【第1部完結】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~

Bonzaebon

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第2部  第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】

第19話 悪夢の中に蠢く陰謀

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「……オレの質問に答えろ。」

「もんげる、きゅーす!?」


 少年は俺に質問を投げかける。何の意図があるのか? それ以前に俺、返答できないんだけど? 返答しなかったらまた戦いに発展する。第二ラウンドがもれなく始まってしまう! ひょっとして、今の俺、詰んでませんかね?


「ふざけるな! 答えろと言っただろ!」

「もんげろいど!」


 決してふざけてなどいない! 言おうとしたら“もんげら語”に変換されてしまうんや! 俺の心の叫びがヘンな言語になってあふれ出すんだ! ……ところで“もんげら語”って何?


「……やっぱり、お前は殺す!」

「もんげす、きゅう!?」


 交渉決裂! いや、交渉すらしてないけど、結局また戦うことになるのか。チクショウ、せめて通訳がいれば何とかなったのに! アイツら先に行きやがったから、最悪の事態に! ……ていうか、なんで最悪のタイミングで目を覚ますんだ、コイツは! 狙ってただろ、絶対息を潜めて狙ってただろ! 大切なことだから二回言いました! 口には出してないけど。


「もひゃると、もるげっ!?」


 少年が全力の殺意を込めて突進してくる。体重を乗せた全力の突きだ。これだけで軽く一人くらいは殺せそうな勢いだ。


「もっあー!?」


 突きを飛んでかわす。ついでにそのまま少年の大剣の上に乗る。少年は剣から手を離さずにはすんだものの、切っ先を地面に落とす形になった。つまりは剣の動きを封じることには成功したわけだ。


「……クッ!」

「もんも?」


 動きを封じられた少年は俺を睨み付ける。俺はこの子の事は知らない。なのに彼は俺の事を知っている。そして何故俺に執着しているのか?


「……これで勝ったつもりかよ。」

「も、もも?」


 ぐらりと足元が揺らぐ。少年が俺を押しのけようとしている。凄い力だ。俺は体格は大きくないし体重も高が知れてる。少年もそこまで俺の体格に差はない。とはいえ、彼自身の重い剣と俺の体重を持ち上げている事には変わりない。どこからこんな力が湧いてくるんだ?


「その余裕ぶった態度が気に入らないんだよ!」

「もげぇ!?」


 一気に剣を持ち上げられ、俺は体勢を崩した。間髪入れずに体当たりされ、俺は吹き飛ばされた。地面を転がり受け身を取りつつ、相手との間合いを広げる。その場にいたら確実に猛追を喰らうからだ。


「死ねっ!」


 俺の予測を超えて少年は追いついてきた。無慈悲な一撃が、地面を転がる俺へと振り下ろされてきた。間一髪ギリギリかわして、体勢を立て直す。このままでは俺がやられる。攻撃をかわすついでに相手の頭上へ飛ぶ。


「ももあもっせい!」


 峨龍滅睛! 相手の頭上から奇襲をかける。少年は俺の跳躍を阻止は出来なかったが、俺の動きには反応できている。大した反射神経だ。防がれるだろうが構わない。その方が俺には返って好都合だ!


(ゴギィィィン!!!)


 少年は剣で防ぐ。俺の体重を乗せた攻撃は防がれた。だがそのまま振り抜く。


「もちふめき!」


 破竹撃! 防がれた時点で技を切り替える。二段攻撃だ。だがそのままでは少年まで真っ二つにしてしまうので、細心の注意を払う。


(バキィィィィィン!!!!)


 剣を斬った。剣だけだ。エドの兜を斬ったときやガンツの鎧を斬ったときみたいに。相手を傷付けず、武器だけを破壊した。彼の攻撃を止めるにはこうするしかない。


「クソッ、よくも!」


 剣を折られても少年は闘志を失わなかった。だが、急に何かを悟ったのか、軽く鼻で笑った後、折れた剣を投げ捨てた。


「……もういい。アンタの強さはある程度わかった。」


 何がだよ。こっちは結構手加減してるのに。お前がエルの弟じゃなかったら、もっと本気出すよ。なんか、可愛げのないヤツだな。


「お前は何か勘違いしてるみたいだが、この体はあくまで姉さんの記憶の中のオレだ。今のオレはもっと強い。こんなものじゃないぞ。」


 何その、“オレ強い”宣言? 確かに一理あるかもしれないが、俺も相当強くなった。お前が思うほど楽勝じゃないからな!


「姉さんの記憶の姿のままの方がこの場所に潜入しやすかっただけだ。それに……今のオレは今の姉さんより強い。覚悟しとくんだな。必ずお前を殺す。」


 エルより強い? どういうことだ。俺よりエルの方が強いとコイツは見積もっているワケか? とはいえ、今のエルも相当強い。達人クラスじゃないと太刀打ちできないはずだ。それを超えているというのなら、何か切り札的な物を持っているのかもしれない。


「とりあえず、今はお前を殺さない。姉さんを助ける目的は同じだからだ。……倒したい敵も共通している。それぞれ敵を倒す。」


 え? それぞれ倒す? 何か敵が複数いるみたいな発言だな。例のオバサンは魔王と関わっている可能性があるから、同じ勢力と考えてもいいが、それ以外? 他に思い当たるヤツがいない。


「アンタ、もしかして、この場に複数の勢力が関わっているのに気付いてないのか? おめでたいヤツだな! 残念だが、お前や姉さんを狙っているヤツらは大勢いる。死にたくなければ、それを自覚するんだな!」


 魔王とヴァル以外に俺と敵対しているヤツがいるっていうのか? 俺っていつの間にそれだけの敵を作っていたんだろう? 気になりすぎて、しばらく眠れそうにないや……。
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