になったのでやりたいことリストを消化したいと思います~異世界でやってみたい50のこと

Debby
ファンタジー
【完結まで投稿済みです】 山下星良(せいら)はファンタジー系の小説を読むのが大好きなお姉さん。 好きが高じて真剣に考えて作ったのが『異世界でやってみたい50のこと』のリスト。 やっぱり人生はじめからやり直す転生より、転移。 転移先の条件としては『★剣と魔法の世界に転移してみたい』は絶対に外せない。 そして今の身体じゃ体力的に異世界攻略は難しいのでちょっと若返りもお願いしたい。 更にもうひとつの条件が『★出来れば日本の乙女ゲームか物語の世界に転移してみたい(モブで)』だ。 これにはちゃんとした理由がある。必要なのは乙女ゲームの世界観のみで攻略対象とかヒロインは必要ない。 もちろんゲームに巻き込まれると面倒くさいので、ちゃんと「(モブで)」と注釈を入れることも忘れていない。 ──そして本当に転移してしまった星良は、頼もしい仲間(レアアイテムとモフモフと細マッチョ?)と共に、自身の作ったやりたいことリストを消化していくことになる。 いい年の大人が本気で考え、万全を期したハズの『異世界でやりたいことリスト』。 理想通りだったり思っていたのとちょっと違ったりするけれど、折角の異世界を楽しみたいと思います。 あなたが異世界転移するなら、リストに何を書きますか? ---------- 覗いて下さり、ありがとうございます! 10時19時投稿、全話予約投稿済みです。 5話くらいから話が動き出します。 ✳(お読み下されば何のマークかはすぐに分かると思いますが)5話から出てくる話のタイトルの★は気にしないでください

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

処理中です...