【第1部完結】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~

Bonzaebon

文字の大きさ
上 下
351 / 401
第2部  第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】

第9話 シケにはご注意ください。

しおりを挟む

 俺以外のメンバーが自称婚約者ラヴァンの提案に賛成するとは思えなかった。特にミヤコが黙ってはいないだろう。でも、反対意見は出なかった。おそらく俺と同じく、エルの思念波を受け取ったのだろう。渋々受け入れているようだ。そのためか表情は硬い。特定の一人を除けば……。


「シケまくってんな……。」


 町に入った。ラヴァンの案内で入っていったが、風当たりが強い。俺の勇者補正ですら、無効化されている。みんなエルのことしか見てない。ざわついている。


「……。」


 当人が一番辛いはず。エルはうつむいて暗い表情になっている。彼女はこうなるのを想定していたんだろう。確かに辛い。側にいてあげたいが、ラヴァンの提案を受け入れてしまったので彼女はヤツの側にいる。歯がゆい。


「いやあ、なんか噂されてるっぽいッスね! さすが師匠ッス!」

「お前なあ……ちょっと黙っててくれる? 今そういうのじゃないから。」

「勇者としての余裕を見せるんスね。さすがッス!」


 約一名、空気が読めてないヤツがいる。コイツは思念波を受信しなかったのだろうか? まあ、会ったばかりだし、エルも気が引けたんだろう。俺も嫌だし。


「やっぱり、あの時のことを憶えているんですね、皆さん……。」


 例の事件の前に町にアンデッドモンスターが出没するようになったと聞いた。その数がだんだん増え、町の被害も大きくなる一方だったらしい。町の人達も被害者だ。とはいえエルは悪くない。悪くないはずなのに……。


「貴女が気にする必要はありません。私が必ずこの状況を覆してみせます。」


 こんな状況で気にするなとか言うなよ……。今が辛いんだから、そこを何とかしろよ。フォローが理屈っぽい。そんなもん、なんの足しにもなりゃしねーんだよ! これだから、頭でっかちのヤツは……。


「着きましたよ。貴女の思い出の家に。」


 一際、大きな屋敷の前にやってきた。この町自体大きな家とか屋敷が多かったのだが、住んでいる人の層が今まで見てきた町と違う。昨日までいた宿場町とはエラい違いだ。金持ちとか貴族ばっかりなのだろう。そのなかでも大きい屋敷なんだから、エルの実家はそうとう格式が高いのだろう。ガチのお嬢様だったわけだ。


「変わってませんね……。」


 エルはぽつりとつぶやく。普通、この言葉を言う人は懐かしんだりして嬉しそうにしてるもんだが、エルの表情は悲しそうだった。俺は元々実家なんてものがないから、どういう気持ちになるのかわからないが、故郷に帰ってきて喜べないのは不幸なことだと思った。安心できるはずの場所が辛い思いでしかないなんて……。


「さあ、入りましょう。入って叔母上に会わなければ何も始まりませんからね。」


 門を開けて中に入ろうとしたその時、横から誰かがやってくる気配がした。屋敷の人かな? それとも近所の人か?


「あらあら、ラヴァン様! 何処へ出かけていたかと思ったら……疫病神に取り憑かれるなんて、物騒じゃないかしら? 屋敷に入るんでしたら祓ってからにしてくださいまし。」


 見てみれば、明らかにお嬢様という出で立ちの女の子がそこにいた。髪の毛は肩までの長さで赤毛。赤色をメインにした服装…ローブ風の衣装を着ている。全身まっ赤っか。派手だ。と言っても、ミヤコとは路線が違う。露出度は当然低いし、高そうな服を着ている。そして……何よりも、誰かに似ているような気がした。


「……ヘイゼル。従姉妹とはいえ、彼女は君の姉上同然だろう。疫病神などという不名誉な呼び方は決して許されるものではない。訂正し給え!」


 コイツが! エルの従姉妹! 言われてみれば、確かにエルと顔立ちが似ている。強気そうな目付きと髪の色、長さが違うといった感じだ。


「だってそれ以外に呼びようがないじゃない? それとも魔王と呼んだ方がいいかしら?」

「……!?」


 エルが息を飲む気配がした。ショックを受けているに違いない! そう思うと、俺はこの女を許せなくなってきた。姉に対して言うような言葉じゃない! 今すぐにでも、殴りかかりに行きたかった。


「ラヴァン、ヘイゼル。それぐらいにしておきなさい。グランデ家の屋敷の前で狼藉を働くのはおやめなさい。当主である、あたくしが黙っていませんよ!」


 屋敷の方からいつの間にか、一人の女性がやってきていた。口ぶりからすると、この人がエルの叔母さんってことか!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

望んでいないのに転生してしまいました。

ナギサ コウガ
ファンタジー
長年病院に入院していた僕が気づいたら転生していました。 折角寝たきりから健康な体を貰ったんだから新しい人生を楽しみたい。 ・・と、思っていたんだけど。 そう上手くはいかないもんだね。

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
商人見習いの少年に憑依した薬師の研究・開発日誌です。自分の居場所を見つけたい、認められたい。その心が原動力となり、工夫を凝らしながら商品開発をしていきます。巻き込まれた薬師は、いつの間にか周りを巻き込み、人脈と産業の輪を広げていく。現在3章継続中です。【カクヨムでも掲載しています】レイティングは念の為です。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

処理中です...