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第2部 第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】
第10話 勃発!お家騒動!!※勇者が空気と化しております。
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俺たち一行は屋敷の中に案内された。門から屋敷に着くまでも長い。敷地が広い。梁山泊並みだ。しかも、ここはあくまで個人の持ち家だ。半端ない。内装の豪華さには圧倒され、あちこちに高そうな物が並んでいる。
「はえ~、すっげえな! さすが金持ちの家は違うな。」
「すげえッスね! 俺っちもこんな家初めて見たッス!」
俺とゲイリーはアホ丸出し、田舎モン丸出しな感じで素直な感想を漏らす。タニシやミヤコは特にリアクションはない。二人とも特別な家柄だし、タニシの実家は金持ちだ。
「まったく下品ったら、ありゃしないわ。低俗にもほどがある。」
当然、ここの家主と関係者は、俺らアホ二人の様子を見て煙たがっている。まるでゴミを見るかのような態度だ。特にエルの従姉妹ヘイゼルは実際に俺らに対して嫌みを言ってくる。俺たち平民と貴族様とでは住む環境が違いすぎるんだからしょうがないんだが……。
「では、こちらへ。」
大きな部屋へ通され、高そうなソファに座るよう促される。座るとふっかふかだ。油断すると体が沈み込んでしまいそうな感じだ。こんな椅子存在したんか?ってくらいのクオリティだ。
「まずはラヴァンさん、あなたの弁明を聞かせて貰えるかしら? どういうおつもりですの? ヘイゼルの婚約者の身でありながら、“忌み子”を連れてくるとは、どういう風の吹き回しですの?」
俺らがやってきたというのにラヴァンに説明を求めるとは。俺らはどうでもいいんか? 俺ら相手にすらされてなくね? ゴミを見るような、どころかゴミ扱いかよ。
「ナドラ様、私はヘイゼルの婚約者になったつもりは御座いません。私はあくまでグランデ家の当主に相応しい人物の婚約者でありたいのです。」
「ラヴァン様! わたしを侮辱するだなんてどういうおつもり? わたしが次期当主の資格がないとでも言うのかしら!」
ヘイゼルが立ち上がってラヴァンを非難する。ラヴァンも失礼な事言ったからね。そりゃ怒るだろ。エルの事を尊重してくれてるのはいいけど、本来の婚約者をないがしろにするのはどうなんですかねえ?
「貴女が劣っているとは決して思っていませんよ。人には向き不向きという物があるのですよ。貴女には只……当主たる品性が備わっているとは思わないのです。」
ええ~! 全然フォローになってねえ! むしろ更に火に油注ぎやがったぁ! 爆発炎上、間違い無しやでぇ! アカン、この人、無自覚で人をディスってやがる!
「ぶ、無礼なっ!?」
「ラヴァンさん、貴方、わたくしの目の前で娘を侮辱するなんていい度胸ですわね?」
やべえ、今すぐにでも争いになりそうな勢いだ。そして……完全に空気になりつつある、俺ら。お家騒動は客がいないとき、存分にやってくれ! 仮にも勇者がいる前ですることじゃないよ?
