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第2部 第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】
第12話 悪いな君達、この魔術は一人用なんだ。
しおりを挟む「なんだか妙な気配がする。なんだ?」
以前も同じ様な気配を感じたことがある。しかも、廃墟のようなところだった様な気がする。妙な既視感。どこだったかな?
「ひょえあぁぁっ!? オバケが出てきたでヤンスぅ!」
見るとあちこちから悪霊があふれ出てきていた。これはまるで……エルと初めて会った場所、例の砦跡みたいだ! 既視感の正体はこれだったようだ。
「むぐっ……!」
相変わらず口からはうめき声しか出せない。戦うことにはあまり影響しないので、構わず戦いを始める。大したことのない敵だが、タニシでは対処できそうもないので、庇いながら戦わないといけない。片っ端から斬り捨てる!
「エネルギー・ボルト!」
ラヴァンは俺たちのことは気にせず、アンデッドモンスターたちに攻撃を始めた。でも、魔術師からしたら、アンデッドとか魔族って天敵なんじゃなかったっけ? 魔法が効きにくくなるとかそんな理由で。
「君たちにも一応言っておこう。これは本物のアンデッドではない。」
「も、もがぁ?」
「本物じゃないってどういうことでヤンス?」
しゃべれない俺の代わりにタニシが聞き返す。通訳かな? とりあえず今は頼るしかない。
「これはあくまでナドラ様が作り出した物だ。この空間もだ。あくまで見た目のみを模倣している。それを生成するエネルギーまでは模倣できない。」
「もっ、もんげぇ?」
「話が見えてこないでヤンス。訳わかヤンス?」
もはや俺たちは何も理解できないどころか、何を言っているかも意味不明な状態に陥っていた。ピンチなのに喜劇みたいな状況だ。ワロエナイ。ラヴァンも嫌そうな顔をしている。俺らの知能指数が低いせいで不快になっているかもしれない。
「……非道とはいえナドラ様は魔族ではないということだ。だから、ここにいるアンデッドは神聖魔法を使わずとも倒すことが出来る。要するに普通の攻撃で倒すことが出来るのだ!」
「もっ、ももんがぁ?」
「つまりはあっしの殺人技も通用するでヤンスかぁ?」
どおりで斬ったときの感触が違うはずだ。なんか木とか紙とかを斬ってるような感じがしていた。作りもんな感触というべきか? 加えてラヴァンの魔法が効いているので、アイツ自らの行いがそれを証明している。確かに本物はもっとネットリしている。独特の気持ち悪さを感じるのだ。
「喰らえ、タニシアン・サイクロン!!」
タニシはいつの間にかフレイルを取り出して、くるくる回転しながら攻撃している。ていうか、この前のタイフーンと違いがわからないんだが? しかも、よく見たらフレイルも新しくなっている。分銅の部分がゴッツン・ゴーの瓶の形になっている。無駄にデザインが凝っている。
「このままではキリがない。やはり元を絶たねば意味がない。」
「も、も?」
「でも、ここにはオバサンはいないでヤンスよ?」
原因はわかってる。でも、いない以上は倒しようがない。ここから出ないことには始まらない。俺もあの奥義を使っても無理なことは自覚している。やろうと思えばできる。だがやれば取り返しのつかないことになりそうな予感がする。そういう違和感をこの空間に感じる。さっきの既視感に近い感覚だ。なんかすごいモヤモヤする。
「私の一門は空間に関する魔術を得意としている。私ならばなんとかここから脱出をすることは出来る。私一人だけならば、な。」
ラヴァンはニセの悪霊達から間合いを取り、魔法の集中を始めた。脱出の魔法だろうか? でも、その話からすると俺らは取り残されるって事だよね?
「これから私は脱出を試みる。容易には出来ないだろうが、出口へは近付くことは出来るはず。ナドラ様は私が対処する。それまで待っていてくれ。」
一方的に言い残して、ヤツは消えていった。他の場所に行ってしまったようだ。そして、この場にはアンデッドとアホ二人だけが取り残された……。
「もっ、もんげーあっ!?」
「ひどいヤンス! あっしら居残りにされたでヤンス! やっぱりイケメンは信用できんでやんす!」
途方に暮れながら、アンデッドたちがじりじりと近付いてくるのを見ながら、戦いを継続する覚悟を決めた。とにかく戦い続けるしかない。
「……なんじゃ、なんじゃあ? お主ら情けない事ばっかり言っとったら、助けられる者も助けられんぞ?」
久し振りに聞いた声だ。最後に聞いたのは大武会の決勝の前だ。祝勝会をやるとか言ってたクセに姿を現さなかった。俺の見舞いにさえ来なかった。
「ももげ!?」
「誰でヤンスかぁ? 急にヘンなオジイチャンが現れたでヤンスぅ!」
なんでこんなところにいるんだ、黄ジイ! 今までずっとどこへ行っていたん
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