【第1部完結】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~

Bonzaebon

文字の大きさ
上 下
349 / 401
第2部  第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】

第7話 新手の弟子志願者か?

しおりを挟む

 エルを慰め、これで行く準備が整ったかと思った矢先、何かメンバー内の雰囲気が悪くなってしまった。ハッキリ言ってなにが起きたのかわからない。宿屋で俺が合流する前になにがあったんだ?


「師匠、俺っち、ワクワクが止まらないッスよう。憧れの勇者様に同行出来るなんて夢みたいッス!」


 新メンバーのコイツだけハイテンションだ。脳天気だ。というより……コイツ、空気読めてねえ! まわりはどんよりムードなのに、コイツ一人だけ楽しくピクニック気分じゃねえか!


「お前、平時からそんなだと、なんかあったときに持たないぞ!」


 あの時、タニシが一部始終を見ていたようだが、聞こうとすると話を逸らそうとする。同じ場所にいたゲイリーは寝ていたようだ。問題が起きた張本人、ミヤコも口を閉ざしている。珍しくなにも言わない。「何でもない。」の一点張りだ。あいつがあんな態度を取るんだから、なにか重大なことがあったに違いない。


「大丈夫ッス! 俺っち、スタミナには自信あるッスから!」


 それに直接出来事を見ていないはずのエルも様子がおかしい。朝方の恐怖の感情は薄れたようだが、なにかソワソワしている。別の何かを心配しているようだ。


「それはどうかな? お前、戦いの真っ最中にスタミナ切れになっても知らねえからな?」


 共通の手掛かりは一つ。あの場所には不自然な物があった。離れたテーブルに残されたスープの器。中にはタマネギが残っていた。三人ともあれを見ていたし、気にしていた。あの場にいた誰かとトラブルでも起こしたのだろう。ミヤコとなにかあって、タニシがその事実を隠している? 逆のパターンは考えにくい。タニシが問題を起こしていたらミヤコがからかうの必至だからだ。


「望むところッス!」

「望むのかよ! スタミナ切れを!」


 そして、エルだ。不自然だ。あの動揺はおかしい。あの食べ残しの犯人を知っているのかもしれない。あれを見て誰かを思い出したのかも?


「失礼しますが、あなた方は勇者様ご一行でしょうか?」


 新弟子と問答している間にエルの故郷らしき町が近くなってきていた。それにつれて人影が増え始めたと思っていた矢先、何者かが声をかけてきた。魔術師らしい身なりをした男だ。怪しい雰囲気ではなく、何か気品があるというか、貴族っぽさもある。しかもイケメンだ。


「そうだけど、あんた誰?」

「これは失礼、私の方から名乗るべきでしたね。私の名はラヴァンタージュ・モンブラン。ラヴァンとでもお呼び下さい。」


 何者? いきなり俺らに声をかけてくるとは。まさか……また弟子入り志願者とかじゃないだろうな? もうそういうのいらないから。このむさ苦しいガチムチタマネギだけで十分なんで。あ、でも交換扱いなら許可する。むしろチェンジしたい。


「んで、なんの用?」

「私は勇者様に知り合いが同行していることを聞きつけ、こちらにいらっしゃるということでお待ちしていたのです。」

「知り合い? 誰の?」


 俺は当然知らんのでメンバーに振り返って確認してみる。でも、みんな一律にキョトンとしている。ただしタマネギ野郎は除く。なんかこのラヴァンとか言う人に期待の眼差しを送っている。なにを期待してるんだ? まさか貴族とお近づきになれるのを期待してるのではなかろうな?


「知り合いと言っても、ご存じないかもしれません。ですが、その方のご家族とはお付き合いがございます。」


 その視線は俺の斜め後ろにいる人物に向けられている。タマネギがしゃしゃり出てきたため、いつもの俺の隣のポジションから外れている。エルだ。謎の魔術師は彼女のことを見ている。


「知ってる人? 親戚とか?」


 同じ町の人なのか? 知り合いを名乗るってことは親戚とかの可能性はある。


「知りません。あなたは何者ですか?」

「……ですが、私は貴女のことを良く知っています。いえ、知っていなければならない立場なのです。」

「……は?」


 俺はあきれた。突然妙な事を言い始めた男に不信感を覚えた。彼女のなにを知っていると言うんだ? 俺がこの世で一番エルのことを知っているという自負はある。場合によっちゃ、この男をぶちのめさないといけない。


「エレオノーラ・グランデ、私はグランデ家次期当主の貴女の……婚約者なのです!」

「なんだと!」


 俺は絶句した。とんでもないことを口走った、この男に対して怒りがふつふつとわき上がり始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
商人見習いの少年に憑依した薬師の研究・開発日誌です。自分の居場所を見つけたい、認められたい。その心が原動力となり、工夫を凝らしながら商品開発をしていきます。巻き込まれた薬師は、いつの間にか周りを巻き込み、人脈と産業の輪を広げていく。現在3章継続中です。【カクヨムでも掲載しています】レイティングは念の為です。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

異世界無宿

ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。 アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。 映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。 訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。 一目惚れで購入した車の納車日。 エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた… 神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。 アクション有り! ロマンス控えめ! ご都合主義展開あり! ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。 不定期投稿になります。 投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

処理中です...