「ハッ、どれもこれも、“忌み子”なんて物がいるせいなのですわ。いなくなれば即、問題は解決。そういう意味では自ら首を差し出しに来た事だけは評価してあげても、良くってよ。」
オバサンは立ち上がり、ビシと持っていた扇子をエルの方向に向けた。セレブの3人だけで話を済ますのかと思いきや、急にエルに怒りの矛先を向けた。さすがにエルはビクッと身を震わせ、身構えている。
「おい、さすがに言い過ぎだろ! 物とか“忌み子”なんて呼び方はやめろ! これ以上……!?」
おかしい! 急に声が出なくなった。喉の奥から声が出てこない。むしろ、声ってどうやって出すんだったっけ? 俺は奇妙な感覚に囚われてしまった。
「ゴミはお黙り。下賤の物が口を挟むなど、身の程知らずにも程がありますわ。物はせいぜい素直に鎮座しておくのがお似合いですわ。」
さっきはエルに向けていた扇子を広げ、口元を覆っている。いかにもな高笑いを上げて、俺を見下ろしている。この暴挙に黙っていられなくなったのか、ミヤコも立ち上がる。
「ちょっと、オバサン! アンタ何様のつもり!」
オバサンは再び扇子を閉じ、ミヤコへと向けた。その瞬間、ミヤコの姿が消えた。何が起きた? これはもしかして魔法か? 他人を転移させる魔法は大武会で見たことがある。どこへ移動させたんだ? 命までは取られてはいないだろうけど、心配だ。
「叔母様、止めて下さい! 私の友達に危害を加えないで!」
「“忌み子”の分際で、わたくしに命令? 身の程を知りなさい! あなたの友達とやらが先に狼藉を働こうとした。それをこの家の当主である、わたくしが断じて何が悪いというのかしら?」
エルは決死の覚悟で、オバサンに抗議する。だがオバサンは引こうとしない。エルをよく見ると、わずかに震えている。精一杯の勇気を振り絞っているんだ。俺たちのために。
「丁度いい。名案が思い浮かびましたわ。ラヴァンさん、貴方にチャンスをあげましょう。貴方の手でこの女、“忌み子”を処分なさい。そうすれば、貴方の先程の無礼はなかったことにしてあげてもよくってよ?」
「クッ!? 正気ですか、ナドラ様? 私がその様な指示に従うとでも?」
エルを殺せだと? 娘の婚約者の姉を殺せって言うのか? 何を考えているんだ! 非道にも程がある。姪っ子になんでそこまで冷徹になれるんだ? 常軌を逸している。ラヴァンも俺と同じ事を考えているかどうかはわからないが、当然不服に思っているようだ。
「わたくしの命令に従えないのであれば……貴方も共犯者として、“十字の吻首鎌”に二人仲良く処罰して貰う事になりますわよ?」
「“十字の吻首鎌”!? 正気ですか、ナドラ様?」
“十字の吻手首”? なんだ、その名前は? 初めて聞いた。でもその名に不吉な響きしか感じない。嫌な予感しかない……。
「はえ~、すっげえな! さすが金持ちの家は違うな。」
「すげえッスね! 俺っちもこんな家初めて見たッス!」
俺とゲイリーはアホ丸出し、田舎モン丸出しな感じで素直な感想を漏らす。タニシやミヤコは特にリアクションはない。二人とも特別な家柄だし、タニシの実家は金持ちだ。
「まったく下品ったら、ありゃしないわ。低俗にもほどがある。」
当然、ここの家主と関係者は、俺らアホ二人の様子を見て煙たがっている。まるでゴミを見るかのような態度だ。特にエルの従姉妹ヘイゼルは実際に俺らに対して嫌みを言ってくる。俺たち平民と貴族様とでは住む環境が違いすぎるんだからしょうがないんだが……。
「では、こちらへ。」
大きな部屋へ通され、高そうなソファに座るよう促される。座るとふっかふかだ。油断すると体が沈み込んでしまいそうな感じだ。こんな椅子存在したんか?ってくらいのクオリティだ。
「まずはラヴァンさん、あなたの弁明を聞かせて貰えるかしら? どういうおつもりですの? ヘイゼルの婚約者の身でありながら、“忌み子”を連れてくるとは、どういう風の吹き回しですの?」
俺らがやってきたというのにラヴァンに説明を求めるとは。俺らはどうでもいいんか? 俺ら相手にすらされてなくね? ゴミを見るような、どころかゴミ扱いかよ。
「ナドラ様、私はヘイゼルの婚約者になったつもりは御座いません。私はあくまでグランデ家の当主に相応しい人物の婚約者でありたいのです。」
「ラヴァン様! わたしを侮辱するだなんてどういうおつもり? わたしが次期当主の資格がないとでも言うのかしら!」
ヘイゼルが立ち上がってラヴァンを非難する。ラヴァンも失礼な事言ったからね。そりゃ怒るだろ。エルの事を尊重してくれてるのはいいけど、本来の婚約者をないがしろにするのはどうなんですかねえ?
「貴女が劣っているとは決して思っていませんよ。人には向き不向きという物があるのですよ。貴女には只……当主たる品性が備わっているとは思わないのです。」
ええ~! 全然フォローになってねえ! むしろ更に火に油注ぎやがったぁ! 爆発炎上、間違い無しやでぇ! アカン、この人、無自覚で人をディスってやがる!
「ぶ、無礼なっ!?」
「ラヴァンさん、貴方、わたくしの目の前で娘を侮辱するなんていい度胸ですわね?」
やべえ、今すぐにでも争いになりそうな勢いだ。そして……完全に空気になりつつある、俺ら。お家騒動は客がいないとき、存分にやってくれ! 仮にも勇者がいる前ですることじゃないよ?
「ハッ、どれもこれも、“忌み子”なんて物がいるせいなのですわ。いなくなれば即、問題は解決。そういう意味では自ら首を差し出しに来た事だけは評価してあげても、良くってよ。」
オバサンは立ち上がり、ビシと持っていた扇子をエルの方向に向けた。セレブの3人だけで話を済ますのかと思いきや、急にエルに怒りの矛先を向けた。さすがにエルはビクッと身を震わせ、身構えている。
「おい、さすがに言い過ぎだろ! 物とか“忌み子”なんて呼び方はやめろ! これ以上……!?」
おかしい! 急に声が出なくなった。喉の奥から声が出てこない。むしろ、声ってどうやって出すんだったっけ? 俺は奇妙な感覚に囚われてしまった。
「ゴミはお黙り。下賤の物が口を挟むなど、身の程知らずにも程がありますわ。物はせいぜい素直に鎮座しておくのがお似合いですわ。」
さっきはエルに向けていた扇子を広げ、口元を覆っている。いかにもな高笑いを上げて、俺を見下ろしている。この暴挙に黙っていられなくなったのか、ミヤコも立ち上がる。
「ちょっと、オバサン! アンタ何様のつもり!」
オバサンは再び扇子を閉じ、ミヤコへと向けた。その瞬間、ミヤコの姿が消えた。何が起きた? これはもしかして魔法か? 他人を転移させる魔法は大武会で見たことがある。どこへ移動させたんだ? 命までは取られてはいないだろうけど、心配だ。
「叔母様、止めて下さい! 私の友達に危害を加えないで!」
「“忌み子”の分際で、わたくしに命令? 身の程を知りなさい! あなたの友達とやらが先に狼藉を働こうとした。それをこの家の当主である、わたくしが断じて何が悪いというのかしら?」
エルは決死の覚悟で、オバサンに抗議する。だがオバサンは引こうとしない。エルをよく見ると、わずかに震えている。精一杯の勇気を振り絞っているんだ。俺たちのために。
「丁度いい。名案が思い浮かびましたわ。ラヴァンさん、貴方にチャンスをあげましょう。貴方の手でこの女、“忌み子”を処分なさい。そうすれば、貴方の先程の無礼はなかったことにしてあげてもよくってよ?」
「クッ!? 正気ですか、ナドラ様? 私がその様な指示に従うとでも?」
エルを殺せだと? 娘の婚約者の姉を殺せって言うのか? 何を考えているんだ! 非道にも程がある。姪っ子になんでそこまで冷徹になれるんだ? 常軌を逸している。ラヴァンも俺と同じ事を考えているかどうかはわからないが、当然不服に思っているようだ。
「わたくしの命令に従えないのであれば……貴方も共犯者として、“十字の吻首鎌”に二人仲良く処罰して貰う事になりますわよ?」
「“十字の吻首鎌”!? 正気ですか、ナドラ様?」
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